きちんと眠れるのは通常3時間ほど。あとは昼寝やうたた寝で体力維持の穴埋めをする。時々泥のように眠っても5時間ほど。ショートスリーパーだった私はそんな生活を何十年か続けてきた。仕事にも友人にも恵まれて幸せだったけれど、常に緊張した毎日。たいてい1年半以上先まで仕事の予定が詰まっていた。なんとありがたいことだったかとは思うけれど、気の休まることがなく、常にイライラしていた。
なんにも予定のない生活に憧れてやっと手に入れた。このところ全く目的なく行動している。時々コンサートを聴きにいくだけ。ヴァイオリンはレッスンのときに生徒さんと一緒に弾くだけ。こんな気楽なことはない。9月の古典音楽協会の定期演奏会が終り、私は引退宣言をしてプロとしての演奏をやめた。
さてなにかおもしろいことはないかと思ったけれど、みつからない。いままで送ってきた生活のなんと面白かったことか!結局一番自分の好きなことを仕事にできていたのだと感謝している。それならなぜやめるのかというと、やはり年令による体の機能と気力の低下。ここ数年の合奏団の存続に向けての一連の事件があってそのストレスが私を半病人にしたのだった。
今の私はもう何ものにも煩わされることなく、一日7.8時間眠眠る平和な日々を送っている。元気な私を見て「まだまだできるんじゃない?」「もう少しやったらどう?」などとご親切に言ってくださる人も。でも自分のことは自分がよくわかっております。
それで、ぼんやりとテレビを見ているとここ最近は大谷翔平選手のことばかり。いくら彼が稀代の名選手と言ってもあまりにも偏った報道は困ったもの。政治家の裏金問題、選挙、犯罪の多発があろうと一向に野球から離れられない。日本人全員野球ファンではないし、翔平君が一人で野球をしているわけでもないし、彼が一人でドジャースを優勝に導いたわけでもない。本当にすごいと思っても、世界の数多の優秀な人の一人であるというだけ。
今まさに戦争が起こるかどうかかたずをのんでいる国々の人達がいるのに、日本だけはまるで自分たちがゲームの優勝を導いた如く大騒ぎをしている。ニューヨークヤンキースの選手たちは日本人の熱気に負けたのではないかと思うほどなのだ。ちょっとひどすぎませんかね。などと考えている。決して大谷さんに憤っているのではない、彼は本当にすごい。マスコミのバカバカしさに・・・あるいは非常な大金が儲かるこういうゲームにも疑問符が浮かぶ。地球の温暖化にも関係があるでしょう。莫大なエネルギーを使い、大金が儲かるにしてもバカバカしいほどのムダ遣い。
地上で飢えと差別と戦いに苦しむ人達のことを考えると、自分が平和でいることすら罪悪感が湧いてくる。私は生まれて初めて、残された人生をだれかを助けるために使いたいと思う気持ちになっている。今のところ猫社会にわずかに貢献しているだけなのだが・・・
今や私にはいくらでも眠れる自由と、眠らなくてもいい自由がある。今夜はドジャースの凱旋パレードが日本時間の午前3時からあるらしい。中継があるならずっと起きていてテレビを見たい。やはり私もすっかり毒されているのです。