2017年9月10日日曜日

合宿

音楽教室「ルフォスタ」の弦楽アンサンブルはメンバーも定着して、水準が上がってきた。
今年も合宿。
なんでもそうだけど、長年続けるのが1番難しく、大抵は途中で内輪もめが起きて崩壊するのが常なのだが、今のところこのアンサンブルは非常にうまくいっていて、メンバーが変わらない。
それが最大の強みと言える。
やっとまとまってきたところに誰かがやめて新しい人が入ってくると、最悪最初からやり直しとなるけれど、その点はとても恵まれている。
なにが良いかというと、メンバーそれぞれは強烈な個性を持ちながら、うまくバランスが取れていること。
家族の中で両親、兄弟などがそれぞれの居場所があると同様、この集まりも分担が自然と決まっていて、絶妙に配置されている。

このアンサンブルの生みの親はGさん。
某大学でも最難関の学部の出身なので、頭の良さ・・・特に記憶力に優れ、生真面目でメンバーの信頼を一身に集めて「兄貴」と慕われている。
メンバーの束ね役。

ヴァイオリンとチェロのYサン夫婦は主に宴会に関するまとめ役。
練習後の飲み会の場所の決定、合宿のときに飲むお酒の選定、食物の手配。
いかに場を楽しく盛りたてるかに命がけの二人。
今回も結婚したてのメンバーを喜ばすために、飲み会の演出に奔走した。
新婚さんは満面の笑顔。

コンサートマスターはのんびり屋のSさん。
なにが起ころうと自分のペースを守るから、遅刻の常習犯。
それでも私に毎回チクチクと怒られて、だいぶ遅刻が減った。
彼の1番の特徴は音の美しさ。
これを聴くと私の怒りは静まってしまう。

このメンバーの他は優しく優雅なご婦人たち。
彼女たちが絶妙な緩衝材となって、問題が大ごとにならない。
よくもこれだけうまく人が集まったものだと、感心する。
今回は去年結婚したメンバーに赤ちゃんが出来て、心配したご主人が奥さんのサポートで参加。
家族ぐるみのお付き合いも盛んで、全体がファミリーのような集合体になってきた。

毎年秋の発表会の前に、石打丸山スキー場の中にあるマンションで総仕上げの合宿をするのが恒例となっている。
今年も昨日から今日の昼まで、練習に次ぐ練習。
今年の演しものはチャイコフスキーの弦楽セレナーデからフィナーレ。
チャイコの弦セレと呼ばれるこの曲を弾きたいと言って来たときには、断固拒否した。
まだあなた達には無理!
もう少し易しいものをしっかりまとめた方が基礎的な力がつくから、高望みはしないでと言ったものの、アマチュアのアンサンブルにとってこの曲は、究極の憧れらしい。
結局決定権は彼らにあって、トレーナーはその都度変わるから彼らに任せるしかない。

発表会で全曲弾くことは出来ないから、一つの楽章ずつ、一歩一歩。
今年はついにフィナーレにたどり着いた。
そしてその間の彼らも目に見えて進歩してきた。

アンサンブルを始めた頃は、アンサンブルの何たるかもわからず、ただ集まって一緒に弾いて一緒に終わって、さあ、飲みに行こう。
わーい、楽しいなあ。
そんなノリだった。
練習中におしゃべりをする、練習時間に遅刻するのは当たり前。
全く周りの音を聞かないから、ずれているのにも気がつかない。
注意しようとして止めているのに、それすら気がつかず、いつまでも弾いている。
あんまり頭にきたから「上手いオーケストラと下手クソの違いはね」と話した。
1流は指揮者が棒を振るのをやめると同時に音が止んで指示をまつ、2流は指揮者が棒を振るのをやめても気が付かず弾いている。
3流になると周りが弾くのをやめても気が付かないでいつまでも弾いている。
あなた達はそれよ!
言われてもかれらはどこ吹く風。
いつも楽しそうに集まってくる。

土曜日、越後湯沢駅に集合して釜飯屋さんで昼食。
そこから石打丸山にある巨大なマンションへ向かう。
このマンションは一時期スキー場にニョキニョキと建てられたバブルの遺産。
プール、温泉、コンベンションホール、ヴィップルームなど、広い敷地にゆったりとした間取りで贅沢に設計されている。
9月に入ったので、土日と言っても宿泊客の姿は少なく閑散としている。
ここに居住するNさんはこのアンサンブルのメンバーで、スキーの名手。
スキーを極めたいために早々と仕事をやめ、もっぱら旅行とスキーに明け暮れるという結構なご身分。
世の中にはこういう幸せな人もいるのだと、羨ましく思う。
彼がマンションのヴィップルームを提供してくれるおかげで、毎年の合宿ができる。
なんでもそうだけど、一つのことが極められる人は全てにおいて努力を惜しまない。
アンサンブルではチェロを弾いているけれど、最初の頃は心もとなかった彼が今や堂々たるチェロ弾きに成長。

午後から地獄の特訓が始まって、たっぷりしごかれたメンバーは練習後、駅近くの店に繰り出して乾杯。
練習の後のビールは特別な味がする。
その後は部屋に戻って話が弾む。
ここからが飲み会本番。
夜中いっぱい騒いで飲んで翌朝9時から2日目の練習。
仕上げはとても満足のいく出来栄えで、皆本当にうまくなったものと教師はウルウル。
努力も惜しまないけれど、楽しむこともとことん出来る彼らと一緒にいると、青春が一瞬戻った気がする。



















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