2021年4月2日金曜日

地域の問題

 私が住んでいる街には古い知り合いがいっぱいいる。そこの地区はブロックごとに別れている。私の所属は*地区*組、4月から私はそこの組長になる。組長は1年毎に交代する。10軒がまとまっているから組長は10年に1度回ってくることになる。組長のしごとは町会費を集める、お祭りや赤い羽根の共同募金を徴収するなど決まり事があるけれど、去年から今年にかけてのコロナ禍のおかげ?で集会などもなくなり、仕事が簡素化されているらしい。ありがたい。

古い街でしきたりもそのまま、私が子供の頃とさして変わりはない。ご近所もほとんど地元の人が多いから私はいまだに**さんの娘さんで通っている。この歳で娘さんもないだろうと思うのに。

最近のこと、ドアホンがなったので出てみると、そこにはニコニコしているおじさん。なんとなく服装がだらしないけれど、こちらもどっこいどっこいだからお互い様。「私は去年の理事でしたが任期が終わったので今は補佐としてやっております。今年はお宅が組長なので一応ご挨拶に上がりました」「それはご丁寧にどうも、よろしくおねがいします」「私は去年任期が終わりましたが今は補佐として・・・」「あ、どうぞよろしくおねがいします」「私は去年・・・・」

おかしいぞ、これは?壊れたレコードみたいに同じことを聞かされて、鈍い私もさすがに気がついた。すごく人の良さそうな人だけれど、脳みそが壊れているらしい。礼儀正しいから壊れていなければ、きっと仕事もできたと思われるのに。なによりも機嫌が良いから朝の訪問者としては悪くはない。けれどドアを半開きにしてあったので、強い力で押しながら家の中を覗こうとするのにはまいった。うちが整理整頓してあるならばチラ見せしてもいいけれど、なんたってねえ。美女の一人暮らしは覗かせられない。

そのうちに階段を登ってくる音がして、町内会の役員さんが現れた。どうやら近所の人がその人に電話をしてくれたらしい。「**さん、もうあなたは役員の任期が終わったから仕事をしなくていいのよ、さあ、いきましょう」「いや、私は今年は補佐として・・・」「あ、そのお話はもう10回くらい聞きました。わかりましたので」「じゃあ、私は帰っていいですか?」「はい、お帰りください、ご苦労さまでした」やっと開放されるとお隣さんから電話があった。去年の組長さんで、謎の訪問者には去年えらく悩まされたという。私の家を教えてと言われてつい教えてしまったけど、ごめんなさいと謝られた。同じことを何回も言うことを除けば、そう変な人でもなさそうだし危険はないと思うからかまわないけれど、やれやれ。

翌朝、また来ました。今度は別の理事さんを連れて。理事さんは前日のことを知らなかったようでニコニコして「よろしくおねがいします」という。けれど話が進んでいくうちに、なんだか変!と気がついたようだ。それでも私は彼の扱いになれた事もあって、すぐにお引取りいただいた。そのあと階下に降りていくと、すでに噂は近所に広がっていて、ワラワラとご近所が集まってきた。一昨年と昨年、そのおじさんに悩まされたと言う奥さんたちが口角泡を飛ばし「冗談じゃない、みんな大変だったんだから」

そこへまた自転車で通りかかる人が加わって喧々諤々、するとお隣りのご主人が表の出来事はなんぞや?と顔を出す。ああ、こうやってみんな暇を潰しているのかあ。めったに近所付き合いをしないから顔も名前も両隣くらいしかわからない。そんな私を連れて近所の物知りさんが同じ組の家を訪れて新組長さんですと紹介してくれた。なんだか小学校の級長さんにでもなった気分。前にやったのは10年前だった。その時は私もこの組の中では若手(?)だった。けれどいつの間にか数軒が代替わりをして表札が次世代の名前に変わっていた。

その中でも最近引っ越してきて新しい家に建て変わっていた家の奥さん。「まあ、引っ越しのご挨拶もしませんで失礼しました」「いえ、誰もこの辺では両隣くらいしか挨拶なんてしませんよ」「いえいえ、私、向こう側は20軒回りましたのよ。後ほどご挨拶に」「いえいえ、本当に結構です」普通20軒なんて回る?

でも次の朝「昨日は失礼しました。これはご挨拶のおしるしに」渡された紙袋はずしりと重く値段もお高い品物。こんな高いものを20軒に配ったらトータルで、うーん。他人の懐を探るのは下品なことだけれど、考えてしまった。お金持ちなんだ。困ったなあ、困惑する私。こういうのってお返しするものなのかしら。物知りさんに相談したら「いいのよ、勝手にやってるんだから」ずっと仕事ばかりしていてご近所付き合いはおろそかにしていたけれど、案外と複雑で大変なものだわいと、今更ながら考えたnekotamaでありました。

昔は引っ越しの挨拶などに持っていくものをお付木といったのを思い出した。お付木とは火を他に移すときの細い木。かまどでご飯を炊いていた頃などに必要だったものの名前が進物のことになったと思われる。え、知らない?あら、私が生まれたのは最近なんだけど、変ね。



















4 件のコメント:

  1. そういえば、むかし引っ越し挨拶のお返しは
    マッチ(懐かしい!)だったような。
    マッチは西の方だけかな?
    中元は砂糖を持っていかされたっけ。

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  2. そうそう、それだけ火は大事だったのでしょうね。
    でも何世紀前の話?私達原始人か?

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  3. 蛇足
    「マッチ」を変換したら「燐寸」が出てきて独りでにやにやしちゃった。

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  4. 燐の方はわかるけど「寸」の方はなにかしら。
    3.03センチメートルではちと短いし、あっちっちのイメージかな?
    マッチッチ!

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