相馬野馬追いがテレビで報道されて、おや?と思った。なんだかずいぶん早くから取り上げているのね。いつもは梅雨明け前後に催されるのに、なにかの特集でも?と見ていたら、馬の健康状態を考えて涼しい中に行うようになったらしい。いや、馬と人の健康という方がいいかもしれない。
今から40年ほど前には毎年のように原ノ町の親戚の家に泊まり込んで見ていたので、暑い日差しと馬の疾走はセットになって思い出となっている。たしか6月か7月の最後の土日ではなかったかと思う。
私は馬が好きで本当に飼いたいと思っていたので、ここの親戚に行くのは馬の飼える場所を探していたから。馬を飼うために山一つ買って、いずれは私もそこに住もうという予定だった。しかし、当時のわたしの仕事は多忙を極め、馬どころか自分の身体を健康に維持するにも手が回らなかった。原ノ町の親戚は土地探しに付き合ってくれたけど、なかなか思うように決まらず断念した。
その家の前の大通りが野馬追の騎馬武者行列の通り道だった。農耕馬の太い足と穏やかな顔が可愛くてたまらない。この辺の殿様は相馬さま。ある年には、まだ大学生だった相馬家のお世継ぎが行列の先頭で馬を走らせていた。そのお坊ちゃまは、ほうぼうに親戚や土地の有力者や何かを見つけて、馬上から挨拶していたのがおかしかった。御殿様が「あ、どうもどうも」なんて、可笑しいでしょう?しかも茶髪のよく似合う若者だった。
圧巻は競馬。広場で行われるので少し早めに行って待っていると、遠くから異様な物音が聞こえ始めた。馬の蹄の音とも違う、今まで聞いたことのない音、遠くから馬の軍団がかけてくる。その物音は長い竿に取りつけられた旗が風にはためく音だった。旗が起こす風音が集団となって、地の底から湧き上がってくるような異様な音になる。近づくと馬の蹄の音、甲冑を着た武者姿の騎手たちの雄叫びの声。体を揺さぶられるようななんとも言えない響きに圧倒される。
馬の速さを競ったり、花火のように打ち上げられた布(タスキ?)なんという物はわからないけれど、長い布を奪い合って、それを手に入れた者はゴール地点へ向かう急な階段を駆け上がる。雄叫びの声や歓声や興奮は一気にクライマックスへ。今年は女性の騎馬武者も活躍したようだ。
結局馬のための山は見つからなかったけれど、そんなことをしていたので今私がノンちゃんから譲ってもらった北軽井沢の土地が手に入ったというわけ。でも北軽井沢の別荘地では馬は飼えない。管理人さんいわく「ま、犬までですね」
乗馬が大好きで千葉のクラブまで暇があればせっせと通った。馬の目は長い睫毛に縁取られ、体温が高いので触ると温かい。乗馬が終わって馬に水をやり、蹄の裏についた泥をかきだす。その間、こちらは後ろ向きで脚を持ち上げて泥をこそげ取る。次は反対側に回って自分の体重を馬の腹にかけて、馬の脚を浮かせて同じことをする。その間大人しければいいけれど、おちゃめな馬はいたずらを仕掛けてくる。時々カプッと二の腕を噛むこともあった。馬はそっと優しく噛んだつもりでも、しばらく青紫のアザが残ることも。それでも可愛くてたまらない。
乗馬が大好きで千葉のクラブまで暇があればせっせと通った。スキーと乗馬は未だに夢に見るほどなのに、もう今はできなくなって残念。年を取ると諦めなくてはいけないものが増える。賢い人はそこで老境に満足して穏やかに過ごせるようになるのに、私は未だ煩悩が消え去らず、欲深なのが困ったことです。
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