ツンデレとはなにかとずっと思っていた。よくネットでお目にかかるので多分あんまり褒められたものではないと思っていたけれど、なんだ、簡単にツンツンデレデレの略だそうで、いつも私はのんちゃんにツンデレされている。ずっと意味謂がわからずやっとAIに教えてもらった。
のんちゃんは元野良猫。それも筋金入りの。きれいな毛並みのハチワレ乙女だった彼女もすっかり年をとって、家で寝ていることが多い。お兄ちゃんのグレちゃんはご近所の人気者で皆さんに可愛がられているけれど、のんちゃんは好き嫌いが激しくて人馴れできない。
人間もそうだけど、おおらかな性格は本当に幸せなのに、気難しいと苦労が多い。警戒心が強くて出会った頃は決して数メートル圏内に入ってくることはなかった。
それでも毎日餌をやっているうちに、最初は尻尾に触らせ次は鼻先を近づけというようにセンチ刻みで近寄ってきて、このあたりで彼女にさわれるのは私だけとなった。彼女を抱っこしていると通りすがりの人達が「あらまあ、よくだっこできるわねえ、この子は絶対に触らせてくれないのに」これはちょっと嬉しかった。きっと皆さん衛生面のことから触らないようにしているからだと思うけれど、野蛮人の私は動物に平気で触れる。多分免疫力が半端ないと思うので。
野良猫はバイキンの巣窟。でも彼女は見た目、すごくきれいでよごれていない。もしかしたら飼い主がいるのではと思うほど。長い時間をかけてだんだん警戒心が解けて今は私と同じベッドで寝るようになった。
私が野良猫でも平気なのは子供の頃から動物と慣れ親しんできたせいだと思う。実家にはいつもたくさんの動物、小鳥や鶏、アヒル、猫は入れ替わり立ち替わり、野良犬もくる。金魚や鯉、ネズミからヘビ、ヤモリ、トカゲ、ゲジゲジに至るまで、もう数え切れないほどの野生動物が共存していた。決して山の中の家ではないのに、家族がたくさんいて良く言えばおおらか、よく言わなければズボラでだらしない。こういう家は子供と動物には天国なのだった。兄弟が多いのにそれぞれ自分の動物がいて、これでは増えるのは当たり前。
北軽井沢に初めて行って前の持ち主のノンちゃんの家を見たとき、私の実家の裏庭にそっくりだと思った。前庭は祖父が風流人だったので大きな松、牡丹や躑躅の大株や珍しい植木が植えられ池もあってちゃんとした庭があったけれど、裏庭はあまり手入れがされず私の縄張りになった。
竹藪、群生する枇杷の木、葡萄棚、月下美人が怪しく咲いてボサボサ。面積は前庭より更に広く、子どもの空想力を高めるにはうってつけの環境で、一人遊びの好きな可愛げのない子どもの秘密基地、お稲荷さんには狐様がいて古い井戸があって・・ちょっと身震いが出ますよね。その裏庭には戦後のドサクサで誰かが住んでいた。家人も全く知らない人でテントを張って。親は呑気で追い出そうともしない。しかも家の廊下にも居候のなんとかさんが寝起きしていたし。
子沢山で親の目が届かないところで何があってもおかしくない。よくぞ大人にまで生きながらえたものと思う。
ノンちゃんの家を見てすっかり気に入ってしまったのはこのせいだった。ノンちゃんも自然のママが好きで庭木の枝は伸び放題、葉のしげるまま。「いいわねえ、実家の庭そっくり!」ひと目で気に入った私にのんちゃんはこの庭を託してくれたのだった。
私の裏庭遊びは小学生の間ずっと続いた。蜘蛛の巣が張られるのをじっと見たり、木々の梢が空に広がってコジュケイの鳴き声が聞こえたり、その中で動かず頭の中だけで想像力を膨らませた。そんな私は傍目に気持ち悪く、小学校3年生のときの担当教師は「子供らしさがなく可愛そうです」と通信簿に書いた。それを読んだ私は激怒した。もともと大っ嫌いな教師だったので絶対に懐かなく、父親が心配してその教師に相談したふしがある。子供らしさ?なにさ、それ。
その教師の前では私は大変な問題児となって、でも、今思うに、その教師が問題だったのではと思う。もし皆さんの周りにボーっとして傍目わけがわからない子どもがいても放っておいてください。私はずっと様々な観察と考え事をしていた。それがおとなになってからどれほど役に立ったことか。特に私を音楽に導いてくれたのもその御蔭だったと思う。父は私が考え事をしていると嬉しそうに「今なにを考えてるんだい?」と訊いてくれた。「なんか面白いことだろう」と。父と私はそっくりなのです。
そしてうちののんちゃんに戻る。のんちゃんは賢こすぎる程で、その分神経質で警戒心が強い。私にも本当に気を許してはいない。けれど、情が深く本心は甘ったれ。それが様々な場面でツンデレとして現れる。私がパソコンに向かって作業をしていると甘えたくなって膝に乗ってくる。デレデレとしてから愛情の発露で爪を立ててくる。それが痛い!爪を外すようにすると嫌な目つきで睨んでくる。それが怖い!
挙句の果てはバリバリと爪を立てながら膝から降りて怒りながら向こうへ行ってしまう。ツンツンして。これがツンデレだそうで、今まで意味がわからなかったのはどうしてかしら。もっと難しい表現かと思っていたので。人は単純でないといけない。
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