2010年11月1日月曜日

音楽嗜好症  オリバー サックス著  太田直子訳   早川書房

Musicophilia という神経症があるらしい。私が昨日のnekotama の投稿で、(音楽が頭の中で鳴りつずけるが神経症ではなさそうだ)と言っているのはそのこと。この症状の中の一つの例は、絶え間なくリズムやメロディーが繰り返され、日常生活にも支障がでる。それを逆手にとると、モーツアルトになれるかもしれない。数列を音に置き換えると覚えられる人や、絶えずリズムをとっていないといられないとか、言語障害の幼児に発音訓練を音楽にすると、正しく言葉を答えるようになった例とか、興味深い症例が沢山ある。音楽にとりつかれたり、音楽によって障害が出たり、様々な例がとりあげられているが、音楽により障害から立ち直る人もいる。アスペルガー症候群の人が、生涯で一番役に立った治療が音楽だったと言っている例もある。彼は他人と心を通わせる手段として、ギターや歌を使う。脳による言語と音楽の処理は非常に似ているらしい。足の手術のあと歩く手段を忘れてしまった人が、音楽を聞いてリズムを取ることで、立ち上がれるようになった例もある。トゥレット症候群で体が自分の意志と関係なく動いてしまう症状(チック)、それも音楽は引き起こすときもあれば、沈静化させることもある。ジャズの演奏者には、何かを抑えられないというトゥレット症候群によって、類まれな才能を開花させたひともいる。ジャズやロックの音楽家も多い。ジャズドラマーのディビィッド アルドリッジは「自分の発作的な身体の動きをリズムを叩くことで隠し、押えきれないエネルギーをきちんとした流れに向かわせた」と言う。「私はリズムマンになる運命だった」とも。もちろんクラシックの演奏家にもいるそうだけれど。    
オリバー サックスはコロンビア大学メディカルセンターの教授。「妻を帽子とまちがえた男」はベストセラー。私もそれしか読んでいないが、ほかにも「レナードの朝」が映画化されアカデミー賞受賞するなど、沢山の著書があるらしい。「妻をぼうしと・・・」を読んだあと、私は自分の鼻を手で触っても、どうしても顔の真ん中にあると思えない時期があって、自分の影響の受けやすさに苦笑することがあった。いまでも、時々さわってみるが・・・真ん中であろうとなかろうと、どうでもいいじゃないに変化してきた。人生開き直ると、たいがいのものは怖くなくなる。私のように「少し変わっている」と言われる人より、ものすごく変わっているといわれる人のほうが才能豊かなのかもしれない。それを正しい方向にむかわせる、周囲と本人の努力や運があればですけど。

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