2014年2月1日土曜日

ベルリン八重奏団 黄金のピアニシモ

樫本大進(第一ヴァイオリン)
ロマーノ・トマシー二(第二ヴァイオリン)
アミハイ・グロス(ヴィオラ)
クリストフ・イゲルブリンク(チェロ)
エスコ・ライネ(コントラバス)
ヴェンツェル・フックス(クラリネット)
シュテファン・ドール(ホルン)
モル・ビロン(ファゴット)
横浜みなとみらいホール

このコンサートを聴くために、雪山からたった半日滑っただけで帰ってきてしまった。
こんなドジは生れて初めてというワケではなくて、しょっちゅうだから周りも驚いたりしない。
自分ではすっかり達観していて悟りの境地に入っている。

以前はベルリンフィルのメンバーと言えば、顔も名前も知っていたのに、さすがに世代交代が激しくて最近の人はとんと覚えられない。
樫本大進は最近リサイタルを何回か聴いたので、落ち着いたスケールの大きい音楽は、私の琴線に激しく触れるものがある。
初めて彼の演奏を聴いたのは東京フォーラムで行われたスマトラ沖大地震のチャリティーコンサートで、私は各オーケストラの選抜メンバーによって編成されたオーケストラの一員として演奏していた。
オーケストラに属していないフリーの私がそこに居るのもおかしいけれど、色々なオーケストラの懐かしい人達に会えてうれしかった。
それよりも初めてそこで樫本大進の演奏を聴いて、本当に素晴らしいヴァイオリニストが日本人から出現したことを知って、もっと嬉しかった。
それ以来私は彼の大ファンとなった。
しかし、その時には彼がベルリンフィルのコンサートマスターになるとは想像もしていなかった。
ずっとソリストとして行くのかと思っていたので、ベルリンフィルに入ったと聞いて驚いた。
世界の最高峰のオーケストラのコンサートマスターと言えば、オーケストラ経験の豊かな人・・・と思いきや、彼は経験無しでいきなりコンサートマスター、さぞや緊張の連続に違いない。
聞くところによれば他のメンバーからも愛され、試用期間中に協奏曲の伴奏をしていたとき、ソロに聴き惚れて出る場所で出なかったけれど、それでも他の団員たちが笑って許したそうだ。
オケマンは意地の悪い人が多くて、そんなときにはここぞといびるものなのに。

今日はみなとみらいホールの超満員のお客さん達が息をのむすばらしさ。
プログラムは
R・シュトラウス  もう1人のティル・オイレンシュピーゲル
モーツァルト    クラリネット5重奏曲
シューベルト    8重奏曲ヘ長調
シュトラウスは私も大好きな作曲家で、洒脱で、個性的でメロディーの美しさは蕩けてしまいそう。
そして私の「神様」モーツァルトのお馴染みの曲は、耳を澄まさないと聞こえないほどの繊細なピアニシモ。
満員の聴衆が吸い込まれるようにシンとなって聴いている。
鳥肌がたつ美しさ。
普段のコンサートでは得られない、心の奥底深い意識の中でたゆたうような、精妙な心の分野に分け入っている自分を感じた。
それは瞑想などで得られる心地よさと同じだった。
もう少し自分に文字での表現力があったら伝えられるのに、というもどかしさがある。
クラリネット5重奏が始まって1楽章では妙な違和感があった。
それはヴァイオリンとクラリネット奏者の微妙なテンポ感のずれ。
音の立ち上がりがクラリネットのほうが早い。
なぜかヴァイオリンがわずかに遅れて居る。
それはほとんど気が付かない人が多いかも知れないけれど、発音する一瞬がしっくりこない。
さすがの樫本大進もモーツァルトに臆しているのかと思った。
それが2楽章に入るとずれは無くなり、その後はもう渾然一体となって私たちをとりこにした。
こんな美しいピアニシモは今まで聴いたことがない。
これを聴くためにスキーを放り出したかいがあった。
休憩後も美しかったけれど、なぜかシューベルトの曲は私には全部「子守歌」になってしまうのです、ここだけの話ですが。
































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