2014年5月7日水曜日

公開レッスン

ここ数年毎年行われるハビブ・カヤレイ氏の公開レッスンを聞きに行った。
スイスのカヤレイ・ヴァイオリン・アカデミーで研鑽を積んだヴァイオリニストの細野京子さんの主宰。
師であるカヤレイさんの教えを日本に広めたいと、ここ数年尽力されたのが実を結んで、すっかり定着したのは喜ばしい。
彼のレッスンを聴いていて感動するのは、美しい音に対する飽くなき情熱。
いついかなるときも決して音を粗末に扱わない。
受講者が出来なければ出来るまで教える。
1時間のレッスンで出来るのは殆ど曲の冒頭部分のみ。
その間何回も何回も繰り返し、理想の音に近づけさせようと努力する真摯な姿勢に胸を打たれる。
受講者の音が次第に変わっていくのも聴いていて愉しい。
どんなに時間がかかっても諦めない。
そして温かい人柄が生徒を揺り動かして、初めはカチカチだった体の力が抜けていく様を見ると、教師たるものこうあるべきと一瞬猛反省をする。
すぐ忘れてしまうのがいけないけど。

先日見学したのはフランスのオリヴィエ・シャルリエ氏のレッスン。
パリ音楽院の教授でありロン・ティボー国際コンクールの審査員である鬼才のレッスンは、曲の構造と和声についてが主だった。
例えば16分音符の連続であっても、全部弾き方が同じではないということ。
曲がどんな構造になっているかを解き明かしていくと、見る見る立体的になっていくのが素晴らしかった。
日本人の生徒達は、いずれも技術的には申し分ないのに、なぜか演奏が平板なのは、こうした曲の分析力がないからではと思う。
今の若者の技術は十分に世界的水準にある。
だから和声と構造に対する勉強をすれば、世界でもトップクラスになれるはず。
私は今までのんびりと音楽を楽しんでばかりだったけれど、こういう人達のレッスンを聴くと、なぜ留学しなかったのか悔やまれる。
オーケストラと室内楽があまりにも面白くて、外国に行くように勧められても、その余裕もなかった。
前述に重複するが、日本には優秀な先生と生徒達がいるのに、今ひとつ何かが欠けているのは、こうした構造と和声に裏打ちされた音楽の組み立て方を知らないからだと思う。
日本人は世界的なコンクールで優秀な成績をおさめているけれど、生まれながらに持っている伝統の力にはかなわないと時々実感する。













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