2023年9月5日火曜日

北軽井沢は合宿のメッカ

後期高齢者アンサンブルの合宿のあとの北軽井沢に今度は若手が集まってきた。音楽教室の弦楽アンサンブルの合宿。もうすぐ発表会なので練習にも熱が入る。このアンサンブルも結成されて何年になるのか記憶にないけれど、着々と実力をつけ始めてきた。はじめの頃は最初の音が出るたびに「この世のものとも思えない」という私の酷評を浴びせられていた彼らがハモり始めているではないか! 

最初の頃はハモるということが音程だけでなく音色やバランスも必要ということを理解していなかったらしい。ギャアギャア、またはキャアキャアなどと大きな音さえ出て最初と最後が一緒であれば出来上がりだと思っていたらしい彼らが、最近はドキッとするほどハモることがある。偶然か必然かは定かでないけれど。

今回の曲は弦楽合奏のための曲ではなくモーツァルトのシンフォニー29番、音楽教室の管楽器の講師が充実してきたからかもしれない。このアンサンブルはメンバーの独立王国だから、講師も教室スタッフもメンバーの決めたことに口は出さない。最近は弦楽器だけでもチャイコフスキーやドヴォルザークの弦楽セレナードも弾いてのけるようになったのは目覚ましい進歩と言える。しかも「この世のものとも思われない」音もめっきり減ってきて時々私が目をうるませるほどの音が出るようになって、それは彼らが意識したからか無意識でたまたまそうなったのかはわからないけれど、とにかく偶にでも嬉しい。

珍しく褒めたら「先生優しくなった」と言われた。歳をとって優しくなったと言いたいのだろうけれど、時には彼らの努力も認めておかないと暗殺されかねない。私はそんなに怖い教師ではないとは思うけれどしつこいことは確か。ある人に他の先生は注意はなさるけどそこまでしつこくはない。けれど先生(私)はできるまでやらせると言われたことがある。楽器の演奏は一朝一夕にできることは考えられないから毎回のレッスンで口を酸っぱくして教えているうちに2、30年くらいは通ってきてくれる。それでもまだしつこく同じことを言われてよく倦きもしないで来てくれるものだと感心している。

先週土曜日、北軽井沢ミュージック・ホールに集まったメンバー。それぞれ働き盛りの社会人たちだから忙しいと思うのにこんな僻地までようこそ!車やバス、新幹線などそれぞれの手段で集まってくる。ここ数年コロナ感染のおかげで散々な目にあった。町役場の公共の施設を借りようとすると地元民でないと貸せないとか言われて私が激怒したり、せっかく結婚したカップルが参加するのでケーキや軽いイヴェントを用意したのがおじゃんになったり、不快なことが続いたのに、今年もニコニコと参加してくれるのが嬉しい。しかも数年前に転勤で名古屋に行ってしまった人もメンバーに戻ってきた。合宿には参加しなかったけれど、来年はしっかり発表会のステージに立つと思う。

練習後メンバーたちは一旦ホテルに帰ってから近所の食堂で夕食を一緒にとった。食後は我が家の狭いリビングでひしめき合って軽く飲んだり楽器を弾いたり・・・森の中の家は夜中まで弾いても聞こえない。最近私は夜中にヴァイオリンの練習をする習慣になってしまった。夜の静寂に響く奇っ怪な音、そのうち探検隊が来るかも。女性のメンバーたちは早めに宿へ引き上げ、残ったのは長年私が個人レッスンをしていた人たち。優秀な彼らの一人はこの音楽教室で目覚ましい進歩を遂げて、私がやめたあともどんどん難しい曲に挑戦、いまやシベリウスのヴァイオリン協奏曲を発表会で弾くというから驚いた。しかも発表会の直前に中国や韓国に出張が続いているというから仕事の面でも大活躍なのだ。すごいなあ。飲み終えると楽しげに真っ暗な森の中をホテルまで歩いて帰っていった。

二日目はメンバーが多少入れ替わったのでヴィオラがいなくなってしまった。それで私がコンサートマスターが持ってきたヴィオラを弾く羽目になった。コンマスは身長はたぶん180センチを超えるかと思える。私はたったの140センチ。彼の巨大なヴィオラを借りたら指が届かないところが続出。それより顎にも挟めない。呼吸困難になりながら数回やっと弾いたけれどすぐにギブアップした。しかし楽譜はまだ読めるんだ。そのことで少し安心した。

二日目の練習所は長野原町役場の多目的室。北軽井沢から車で30分ほどの距離があるので設備は良いけれどあつまるのは大変のはずだったけれど、気持ちの良い空気、明るい日差しで皆嬉しそうだった。2日の合宿が終わって、来年はこの合宿ができるか私は自信がないけれど、メンバーがすっかり定着して和気あいあいとしている様子が彼らの音に対する進歩と相まって、今後もずっと進化していけると信じている。

モーツァルトは他のどの作曲家よりも難しい。なぜなら音は単純でハッタリやごまかしが効かないから。純粋に必要な音しか使っていないから、どの音が外れてもバランスが崩れてもすぐに和声に影響してしまう。今までの練習の成果が問われる節目の時期かもしれない。モーツァルトで成功したら彼らの水準がぐんと上がるきっかけになるから、今回は特に真剣なステージとなるかもしれない。私を嬉し泣きさせるか憤死させるかは彼らの覚悟にかかっている。































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