2018年4月24日火曜日

あおによし

京都から近鉄線で橿原神宮で吉野線に乗り換えると、とある無人駅に到着。
そこから徒歩数分、立派な古民家にたどり着く。
そこがHさん夫妻の奈良の家。
去年は4月の初めころ泊めていただいて、寒さに震え上がった。
四人で8組の布団を使って身体は暖かかったけれど顔が冷たくて、朝、布団から出られなかった。

今年はアマチュアオーケストラの合宿をするけど来ない?と誘われて、ノコノコでかけた。
オーケストラで一緒に弾くのかとおもったら、プロは参加しないで遊んでいてよろしいとのこと。
最近の私はすでにプロの殻を脱ぎ捨てて、セミプロ。ミ~ンミ~ン!
それで宴会要員として参加。
しかし、30人もの人が集まるというので恐れをなして、古民家には泊まらずホテル住いをすることにした。
朝、トイレにズラッと並んで順番を待つ図が目に浮かぶと、もうお腹が痛くなりそうで。

新幹線で昼ころ京都へ。
そこで、さあ、どうする。
夕方にならないと人が集まらないから、古民家は留守。
行っても入れない。
それでホテルにまずチェックインして、そのへんを見て歩いてからシャワーを浴びて出掛けることにした。
今回予約したのは、大和八木と言うところにあるカンデオホテルズ。
丁度土日で中々予約が取れなくて、奇跡的にヒットしたのがここ。
ダブルの部屋を独り占めする贅沢さで、お値段はそれほど高くはない。

行ってみると実に綺麗で、フロントは美人揃い。
今まで泊まったホテルの中でも、1番過ごしやすい部屋だった。
しかも駅から近い。
ただ一つ、大浴場に行く時にブカブカのガウンを着てスリッパで、レストランを横切るという、これ設計ミス?
恥ずかしい。
随分前に泊まったあるホテルはフロントの前を横切らされたから、宿泊客の前を浴衣で歩くはめに。
それよりもまだマシかも。
あるホテルでは「お風呂に行くのにスリッパでいいですか?」とフロントに訊いたら「は、スリップでございますか」と素っ頓狂に言われて「いえ、スリッパです」と言ったら安堵した声で「ああ、それならよろしゅうございます」
電話した友人が受話器を置くなりしばらく涙を流して笑っていた。

とにかく新しく良いホテルだった。

今井宿というホテル近くの武家屋敷跡を散策。
しかし、暑い。
この日は全国真夏日で、すこし歩くとめまいがしそうだった。
今井宿は人が住んでいて普通にここで生活しているけれど、本当に綺麗に保存されている。
そこの1軒に造り酒屋があって日本酒の試飲をしていたら、暑さと疲れですっかり酔っ払ってもうこれ以上あちこち歩く元気もなく、赤い顔してホテルに帰った。
この日は赤い顔していても暑さのせいと見られたと思う。

夕方暗くなる前に古民家にたどり着かないと、駅からそのお宅までは真っ暗。
タヌキに化かされないともかぎらないから、日の暮れる前に到着。
まあ、なんと!人がいるはいるは。
子供が大勢、大人も大勢。
子どもたちはしっかり躾けられているとはいえ、声が甲高い。
エネルギーが違う。
2時間も一緒に居たら、帰路は夜道ではあるし無人駅の待合室で一人居るのもこわいから、9時ころには戻ることにした。

もう帰っちゃうの?と誰かが言うけれど、うら若き??乙女がムジナに化かされないようにしないと。
ほんの5分弱の道のりも真っ暗だと長く感じる。
吉野線を開通する時に、この家の先々代が「うちの近くに線路を通せ」と言ったら、こんな近くに線路を曲げて通したそうで、それで駅もすぐそば。

ホテルに戻ってテレビを見ていたらあっという間に眠ってしまった。
次の日はオーケストラの練習だから、私は用なし。
ご当主さまの車をお借りして、室生寺までひとっ走り。
参加者の中にプロのクラリネット奏者Kさんがいて、彼女も練習は免除だったのに午後から参加するそうで、でも室生寺に一緒に行きたいという。
そんなわけで早めに出発して午後には彼女を練習場のやまなみホールへ送り届けないといけない・・・ということになった。

室生寺は今シャクナゲが真っ盛り、日曜日で山道は狭く渋滞すると逃げ場ないと脅かされたので、ひたすら急ぐ。
このあたりは神話の里。
到るところに神社、古墳などがある。
どこを見ても綺麗な山並みと畑やまばらな集落。
本当に「やまとしうるはし」なのだ。
室生寺に到着するとまだ人は少なく、ゆっくりとシャクナゲの群生を眺めた。
五重塔は意外と小さいけれど、きっちりとまとまった感じで非常に美しい。
これは何回も建て直したのかしら。
同行のKさんは足が悪くて階段が苦手。
一人で見てきてと言われたから石段を登る。
降りていくとKさんは若いハンサムなお坊さんを捕まえて、なにやら親しげにお話をしている。おやまあ!

室生寺を後にして走っていると、酒屋の看板。
このへんは、なんとも酒屋が多いので忙しい。
お酒を買おうと行ってみると、中がレストランになっていて美味しそうなランチが食べられるという。
この時点でKさんの練習参加の気持ちにぐらつきが出てきた。
一度はその場を後にしたけれど、引き返した。
具沢山の味噌汁、かんぴょうの煮物、ピクルス、切り干し大根などの小鉢があって、麹をまぶして焼いた豚肉の薄切りがメイン。
これがほのかに甘くて美味しい。
全部ペロッと平らげた。

その後はひたすら山道を走って二度三度同じところをぐるぐる回ったり迷ったりしながら山奥の練習場に無事Kさんを送り届けて一人、山道を下った。
Kさんとお話をしていたら、私がオーケストラ時代にとてもお世話になったクラリネットの故北爪利世さんのお弟子さんだったということが判明。
北爪さんは皆からヅメ先生と呼ばれ、生徒たちからは勿論のこと、同僚のオケのメンバーたちからも敬愛されていた。
音楽界の偉い先生なのに、威張らず驕らず、ニコニコした笑顔の素敵な方だった。
私がオーケストラに入ってすぐ演奏旅行に車で行った時から、ずっと車の仲間として先生の車に同乗したり並んで走ったりさせていただいた。
その懐かしい名前が話題に出た時、思わずKさんと二人で泣いた。
この日、山道を迷って何回も同じところに出てしまったのが、**橋北詰というところ。
あら、又北詰よ、ヅメ先生がそのへんにいるんじゃない?と冗談を言いながら、又戻ってしまう。
きっと、ヅメ先生がそのへんで笑っていらっしゃるわね・・・なんて。

その夜も私は古民家宴会に参加。
又真っ暗な夜道を辿って無人駅から大和八木に戻った。

次の日はこのホテルのチェックアウトが11時なので、遅めの朝食を摂りゆっくりと午前中を過ごした。
帰りの新幹線の時間は15時ころ。
それまでこの辺を見ながら帰ろうと思いついて、ホテルの隣の観光案内所に行ってみた。
大和八木から京都までは近鉄線で一直線だから、途中下車しながら徐々に京都へ行けばいい。
途中下車しながら京都まで行くので、沿線の名所を教えてくださいと言うと、では奈良はどうですか?と言われた。
時間が4時間ほどしかないので、見物しながら行くとなると、他の線に乗り換えるのは時間のロスになる。
奈良に行くのは奈良線に乗り換えないといけない。
奈良は沢山見どころがあって、そんな短い時間では無理。
最初に丁寧に説明しているのに・・・
だから同じ線で行くのが1番良いわけで、どうも話が通じない。
お花がお好きですか?とかどんなふうにと言われても、それはその場で自分で考えるので名所のある場所だけ教えてほしいといっても、モジモジされてしまう。
私なら、この駅の傍にはこれとこれ、この駅は**寺があります、あとはお好きにどうぞと言うのだけれど。

仕方がないから地図だけ貰って自分で歩くことにした。
去年来た時に平城京跡、薬師寺、唐招提寺と歩いたけれど、今回は薬師寺を飛ばし唐招提寺から歩くことにした。
目的は唐招提寺と垂仁天皇御陵。
唐招提寺は修学旅行で来た時に、大変感銘を受けたお寺。
去年訪れた時に、その当時受けた印象そのものだったことに驚いた。
確かこの辺に大きな木があったはずなんだけど、と言っていたら、古い写真にその木が写っていて、自分の記憶力にびっくりした。

垂仁天皇御陵は近鉄西の京駅から尼ヶ辻駅まで歩く途中の左側で、去年思いがけず見つけた。
池の向こうにこんもりとした森がある。
それが御陵。
そこに佇んでいると「悠久」という言葉が自然と浮かんでくる。
この風のなかに当時の人も立っていたのだろうと。
去年は少なかった白鷺などの鳥たちが木にたくさん止まっている。
巣作りしているのだろうか。
盛んに水面を滑るようにして魚を取っている黒い鳥はなんだろう。

結局去年と同じところしか行かれなかったけれど、どうしてももう一度ここに来たいと思わせるものがある。
自分の中でジワジワと倭が形成されていくのがわかる。

室生寺の写真はことごとく失敗。
人様にお見せ出来るようなものでは無い。
よほど才能がないらしい。
唐招提寺は今このお花が真っ盛り。
せめてこの高貴な花の写真をご覧あれ。


鑑真和上のふるさとの花と聞けば、ありがたい気持ちになるでしょう。
昔の人達が荒れた海を亘る危険を犯しても広めたいと思う宗教的な情熱のおかげで、今の日本の文化ができていると言っても過言ではないのだから、感謝!








































2018年4月15日日曜日

梯剛之とモーツァルト

東京文化会館小ホール

モーツァルト ピアノ協奏曲K.413,414,415

梯剛之さんは私の知人の息子さん。
お父さんはN響のヴィオラ奏者だった。
彼とは学生時代からのお付き合いで、一緒に弾いたり飲んだり。
飲むとこの上なく愉快になる人なのに、そういう姿を家では見せないようだった。
八ヶ岳音楽祭にはいつも剛之さんと一緒に参加している。
父子は食事のときには私達と同じテーブルで一緒に食べる。
剛之さんに「お父さんは飲むと愉快だよね」と言ったら「ちょっと!そういう話はしないで」と大慌てで止められたから、家庭では厳しい父親であるらしい。
ここで暴露しても大丈夫かなあ。
皆さんここは読まなかったことに。

そんなわけで剛之さんの演奏は、彼のずっと若い頃から何回も聴かせてもらった。
毎回厳しい研鑽の跡が見える演奏で、音色の追求をするあまり音楽が前に進まなくなった時期があったり、つぎに聴いたときには軽く輝かしい音が飛び跳ねたり。
それは手にとるように彼の追求する姿勢の現れだった。

幼少時に光を失って、日本の学校では受け入れてもらえず、ウイーンに。
お母さんと二人で苦労を重ね、数々のコンクールで輝かしい成果をあげている。
段階を踏んでずっと聴いている私には、彼の成長が嬉しい。
お父さんと同じく冗談の好きな普通の青年だけれど、音楽は増々深みを増している。

毎年8月14日に行われる国立での同窓会コンサートに、彼も参加してくれた。
私はその時同級生のSさんと、モーツァルトの「ソナタ」Eーmollを弾いた。
モーツァルト弾きの彼の前でモーツァルトを弾くのはいささか気がひけたけれど、大きな声で「ブラボー!」と拍手をしてくれた。
性格の良さもお父さん譲り。
猫の弾いたモーツァルトは、にゃんにゃん言って聞き苦しかったでしょうに。

今日のモーツァルトは格別のものだった。
K.番号が若いから彼の若い頃の作品だけれど、3曲続けて作曲されたものと思うのに、それぞれとても作風が違う。
特に413は音楽の骨格だけのようなシンプルさであるのに、剛之さんが本当に上手く弾いたのには感激した。
一緒に聴いていたピアノのSさんが「こういうのって1番難しいのよね」とつぶやいた。
416は風格すら漂う成熟した作品となっているのには驚いた。
僅かな時間差でこれほど進化するものなのか。
モーツァルトの天才たるゆえん。

今日のオーケストラはアカンサスⅡ。
我らが「古典」のメンバーであるヴァイオリンのNさんと梯さんのお父さんが、このアンサンブルのメンバーでもある。
学生時代に結成されて、その後皆それぞれの道で活躍。
今再び集結してこうやって演奏できる。
演奏も良かったし、そういう事情を知るとなんて幸せなことだと思う。

アンコールはショパンのピアノ協奏曲の2番、第2楽章。
モーツァルトを演奏する時の真珠を転がすような華やかさと軽さは姿を消して、心を焦がす恋や人生の悩みを背負って歩く姿を表すような深い音。
力強い表現と強弱それぞれの響きの豊かさ。
ピアニストとして剛之さんがまだ伸びていくことを暗示するような素晴らしい出来栄えだった。
ショパンが始まった途端、私の心が急に若い日に戻ったのには驚いた。
なにもかもが新鮮で激しくて、そんないきいきした感情がこみ上げてきて涙がこぼれた。
やはりピアノはショパンが最高。
アマデウスよ、許して。

父親が弦楽器奏者ということが剛之さんに影響を与えているのではないかと思うのは、私の独断と偏見かもしれない。
流れるように鍵盤の上を移動することで、なめらかでアタックの少ない奏法が出来る。
無駄な上下動はしないですむ。
これは弦楽器の奏法と似ている。
上から叩くようなピアノ演奏はよく聴くけれど、弦楽器は弓を返す時にアタックをどうやって少なくするかを目指す。
それが出来るようになるまで苦労するのは、こんな簡単な作業がいかに難しいかということで、それのピアノ版といえばおわかりいただけるかしら?
今後も楽しみに聴き続けていきたい。












イタリアのデザイン

自分の身の回りの衣類を見渡すと、いやにイタリアのデザインが多い。
今日は文化会館のコンサートを聴きに行くので、いつもよりすこしおしゃれをしようと思ってワンピースを来ていくことにした。
イタリアンシルクの薄緑を基調にしたペイズリー模様。
イタリアンペイズリーと言うらしい。
5分袖で、今頃の季節には重宝する。
なんでもイタリアンをつけると美味しそうに聞こえる。
これはイタリア直輸入だから、正真正銘のイタリアもの。

そして白いジャケット。
これもイタリアもの。
それから靴はルコラインの薄いグレーのスニーカー。
外側に光るRのロゴマーク。
ハイヒールが履けなくなったので、おしゃれなスニーカーを履くようになった。
ルコラインは足にぴったりで、何足も持っている。
それからバッグはやはりイタリアのブランドのグレーにスカイブルーの色が美しい。

こうして考えると驚いたことに、私の衣類はイタリアの製品が圧倒的に多い。
困ったことに中身が日本人でしかもとりわけ小柄なので、サイズ合わせに苦労する。
近所の服のリフォーム店に持っていって、丈つめやデザインの変更をお願いする。
そこの奥さんが言わずもがなのことを言う人で、いつも腹を立てて帰ってくる。
仕事はきちんとするけれど「こんなに切っちゃうの、もったいない」とか「本当にこんなに短くしていいの」「模様がなくなっちゃうわねえ」とか・・・
「だって小さいんだから仕方がないでしょう」思わずムッとする。
切らなければ「松の廊下」状態で引きずってあるかなければいけない。

小さいのは別に自分では気にならない。
ちょっとしたからかいも愛情表現と受け取って一緒に笑えるけれど、事実をドーンと突きつけられるといささかムッとする。
不思議なことに大柄な女性をからかう人は少ない。
大きいことは良いことだ~と歌った山本直純氏は小柄だった。
チワワをかまう人はいてもボルゾイを笑う人はいない。
小さいのはかまう対象になるのはいささか腑に落ちないぞ。
と言いながら小柄で得することが多いのも事実。
大抵の男性は、私が荷物で苦労していると手を差し伸べてくれる。
スーツケースが必要以上に大きく見えるらしい。
世話好きの女性もなにくれとなく面倒見てくれる。
甘ったれの末っ子は、世話されるのが大好き。

さてイタリアのデザインが好きなのには理由がある。
とにかく面白いからなのだ。
随分前に買ったセーター。
深みのある紫。
前身頃の斜めの編み込み模様も素敵。
でも、不思議なことに前身頃と後見頃と長さが違う。
やけに前身頃が長い。
不思議に思ったけれど、そんなデザインだと思っていた。
ある時やっと気がついたのは、日本人女性とイタリア女性のバストのサイズの違い。
試しにストッキングを胸に詰め込んでみたら、なんと!前後の長さが揃った!

そんなふうにサイズは特に私には合わない。
カタログで膝丈と書いてあるのはくるぶしまで、ミニと書いてあるのは膝丈になる。
これはある意味重宝で、すこし長めの物を買うとロングドレスになる。

以前仕事場でよくお目にかかったピアニストのKさん。
「nekotamaさんって本当に変わった格好するよね」
それだけでなく「nekotamaさんって本当に変わってるよね」
それだけでなく「nekotamaさんって本当に変だよね」
おいおい、そこまで言うか。
そうなんです、私は変わっています。
それはあまりひと目を気にしないからなんです。

自分が面白いと思った物が好き。
人間も、私の周りには変わった人だらけ。
今日来ていく予定の白いジャケット。
綿、シルク、メタルの素材で皺加工。
「変わった素材ですね」と言われたら「顔とコーディネートしました」とでも言おうと思っている。
メチャクチャ大きな皺が寄っていて、アイロンをかけてもどうしようもない。
私もすでにアイロンがきかない段階の皺加工中。
別にイタリアのものだから買うのではなく、ほしいと思ったものがたまたまイタリア製品ということなのはヴァイオリンを弾く人だから?
















2018年4月4日水曜日

ああ、無残!

いつもの女子会をする日が近付いてきたら、一人都合の悪い人が出てきた。
急な身内の不幸や介護の都合が重なって、出来れば日を替えてもらえないかという。
もし変更がきかなければ今回はパスということになる。
どうせ皆暇なんだけど、それでもまだ色々浮世の柵に縛られる。
特に生き死にに関することは待ったは許されない。

そういうことになると皆さん、私に仕事をじわじわ押し付けてくる。
「その変更のメールは私はしなくてもいいわよね?」と言うと受話器の向こうで軽くモジモジする気配。
やれやれ、結局私がやることになるのだわ。
ネットで食べ物屋さんを調べるのも好きだし、フットワークが軽くて下見に行くのもいとわない。
そんな落ち着きの無さで足元見られて、プンプンしながら、まあ、好きでやっているようなわけでして。

それなら私の家の近所のレストランにするからねと言うと、大賛成よと明るい。
結局もうひとり欠員が出来て、いつもの6人のメンバーは5人に。
店に予約の電話を入れた。
人数を言うと「大人の方だけですか?」と訊かれた。
「はい、大人だけです。大人になったのは随分前ですけれど。」
電話の向こうで店の人が爆笑している。
「ああ、それは結構ですね。大歓迎です」

それで皆さんに予約が取れたご報告。
「随分前に大人になったと言ったら大歓迎だそうで、厚化粧でよろしく!」
「は~い、厚化粧していきます」ウキウキした返信が。
でもこのグループで厚化粧の人は一人もいない。
ほぼすっぴんで現れる。
私も口紅を塗るのはコンサートのときだけ。
塗っても5分で食べてしまうから、跡形もなく消えてしまう。
アイラインと眉毛は面倒だからアートメイクで入れてもらった。
これでファンデーションだけ塗れば化粧完成!
無精の権化だから、お化粧に1時間もかけるという人を見ると、どうやってそんなことに時間を費やせるのかと呆れ返る。
それでも最近ネットで化粧の動画を見ると、只々感心する。

こう言ってはなんだけど、すごくブサイクな女の子がお目々ぱっちり色白の美人に化けるところを見ると、化粧の威力はバカに出来ないなと思う。
私も若い頃にこのくらいお化粧を頑張ったら、玉の輿にのれたかしら。
惜しいことをしたものだ。
それで結婚して素顔を見られたら離婚さわぎだなあと、他人事ながら心配する。
最近やっと電車の中でのお化粧が減ってきたけれど、以前向かい合わせのシートでお化粧を始めた人がいた。
退屈だから鑑賞していた。

普通に美人なのに、アイラインを入れる時に目を剥くから白目の後まで見えた。
あまりおかしかったから笑っていたら気が付かれてしまった。
「えっ!なになに、どこか可笑しいの?」と鏡でしきりに自分の顔を点検している。
そのあと思いっきり睨まれた。
あんなふうに人前で白目を剥いて、それを見た男性はドン引きになるでしょう。
100年の恋も一瞬にして醒めるケース。
お化粧しなくても充分きれいなのに。

この私でさえ、お化粧しないほうがまし。
時々厚塗すると、夏の日照りでヒビの入ったアスファルトみたいに、ファンデーションが割れる。
実に見苦しい。
老眼だから、それに鏡を見なければ自分の顔は見えないから、耐えていける。
若いうちから厚塗りはもったいない。
高齢になっての厚塗りも無残!

ずいぶん前に大人になった割に、中身は子供。
いたずらと冗談で他人を怒らせるのが特技。
上品で真面目な人を見ると、どうやったらあんなふうになれるのかしらと思う。
なにをやってもちょっとひねってみたくなる、これは業ですね。
でもね上品でも下品でも、やっていることは大差ないんだわ。
生き物だから食事もすれば**もする。
伏せ字にしたからって私の下品さは拭いきれない。

























2018年4月3日火曜日

築地再訪

先日の花見の時に、築地で買った牛すじで出汁をとったおでんが大好評だった。
もっと食べればよかったという声がいくつか聞こえてきた。
そうよ、人生一期一会だからその時々に悔いのないように食べないと。
私だっていつもあんなに上手く出汁が取れるわけではない。
上手く出来た時に食べてもらわないと、失敗した時の汚名を挽回することが出来ない。

今朝10時15分、築地本願寺前で待ち合わせ。
しかし「電車が動かない」とツアーコンダクターからのショートメールが来た。
ライオンのたてがみのようなスタイルのコンダクターは、築地に顔の広いHさん。
「電車どうやって止めたの」とメールを送ると「ウインク」「電車が私に悩殺されちゃった」のだそうで、どこでもいつでもお騒がせの人なのだ。
それでも駅に2分遅れの到着、さすがミュージシャンは時間に正確。

フワッフワのたてがみヘアーをなびかせて、ものすごく混雑した築地場外を猛スピードで案内してくれる。
今回は私のスキー仲間のHさんも参加。
頭文字が同じだから、コンダクターはM子さんとする。
先日築地にいった時は、雪混じりの霙が降る寒い日だった。
今日は春を一気に通り越して夏のような暑さ。
今年の冬が寒かったから、暑さが苦手の私にはこの落差が受け入れられない。
あっという間に汗ばんでくる。

先日と同じ寿司店に顔をだす。
先日と同じ江戸前のコース。
ピカピカのイワシ、とろとろのマグロ・・・
それはもう口の中で蕩けるように美味しい。
ここのお店はご飯がなくなると閉店だそうで、だからお昼まで待っていられない。
それからは怒涛のように混雑をかき分けて進む。
早足は得意でも前が進まないからかき分けるのに苦労する。
今回も牛すじ、黒豆の煎ったもの、マグロを買う。

築地の場内は関係者以外は10時まで立入禁止だそうで、私達が行ったのは11時過ぎ、その頃になるとたいていのお店は終わっている。
後片付けをしている人たちが勢いよく働いている。
私は働いている人を見るのが好き。
キビキビと働く姿に感動する。
車やカートや発泡スチロールを抱えたお兄さんたちが、ひっきりなしに通る。
鈍い人だと跳ね飛ばされそう。
せりの行われている時間に来たら戦場のようなのかもしれない。
「その時間は入れないから」とM子さんが場内のお店の人に言ったら「仕入れに来ましたと言えばいいのよ」と教えてくれた。

この人達までM子さんの知り合いとは恐れ入りました。
どこに行っても彼女の秘密諜報員が潜伏している。
彼らからモナカまで頂いてしまった。
このモナカは食べようとすると消滅するかもしれない。
情報が入っていたら、それごと食べてしまうかもしれない。
全ての情報は、お寿司屋さんの隣の豆やさんから彼女にもたらされる。
ここにもM子さんのスパイが・・・いえいえ、単なる小学校時代の同級生のようで。
あの大混雑の中でお店を選ぶのは至難の技だけれど、こういう強い味方がいるとなると頼もしい。
私はそれに便乗して良い思いをしている。

以前、知人のお見舞いに聖路加病院に行った時、帰りに築地でお寿司食べて帰ろうと言って歩き始めた。
ちょうどその日はお祭りで、横道を覗くと餅つき大会をやっていた。
あまり人が集まっていなくて、餅つきの人たちにワッと取り囲まれてお餅をごちそうになった。
次々と出されるお餅でお腹がいっぱいになって、残念なことにお寿司はもう入らない。
そんなことも楽しい想い出。

移転された市場にはあまり行く気はしない。
雰囲気が全く変わってしまうでしょう。
幸い場外は残るそうだけれど、今以上に混雑することは予想される。
今のうちに沢山行っておかないと。