2018年4月24日火曜日

あおによし

京都から近鉄線で橿原神宮で吉野線に乗り換えると、とある無人駅に到着。
そこから徒歩数分、立派な古民家にたどり着く。
そこがHさん夫妻の奈良の家。
去年は4月の初めころ泊めていただいて、寒さに震え上がった。
四人で8組の布団を使って身体は暖かかったけれど顔が冷たくて、朝、布団から出られなかった。

今年はアマチュアオーケストラの合宿をするけど来ない?と誘われて、ノコノコでかけた。
オーケストラで一緒に弾くのかとおもったら、プロは参加しないで遊んでいてよろしいとのこと。
最近の私はすでにプロの殻を脱ぎ捨てて、セミプロ。ミ~ンミ~ン!
それで宴会要員として参加。
しかし、30人もの人が集まるというので恐れをなして、古民家には泊まらずホテル住いをすることにした。
朝、トイレにズラッと並んで順番を待つ図が目に浮かぶと、もうお腹が痛くなりそうで。

新幹線で昼ころ京都へ。
そこで、さあ、どうする。
夕方にならないと人が集まらないから、古民家は留守。
行っても入れない。
それでホテルにまずチェックインして、そのへんを見て歩いてからシャワーを浴びて出掛けることにした。
今回予約したのは、大和八木と言うところにあるカンデオホテルズ。
丁度土日で中々予約が取れなくて、奇跡的にヒットしたのがここ。
ダブルの部屋を独り占めする贅沢さで、お値段はそれほど高くはない。

行ってみると実に綺麗で、フロントは美人揃い。
今まで泊まったホテルの中でも、1番過ごしやすい部屋だった。
しかも駅から近い。
ただ一つ、大浴場に行く時にブカブカのガウンを着てスリッパで、レストランを横切るという、これ設計ミス?
恥ずかしい。
随分前に泊まったあるホテルはフロントの前を横切らされたから、宿泊客の前を浴衣で歩くはめに。
それよりもまだマシかも。
あるホテルでは「お風呂に行くのにスリッパでいいですか?」とフロントに訊いたら「は、スリップでございますか」と素っ頓狂に言われて「いえ、スリッパです」と言ったら安堵した声で「ああ、それならよろしゅうございます」
電話した友人が受話器を置くなりしばらく涙を流して笑っていた。

とにかく新しく良いホテルだった。

今井宿というホテル近くの武家屋敷跡を散策。
しかし、暑い。
この日は全国真夏日で、すこし歩くとめまいがしそうだった。
今井宿は人が住んでいて普通にここで生活しているけれど、本当に綺麗に保存されている。
そこの1軒に造り酒屋があって日本酒の試飲をしていたら、暑さと疲れですっかり酔っ払ってもうこれ以上あちこち歩く元気もなく、赤い顔してホテルに帰った。
この日は赤い顔していても暑さのせいと見られたと思う。

夕方暗くなる前に古民家にたどり着かないと、駅からそのお宅までは真っ暗。
タヌキに化かされないともかぎらないから、日の暮れる前に到着。
まあ、なんと!人がいるはいるは。
子供が大勢、大人も大勢。
子どもたちはしっかり躾けられているとはいえ、声が甲高い。
エネルギーが違う。
2時間も一緒に居たら、帰路は夜道ではあるし無人駅の待合室で一人居るのもこわいから、9時ころには戻ることにした。

もう帰っちゃうの?と誰かが言うけれど、うら若き??乙女がムジナに化かされないようにしないと。
ほんの5分弱の道のりも真っ暗だと長く感じる。
吉野線を開通する時に、この家の先々代が「うちの近くに線路を通せ」と言ったら、こんな近くに線路を曲げて通したそうで、それで駅もすぐそば。

ホテルに戻ってテレビを見ていたらあっという間に眠ってしまった。
次の日はオーケストラの練習だから、私は用なし。
ご当主さまの車をお借りして、室生寺までひとっ走り。
参加者の中にプロのクラリネット奏者Kさんがいて、彼女も練習は免除だったのに午後から参加するそうで、でも室生寺に一緒に行きたいという。
そんなわけで早めに出発して午後には彼女を練習場のやまなみホールへ送り届けないといけない・・・ということになった。

室生寺は今シャクナゲが真っ盛り、日曜日で山道は狭く渋滞すると逃げ場ないと脅かされたので、ひたすら急ぐ。
このあたりは神話の里。
到るところに神社、古墳などがある。
どこを見ても綺麗な山並みと畑やまばらな集落。
本当に「やまとしうるはし」なのだ。
室生寺に到着するとまだ人は少なく、ゆっくりとシャクナゲの群生を眺めた。
五重塔は意外と小さいけれど、きっちりとまとまった感じで非常に美しい。
これは何回も建て直したのかしら。
同行のKさんは足が悪くて階段が苦手。
一人で見てきてと言われたから石段を登る。
降りていくとKさんは若いハンサムなお坊さんを捕まえて、なにやら親しげにお話をしている。おやまあ!

室生寺を後にして走っていると、酒屋の看板。
このへんは、なんとも酒屋が多いので忙しい。
お酒を買おうと行ってみると、中がレストランになっていて美味しそうなランチが食べられるという。
この時点でKさんの練習参加の気持ちにぐらつきが出てきた。
一度はその場を後にしたけれど、引き返した。
具沢山の味噌汁、かんぴょうの煮物、ピクルス、切り干し大根などの小鉢があって、麹をまぶして焼いた豚肉の薄切りがメイン。
これがほのかに甘くて美味しい。
全部ペロッと平らげた。

その後はひたすら山道を走って二度三度同じところをぐるぐる回ったり迷ったりしながら山奥の練習場に無事Kさんを送り届けて一人、山道を下った。
Kさんとお話をしていたら、私がオーケストラ時代にとてもお世話になったクラリネットの故北爪利世さんのお弟子さんだったということが判明。
北爪さんは皆からヅメ先生と呼ばれ、生徒たちからは勿論のこと、同僚のオケのメンバーたちからも敬愛されていた。
音楽界の偉い先生なのに、威張らず驕らず、ニコニコした笑顔の素敵な方だった。
私がオーケストラに入ってすぐ演奏旅行に車で行った時から、ずっと車の仲間として先生の車に同乗したり並んで走ったりさせていただいた。
その懐かしい名前が話題に出た時、思わずKさんと二人で泣いた。
この日、山道を迷って何回も同じところに出てしまったのが、**橋北詰というところ。
あら、又北詰よ、ヅメ先生がそのへんにいるんじゃない?と冗談を言いながら、又戻ってしまう。
きっと、ヅメ先生がそのへんで笑っていらっしゃるわね・・・なんて。

その夜も私は古民家宴会に参加。
又真っ暗な夜道を辿って無人駅から大和八木に戻った。

次の日はこのホテルのチェックアウトが11時なので、遅めの朝食を摂りゆっくりと午前中を過ごした。
帰りの新幹線の時間は15時ころ。
それまでこの辺を見ながら帰ろうと思いついて、ホテルの隣の観光案内所に行ってみた。
大和八木から京都までは近鉄線で一直線だから、途中下車しながら徐々に京都へ行けばいい。
途中下車しながら京都まで行くので、沿線の名所を教えてくださいと言うと、では奈良はどうですか?と言われた。
時間が4時間ほどしかないので、見物しながら行くとなると、他の線に乗り換えるのは時間のロスになる。
奈良に行くのは奈良線に乗り換えないといけない。
奈良は沢山見どころがあって、そんな短い時間では無理。
最初に丁寧に説明しているのに・・・
だから同じ線で行くのが1番良いわけで、どうも話が通じない。
お花がお好きですか?とかどんなふうにと言われても、それはその場で自分で考えるので名所のある場所だけ教えてほしいといっても、モジモジされてしまう。
私なら、この駅の傍にはこれとこれ、この駅は**寺があります、あとはお好きにどうぞと言うのだけれど。

仕方がないから地図だけ貰って自分で歩くことにした。
去年来た時に平城京跡、薬師寺、唐招提寺と歩いたけれど、今回は薬師寺を飛ばし唐招提寺から歩くことにした。
目的は唐招提寺と垂仁天皇御陵。
唐招提寺は修学旅行で来た時に、大変感銘を受けたお寺。
去年訪れた時に、その当時受けた印象そのものだったことに驚いた。
確かこの辺に大きな木があったはずなんだけど、と言っていたら、古い写真にその木が写っていて、自分の記憶力にびっくりした。

垂仁天皇御陵は近鉄西の京駅から尼ヶ辻駅まで歩く途中の左側で、去年思いがけず見つけた。
池の向こうにこんもりとした森がある。
それが御陵。
そこに佇んでいると「悠久」という言葉が自然と浮かんでくる。
この風のなかに当時の人も立っていたのだろうと。
去年は少なかった白鷺などの鳥たちが木にたくさん止まっている。
巣作りしているのだろうか。
盛んに水面を滑るようにして魚を取っている黒い鳥はなんだろう。

結局去年と同じところしか行かれなかったけれど、どうしてももう一度ここに来たいと思わせるものがある。
自分の中でジワジワと倭が形成されていくのがわかる。

室生寺の写真はことごとく失敗。
人様にお見せ出来るようなものでは無い。
よほど才能がないらしい。
唐招提寺は今このお花が真っ盛り。
せめてこの高貴な花の写真をご覧あれ。


鑑真和上のふるさとの花と聞けば、ありがたい気持ちになるでしょう。
昔の人達が荒れた海を亘る危険を犯しても広めたいと思う宗教的な情熱のおかげで、今の日本の文化ができていると言っても過言ではないのだから、感謝!








































2 件のコメント:

  1. 奈良、いいですね。
    何年か前に行って、阿修羅像みてうっとりして、鹿にエサクレと角でつつかれたり、遺跡の壁画みたり。
    nekotama様の記事読んで、久しぶりにまた行きたくなりました。

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  2. 阿修羅像は本当に美しいですね。
    私はすっかり虜になってしまいました。
    京都は素晴らしいところですが私は万葉の時代の奈良、吉野などにとても郷愁を感じます。次は柿本人麻呂をたどってみようかと思います。

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