岸恵子さんが亡くなって一時代が終わった感がある。
本当にきれいな人だった。私はきれいな女性が好きで、自分にないものをたくさん持っている人は常に羨望の的だった。彼女もそういう人だった。ただ美しいだけでなくしっかりと己を確立したまれにみる才女。知性と行動力と情熱と、どれもが私には不足しているものだから、本当に尊敬の的。
私が見た映画は「修善寺物語」なぜか母親と二人で見たのだった。まだ私はそのころ大人未満の年齢だったと思うけれど、内容はともかく岸さんの妖艶さに目を見張った。今脳みその奥からその時の印象を引っ張り出そうとしているけれど、あまり出てこない。しかし全体の雰囲気からの恐怖感、特に彼女の首筋の緊張感がなぜか思い出される。
今朝のモーニングショーでのインタビューの思い出では「私は決心と行動は早い、後悔は…あとから考える」といった言葉。それが彼女の人生のモデルなんだと思う。いいですね、後悔はあとで考えればいいのよね。生きている以上行動するという姿勢が素晴らしい。
私も決心と行動は早いけれど、知性の裏打ちがないから昨日のように失敗する。あまりにも稚拙な行動であったと反省している。今頃になって。でもね、これはコンサートの前だからであって、何も予定がなければちんたらと高速道路を通らずとも、下の道を悠然と走っていたかもしれない。
私は引退を決意したのはもともと最初から80歳になったら引退と決めていたからだった。さすがに80になったら指も動かず脳みそもぐずぐずで役立たずとなっているであろうという見通しだったけれど、いざその年齢になったら、あれ?まだ大丈夫かな?
客観的に見れば本当に大丈夫ではないけれど、自分が許せばなんだってまだ、大丈夫。ついでに周りの皆さんにも我慢していただければまだやっていけるのではないかと。ごめんなさいね。
しかし、今回のプログラムは考えていた以上に重かった。というか、老化の速度が考えている以上に速い。なにかで読んだけれど、80歳を超えた老化は1年間に若いころの3倍の速度で進むのだそうで、さもありなん。実際に進行の速度は思ったよりも早い。去年何でもなかった指が少し強張ってきている。花もしおれかかるとあっという間に枯れてゆく。
それで考えたのは指を使わなければいいのでは?声はまだ出るかも。以前から気になっていたのは誤嚥が頻発した時期があった。のどの筋肉の衰えが始まったらしい。のどを丈夫にする運動などもあるけれど、やってみると実に詰まらない。歌が好きだから声楽を習うことにした。
ヴォイストレーニングを始めよう。コンサートの前は無理だけど、終わったら若い先生が私の面倒を見てくださることになった。若く美しく知性的だそうで、本当に楽しみ。今から時々声を出してみると、夢と現実のはざまでがっかりするけれど、後悔はあとでね。岸恵子さんの言葉が私を力ずけてくれる。