盛大とは言えないけれど、連休の最終日、雨の中、三鷹まで来てくださったお客様たちでロビーはにぎやかだった。私の新旧の生徒たちも駆けつけてくれ て、中には生まれた赤ちゃんを見せに来てくれた昔の生徒、かわいい、抱っこしたいけれど手が汗で大変なので我慢。
私の晴れ女伝説は終了したようで、小雨が降っていた。長年の習慣がくずれることもあるさ。自分でも驚くほど最後まで疲れなかった・・・と思っていたけれど、家に戻ってお風呂に入って、少しだけラインをして、そのあとは意識不明。目が覚めたらまもなく翌日になろうという時間。
そういえば昔コンサート後、お風呂に入ろうとお湯を出しているうちに眠ってしまったことがあった。翌日目が覚めて水音がするので驚いて見に行ったら、浴槽からあふれたお湯が夜中じゅう流れていたらしい。本当に全精力使い果たすのがいつものこと。お湯は一晩中浴室の掃除をしていたのだ。水道代、もったいないと思ったけれど、案外安いのだとその時知った。日本は水天国なのだ。
三鷹の風のホールは本当に音が良い。気持ちの良い木の柔らかい反響。とても好きなホールの一つ。最初の曲「ふくろう」は良かった。二番目のドヴォルザークも楽しかった。けれど、さすがに三曲目の「ます」はすったもんだ。シューベルトはいつでもどこでも難しい。体力の限りを使っても時々破綻する。「ます」はこのグループでもよく弾くから安心感があったけれど、私は「ます」は一番こわいよとリハーサルの時から言っていた。だから一番最後まで集中力を切らさないようにとも。
しかし限界が来たようだ。「ます」を弾く前に私はエネルギー補給のパウチを飲んだ。自分はのんだけれど、ほかのメンバーの分を持ってこなかった。持ってくるべきだったと後悔した。お疲れさま、本当にお疲れ様。年齢を盾にして演奏をごまかすのはやめようねと私は言っていたけれど、やはり現実は相当きつかったようだ。
それでもロビーに集まった人たちは嬉しそうに笑ってくれる。優しいのは時には毒となる。甘やかさないでと言いたい。年寄りを大事にするのと甘やかすのでは大違い。私は75歳まで現役だったけれど、その間一度も甘やかされなかった。絶対に時間を守ること。音を間違えないこと。仕事は厳しかった。それでも仕事は楽しい。ミスをするのは許されないし、練習に多大な時間を使ってもやはり、それはすごく幸せなことなのだ。それを怠って年に免じて許されると思ったら大間違い。だから演奏家は猫の中でもトラかライオンまたは豹。