お座敷とは・・・芸者さんたちが呼ばれて接客するようなときに使うけど。
私たちシニア五重奏団が呼ばれて遅めの新年会で演奏することになった。私はもはや 引退したと言っているから仕事とは言えないけれど、相変わらず出たがり屋だからお座敷に呼ばれれば尻尾振って出かけていく。とある市役所の中の新しい建物。市長さんもご出席だとか。
曲目はシューベルト「マス」の3,4楽章。長すぎてもいけないし、みじかすぎてもいけない。明るく聞きやすい楽章ということでその2つの楽章を選んだ。楽器の編成は、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの五人。コントラバスが室内楽で使われるのは割に珍しい。普通のピアノ五重奏曲はコントラバスがなくてヴァイオリンが2本になる。なぜ私たちの演奏にはコントラバスが入るかというと、それは頼りになるコントラバス奏者がいるからで、とにかくあらゆる場面で彼女が、ひつようなのだ。
今まであまり知らなかったけれど、コンバスが入る五重奏曲は割とある。新しく曲も生まれているのでそんな曲を入れると立派なプログラムが出来上がる。その中でも「マス」は超有名で私たちのグループでは好んで演奏する。というより、その副題の爽やかな印象や曲の素晴らしさで、ピアノ五重奏曲の最も有名なものの一つがこの曲なのだ。
ところが演奏の難しさでもずば抜けていて、シニアにはちと辛い。聞いているのもシニア、演奏もシニア、たぶん耳の聞こえない人も多いから音程の多少のズレはあまり気にかからないだろうなどと思うけれど、油断は禁物、中にはどんな偉い人がいるかわからない。かつての名演奏家なども混じっていることも考えられる。この市には芸術の匂いが充満しているのだから。
本番二日前、私は久しぶりにブラームスのソナタのピアノ合わせをしていた。ブラームスのソナタといえば、ある有名なヴァイオリニストはザルツブルク音楽祭で一回も演奏したことがなかった、そして40歳過ぎてやっと演奏したという有名なエピソードがあった。
非常な名人で世界中で知られている彼は大変なテクニックの持ち主なので、そのザルツブルクでの演奏をラジオで聞いて少し戸惑った。なるほど、あまりブラームスはお得意ではないらしい。この方の名前がどうしても思い出せない。ほらあの、アルゲリッチとよく一緒に演奏していたあの人よ。浴室で転んでバスタブのヘリに頭をぶつけて以来、私は一層痴呆に拍車がかかってきたようだ。さっきから思い出そうと努力しているんですがねえ。
そして何の話をしていたかというと、ブラームスのソナタが非常に難しくてピアニストとああでもないこうでもないといっているうちにとても疲れてその日の夜は22時就寝、次の朝目覚めたらなんと10時30分、12時間30分も眠ったことになる。いつもの睡眠時間の倍以上。でもスッキリと目ざめてこれで明日は十分な体力で演奏ができると思ったら、その日は何時になっても眠気が来ない。いつまでもスッキリ、目も疲れない体もよく動く。
最初のうちは喜んでいたのだった。これなら多少寝不足でも大丈夫、明日の活力は確保と思っていたのに突然心配に襲われた。このまま一睡もしなかったら演奏どころか車の運転にも支障がでるかもしれない。起き上がっては横になったりトイレに行ったり白湯をのんだり、何をしても眠くならない。やっと明け方2時間ほど眠った。目が覚めたらまだ7時、出発予定の9時までの二度寝は危険、仕方ないから起きてしまう。そして出発。やはりあまり眠くない。
眠くはないけれど、この覚醒はいつまで保てるのか。本番で急激な睡魔に襲われたらどうしよう。しかしその日一日、いつもと大勢に全く影響なし。帰りの運転にも全く支障はなく無事帰宅。そしてまた今日は12時間睡眠。今夜は寝ないで騒いでいられるようだ。2日分寝て2日分起きているとすると、大事なコンサートの日時に合わせて睡眠のサイクルの調整をしないと、本番当日、ステージで居眠りしかねない。
古今亭志ん生が高座で居眠りをしたとき、お客さんが「ねかしといてやれ」といったという話がある。私もそうなったときには皆さんお願いしますね。