2023年1月6日金曜日

ういーんの風

 ウイーン・シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラのニューイヤーコンサートにご招待いただいてたのしんできました。

ウイーンフィルのニューイヤーコンサートのミニチュア版と言ってもメンバーの数が少ないだけで、進行や曲目などはほぼ同じ。美しい音色をたっぷり堪能させてもらった。この日は自動車会社の顧客や関係者などを招待しての企画に社員の一人が遇々うちのアパートに住んでいたというだけで誘っていただいた。

会場はサントリーホール、履く靴がないと嘆いていたのだけれど、実は着る服もない。着られるといったほうがいいかもしれないが、ストレスの多い生活を数ヶ月間送っていたらぶくぶくと太ってしまいどんどんウエストが入らなくなる。やっとなんとか入ってしかもあまり見苦しくない服と揃えたらほとんどいつもと変わらず、服のことは諦めて夜の六本木にでかけた。めったに身に着けない指輪とイヤリングをつけてごまかす。

六本木はバブルの頃には頻繁に仕事で行ったけれど、最近とんとご無沙汰。若い頃はニコラスというイタリアンがあって明け方まで屯していたこともあった。車を運転して家に帰ると、普段私の生活をめったに叱らない母が「そこに座りなさい」とお茶をたててこんこんとお説教された。明け方まで寝ないで待っていたのだと思ったから、それ以来12時までには帰るとようになった。しかし私が今の年になったところで思うのは、母は昼間たっぷり寝ていて早起きをしたら私がまだ帰っていないのでついでにお茶の稽古に使われたのではないかと。

会場につくと企業のスタッフの集まりだから男性はダークスーツ、女性もそれに準じた地味な服装だったから客席はほぼ真っ黒。何だ、こんなときにはスーツもまっ黒でなくグレーや茶糸もまじっていてもいいのに。これではステージから見るとカラスが整然と並んでいるみたい。ご招待いただいたのに悪口。演奏者も出てきて少したじろぐのではないかと思った。

コンサートマスターはヴィリー・ビュッヒラー氏。ヴァイオリンを引っ提げて登場。生粋のウイーン人らしい。私にとってウイーンは特別な街で、ここに住んで見たいと思った数少ない外国なのだ。ドイツからどんどん南下して旅をすると、急に風が変わる。ウイーンに着くと急に動きが楽になる。

ウインナーワルツは私がオーケストラに入った頃、ヨハン・シュトラウスの子孫のエドアルド・シュトラウスの指揮で毎年20日間くらいの演奏旅行があった。まだ20代の前半だったから見るもの聞くものすべて新鮮で、初めて行く国内の様々な都市は全部物珍しく、最も懐かしい思い出となっている。

そんなわけでシュトラウスのワルツといえば曲もよく知っているし他のオーケストラのメンバーより沢山弾いていると自負しているけれど、まだまだ知らない曲が出てくるので、いかに多作な上に名曲が多いか痛感する。家族で作っているのだから他の作曲家はかなわないわけなのだ。ひたすら楽しく華やかで、それでも駄作なら誰も聞こうとはしない。

演奏が始まると、静かに聞く人たち。なんか研修会に来ているみたい。しかし、後半になるとのってきた。黒い集団がはしゃぎ始めている。こうでなくては来た甲斐がないでしょう。ステージの演奏者たちは様々な色のドレス、ダンサーはスタイルが良く、歌手は迫力がある。きれいなだけではなく技術が高いから本当に面白いのだ。そして聴き手もドイツやオーストリなどの企業から来ている人たち。日本からも海外に出張した経験者も、私を招待してくれた人はドイツの企業から出向してきている日本人。マナーも心得ているし、ここぞというときのツボも知っていてウイーンフィルのニューイヤーコンサートと同じに進行していく。

ウイーンまで行ってニューイヤーコンサートを聞くには我が家にとっては莫大な費用がかかる。しかもめったに手に入らないチケットを待つより、こちらのコンサートで十分楽しめる。思いがけなく楽しませていただいて大満足の猫でありました。










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