2024年12月21日土曜日

樫本耐震

 樫本大進のこの漢字変換!耐震かあ。そういえば本当に安定期に入って大秦(こんな言葉あるのかい)した素晴らしい演奏会でした。数多くのコンサートを聞き今に至るまでの中でも、最高ランクのコンサートだった。

彼の演奏を初めて生で聞いたのは、スマトラ沖地震のチャリティーコンサートのときだった。日本のプロオーケストラから数名ずつ演奏者が参加して、指揮者は小澤征爾をはじめとして錚々たるメンバー、クラクラするほどのメンバーの中に何故か野良猫の私が肩身が狭い思いで参加していた。私はどこのオーケストラにも属さない一匹猫。そう、大門未知子みたいなフリーランスだけど私は彼女と違い、しょっちゅう失敗していた。

なぜここに?来てしまったからにはしょうがない。と思ったら見知った顔がたくさんいて本当にホッとした。やあやあひさしぶり、あなた誰?え、あのときの?まあ、おとなになったわね、てな具合で。

そこにヴァイオリンを持って登場したのが、当時まだ10代の樫本大進さん、スケールの大きさ・ゆったりとした日本人離れした音楽に驚いた。その後、彼がベルリン・フィルのコンサートマスターになったと聞いて、さもありなんと思った。いつも日本でのコンサートは聴かせてもらっているけれど、今回の演奏はまた一段と素晴らしかった。

最近こんなに集中したのは珍しい。集中力なんかとっくになくなったと思っていたのに呼吸することすら希薄になりそうなくらい。半分瞑想状態になってしまったので、最後の曲が終わっても立ち上がれないくらいだった。音が多くてもきちんとあるべきところにある音が聞こえてくると本当に納得できる。

彼の安定期の演奏を聴いたのは数日前のサントリーホール。ほぼ満席の聴衆の期待通り素晴らしい演奏だった。

ヴァイオリン  樫本大進   ピアノ  ラファウ・ブレハッチ

モーツァルト:  ヴァイオリン・ソナタハ長調K.296

ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調Op.30-2

ドビュッシー:  ヴァイオリン・ソナタト短調

武満徹:     悲歌

フランク:    ヴァイオリン・ソナタイ長調

サントリーホール

ピアニストはショパンコンクールの優勝者で私は初めて聴いたけれど、最高の音色。稀に聽く美しさ。樫本さんはあの大きなホールで楽器が鳴り出すまでの数十分間、ピアノの音を捉えるまで少しためらいがあったようで、後手に回っているように聞こえた。毛筋ほどの時間遅れて聞こえたのでピアノが中心のように思えた。もっともモーツァルトやベートーヴェンはあくまでもピアノ優先だから致し方ないかと。サントリーの大きなホールではヴァイオリンはピアノに対して小さめだからと少し気の毒なような・・・

ところが後半は、どんどん二人の音が音楽が楽器を超えて、その素晴らしさたるや、私の今まで聴いたコンサートの中でも特別のものとなった。

中学生だった私を音楽会に連れて行ってくれたのは長兄で、その頃から世界の名演奏家を聞いていたけれど、まず、ヴァイオリンはレオニード・コーガン、フェリックス・アーヨ、悶絶するほどの音の美しさ。コーガンが弾いたプロコフィエフのソナタ2番のはじめの音は文字通り全身鳥肌がたった。それが忘れられずコンサートのはじめにこの曲を弾いたのは10年ほど前。

アーヨ率いるヴィルトゥオージ・ディ・ローマは後に私が室内合奏団に傾倒する初めとなった演奏だった。そして忘れられないのはヨゼフ・スーク、日本での最後のコンサートは会場中が泣いた。なんでこんなに素晴らしいのに引退してしまうのか、惜しむ声が聞こえた。でも今だからわかる。レベルの違いは考えないでください。この私でもちっとも素晴らしくない私でさえ、引退は理由がある。自分にしかわからない理由が。












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