2021年8月3日火曜日

北軽井ミュージックホールフェスティヴァル

 北軽井沢ミュージックホールフェスティヴァルはひっそりと・・・と思っていたら、時がたつにつれて雪雀連アンサンブルの知名度がじわじわ上昇して、リピーターが増え続けている。ワクチン接種済みということはメンバーの年齢の高さを物語る。白髪頭のおばさんたちが楽しそうに楽器を弾く姿が、彼らの心に響くらしい。演奏の水準も高く、曲目もバラエティーに富んでいる。特に普段あまりソロを聞くことのできないヴィオラとコントラバスの演奏を目玉として前面に出している。私の選曲はメンバーの年齢に斟酌しない。どんどん課題は増えていく。これが年をとっても元気の秘訣。今回は音楽に飢えていた人たちが皆さん喜んで聴いてくださったらしい。今までおとなしく聴いているだけの人たちから感想が届いた。

観客が少ないからと言って私達は手を抜かない。練習はきっちり3回、現地に入ってからステージで2回、たっぷりと時間をとった。野外同然のホールは正面にステージ。ぐるりと練習室や控室などが円形に中庭を囲む。そこに大きな木が数本そびえている。自然と同化して空や雲を見ながら演奏できる。晴れていれば素敵なんだけど。今回は開演直前まで激しい雷鳴、天気予報では晴れだったのに。開演30分前、近くに落雷したかと思えるピカッ・ゴロッと光と音がほとんど同時。私は晴れ女だから少しも心配しなかった。そして演奏に入ったら、雨も雷もいなくなった。みあげる空は青かった。私は最強の晴れ女。

野外同然のステージは弦楽器にとって最悪の状態で湿度調整ができない。特に樹木の多い北軽井沢は湿度が高い。今回はヴィオラの弦が切れた。弦の値段はびっくりするほど高価で、その時の相場によるけれど一本1万円近くするときもある。それがプツンと切れると「ああ、1万円!」羽が生えて飛んでいく。私達は一応入場料金はいただくけれど旅費宿泊費とも大赤字、それで弦が切れたらもう泣くっきゃない。でも、それ以上にこの仲間たちとこの自然の中での演奏は何ものにも代えがたい喜びなのだ。地元の人達に聴いてもらえることも嬉しい。

ヴァイオリン族は胴体が木だから、湿度が高いとたっぷりと湿気を吸い込む。そうすると、乾いていればよく振動するものが湿気で重くなった木は微妙に鳴りが悪くなる。鳴らないから力むともう最悪。弦は羊の腸が材料だから湿気で伸びる。絶えず調弦していないとどんどん音程が下がってしまう。

なぜこんな条件の悪いところで弾くかと言うと、こういうところだから生の演奏を聴けることは少ない。大都会周辺ならいくらでもコンサートは聴けるけれど、キャベツ畑の真ん中でクラシックのコンサート、特にプロの演奏に出会えることはまれなのだ。住民は穏やかで文化的な水準は高い。フェスティヴァルをボランティアで支えるサポーターズは地元の文化を支える重要な役割を担っている。コロナで去年はフェスティヴァルが中止となった。今年こそと思っていたけれど思いがけないほどの感染拡大で、規模を縮小してのフェスティバル、その中で久しぶりに生の演奏が聞けて本当に嬉しいとの感想を頂いた。

こちらも恐る恐る気を使いながらここまで来て、感染に最大限の注意をしての参加。車での往復はいつまでできることやら。今年は特に聴いてもらって本当によかったと思った。感想で一番うれしかったのは「ピンクの靴がとても素敵でした」あはは、そこかあ!









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