ヴァイオリンの扇谷泰朋さんとピアノの諸隈まりさんのリサイタル。
先日三鷹市芸術文化センターで弾いていた私は偽物で、コンサート当日に弾いていたのは本物。さすがに恐れ入りました。ああ、こんな風に弓を使うのかとか、決して大声で叫ばないのに伝わってくる表現の上手さ、品の良さ。
雨の降る寒い日だった。こんな日にはヴァイオリンもご機嫌が悪い。弾く当人も意気が上がらない。けれど音響の良い会場はちゃんとそれらをカバーしてくれる。ピアノは私の好きなベーゼンドルファー。先日代理リハーサルでステージに顔を出したとき、おや?今日のピアノは何?いい音ね。ああ、やっぱり。と言ったばかり。もし私がピアニストだったらこのピアノを買うかもしれない。残念ながら一般的なコンサートホールはヤマハかスタインウェイ。残念と言ってはヤマハとスタインウェイに悪いけれど、ベーゼンの独特の響きはすぐにそれと分かる。ピアニストに3つの楽器の違いを訊いたことがあった。
ヤマハはまず無難、スタインウエイは万能選手、ベーゼンドルファーはやや扱いにくいけれど、その魅力に取りつかれるのだと。ハンス・カンというピアニストがこのピアノを弾くのをそばで見て、こういう人が弾くべき楽器なのだと感銘を受けたことがあった。私が弾いたらこのピアノの魅力は出せない。もっとも、毎日私がピアノに触るのはヴァイオリンの調弦をするときにAのキーを叩くときだけ。可哀想な私のピアノさん。それにこのピアノを入れられる家もない。買えるお金もない。弾ける腕もない。おやおや、ないないづくし。
素敵な音を聴いて満足はしたものの体調が良くない。思えばベートーヴェンのソナタを4曲、短時間でピアノ合わせでかろうじてついていけるまでに仕上げるのは老体にはちときつかった。古典音楽協会の定期演奏会で小さいながらソロを弾いた直後だったし。若い頃のように両方同時進行でというのはもうできないとつくづく思った。帰宅して眠った。次の日は他のコンサート会場に足を運んだけれど、帰宅してすぐバタンキューと眠った。また次の日も眠った。時々自分がピチピチと飛び回っていた頃のことを思い出す。若さは偉大だった!
大きな紫陽花の株を2つ買ってきた。これを北軽井沢の家に植えよう。10年くらいかけてあの庭をイングリッシュガーデンに仕立て上げようと思った。なのになかなかヴァイオリンから離れられない。そろそろミス・マープルのようにピンクの編み物の似合うおばあさんになりたい。年齢だけは立派にとっているのに生活は修羅場。
膝も痛い。そこだけがミス・マープルと一緒。
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