2024年7月10日水曜日

のらの脱出

北軽井沢で病後のリハビリ、清浄な空気と溢れる緑に目の保養を終えての帰り道、高速道路でハプニングが。ほんと、死ぬかと思った。

最近は老猫のコチャはすっかり車に慣れておとなしい。けれど新入りのノラ改めのんちゃんは一向になれることがない。

人のノンちゃんは北軽井沢の家の前の持ち主、ノラはその後継ぎとしてノンちゃんのお名前を頂いて平仮名の「のんちゃん」とすることにした。白黒模様の艶のある毛並み、一見大人しげで美人だしほっそり優雅な物腰、いかにも可愛げに見える。ところがこれが恐ろしく気が強く感情が激しい。しかも賢い。

長年野良で生き抜いてきただけのことはあって、並大抵のことでは我慢することはない。思ったことは必ず押し通す。地域猫として数件の家を渡り歩き可愛がられてきた。艶々した毛皮には傷も見当たらない。外見は全く良いとこのお嬢様。声は高く澄んでいて決して大声を出さない。

ところがこの猫は人の気持ちを見抜く。こっそりわからないように出かける前の日に荷物はほとんど車に運び込んでおく。出かける前から何気なく最後の積荷を運び込むけれど、そのあたりからもう状況は彼女に筒抜けになっている。絶対にケージに入りたくない!という意志がオーラとなって見える。幸い猫には急所があって、首筋を掴まれると身動きがとれなくなる。そこを掴んで乱暴にケージに押し込めファスナーを閉じる頃には私はハアハアと荒い息を収めるのに大変。まずは私の勝ち。

前回ケージのファスナーを開けてのんちゃんは脱出、高速を降りてからだったからすぐに対処できたけれど、今回はそれを高速上でやられてしまった。どうやってファスナーを開けたのだろうか?たぶん最後の止め方にわずかに爪をいれる空きがあったのだろう。

もちろんファスナーは前回のこともあるのでちゃんとしまっていることを確認している。ケージをシートベルトでしっかり固定。しかし今回の彼女の騒ぎ方は前回を上回っていた。なにがなんでもこんなところに入っていたくはないという彼女の強烈なアピールで車内は大騒ぎ。途中の点検で見たところ、底に敷かれたトイレシートはずたずたに食いちぎられていた。

そろそろ高速の出口が近くなったころ異変が。ひときわ大騒ぎがあってやっとそれが静まったと思えた頃、私の左肩からぬっと猫の顔が!あわわわわ・・・・なんで?どうしよう。

猫が大人しく座っているわけがない。しかものんちゃんは私の膝が殊の外お気に入り。膝に乗られたら運転できない。とりあえず速度を落とし左側の走行車線に移り75キロで走っている軽トラックの後ろにつく。猫はと見れば物珍しげにフロントガラスの景色を眺めている。眺めながらも私の膝に座ろうとする。しっかりとのんちゃんの体を左手で固定した。

細身でありながら長年の野良生活で鍛えた彼女の筋肉は強靭で、激しく逃れようとする。そうさせまいと抑える私。ああ、どうしよう。路肩は狭く車を止めるのは無理。その時、三芳パーキングエリアがあと13キロと標識が出た。13キロ・・・とにかく走ってたどりつけばなんとかできる。

そこからは私の持っている全神経と筋肉が悲鳴を上げるほどの恐ろしさだった。猫が暴れる・・必死に抑える・・車がふらついてあわや・・・

外から見たらふらつく車でなにか異変が起きていると見えたに違いない。トラックが横に並んで少しの間並走している。しかし前の軽トラが75キロで走っているので追い抜いていった。軽トラがのんびりと走ってくれてよかった。

三芳のパーキングについたときには心底助かったと思った。のらのケージを見たらファスナーを開けたのではなく、ナイロンの硬い網目の部分が僅かに破られていた。こんな狭いところからどうやって抜け出したのか。しかしそれからが問題で、一体この猫をどうやって壊れたケージで運ぶのか?

いつもなら段ボールが積んであるのに今回は身軽に出たのでそれもない。クーラーボックスはあるけれど猫は蓋を閉めたら窒息してしまう。しばらく思案した結果、高齢で最近ほとんど身動きしないコチャのケージにのらを入れ、コチャは壊れたケージでも決して抜けられないとみた。

入れ替え作業は油断できない、高速の駐車場で逃げられたらもうこの子は生きて帰れるとは思えない。決して手放してはいけない。

まずコチャを座席に移し、その間しっかりと抱きかかえていたのんちゃんをコチャのケージへ。幸いコチャのケージはしっかりしているからこれはこわしようがない。のんちゃんを入れてしっかりファスナーを閉めた。ボロボロになったのんちゃんのケージへコチャをいれると大人しく入ってくれた。コチャはやっぱりいい子だ。

しかし猫が暴れたくらいで壊れるほどの粗悪品、売っていたペットショップに一言カスハラしておかなければ。か弱く見えるのんちゃんは実はものすごく凶暴で、私にさえも噛みついてくる。異常なまでに意思を通す。強烈な愛情深さと賢く人の心を読み取る力、時々猫ではないのではと思ってしまう。

事故を起こさないで本当に良かった。思い出すたびぞっとする。生まれて初めての事故が大好きな猫によって引き起こされたら私は絶望してしまう。ここ数年の悲しい出来事の上事故まであったらもう生きてはいけない。でも誰かが私を守っていてくれるのを感じることがある。

のんちゃんに似た私の母親かもしれない。


























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