長くったっていいじゃないか。有益な内容ならばいつでも耳を貸しましょう。
いつだったか忘れるくらい昔、私は帝国ホテルの結婚式の仕事をしていたことがある。参列者の入場、新郎新婦の入場、乾杯してその後の歓談中などの場面での演奏するのが 仕事だった。私もまだ若かったから宴会に華を添えることができたけれど、ある年齢からパッタリと仕事が途絶えた。「下手でもいいから学校出たてのきれいな女性を集めて」と言われたから「そこに私も入っていいの?」と訊いたらしばらく顔を見つめられて「うーん、1人くらい、ま、いいか」と言われて笑った。その後もしぶとく生きながらえてこっそり若手に紛れていたけれど、流石にもう限界。葬式が似つかわしくなった。そのうち葬式の主役になる日も近い。
さて今回の森元首相の失言はあまりといえばあまりの無神経さ。けれど私は実際に彼の失言を聞いていた。友人の息子さんの結婚式で、彼の現在の職場の上司の前で「今の仕事なんかやめて早くお父さんの跡を継ぎなさい」
この発言を聞いて激怒したのが現在の職場の上司。結婚式が終わって息子さんが出社したら「君、明日からもう会社に来なくてもいいよ」といわれたらしい。これなんかはなにをか言わんや。結婚式は誰が参列しているかわからない。思いがけない繋がりだったり、親戚がいたり。まして新郎の会社の関係者が来ていないはずはない。全く思考力がないらしい。森さんを見ると進化途上の原始的な動物を連想する。ただ、私もなにかふざけて場を盛り上げようとするあまり、よく人を怒らせるから同類かもしれない。
話が長いのは女性だけではない。帝国ホテルで結婚式を挙げられる人はまずお金持ち、企業のトップとか医者とか。だから参列者も企業関係者、政治がらみ、家同士のつながりなどが大半を占める。そこで聞かれる挨拶は結婚する人の関係者だけでなく、全く見たこともないお祖父様の友達だったりすることもある。ある結婚式で、私が死ぬほど退屈だったのは主賓の挨拶。
地味な感じの新郎新婦だったけれど、友人は少ないらしく、ほとんど父親の仕事つながりの参列者が多かった。雰囲気は暗くて結婚式の華やかさや新郎新婦の幸せ感には程遠い。主賓の挨拶は新郎の祖父の関係者。新郎の名前は一切出てこない、それもそうだ、一回もあったことがないから初対面というわけで。乾杯の前で参列者はお腹が空いているだろうし、喉も乾いている。もしかしたらこの宴会のために朝食抜いた人もいると思う。
その状況なのにその人は延々と話を続けた。しかも内容は新郎祖父の話ばかり。主役の二人はひたすら暗い顔で座っている。だれも知らない人の話なんてだれも聞きたくないだろうに、なくなった祖父の話を聞かされて、しかも冒頭の祝辞は「**家と**家、ご両家並びにご親族の皆様」と始まった。新郎新婦の名前無し。なんだなんだ、戦略結婚?クッソ面白くもない話が70分、死ぬかと思った。これ本当の話です。
私達は乾杯の瞬間に音を出さなければならないから、注意深く待機している。その疲労感たるや。大抵の結婚式はリミット3時間位で終わる。しかしそのときは4時間以上、3時間と見越して次の仕事を入れてなくて本当に良かった。
その後、新郎新婦はどうしているだろうと時々思い出す。家どうしの結婚だから二人が結婚したくてしたのではないかもしれない。あるいは他に好きな人がいたのに無理やり別れさせられたとか?2人の表情の暗さからはマイナーな面ばかり思い浮かぶ。それでも結婚してみたら案外うまく行っているかもしれない。いつも陽気な私はそう思っている。
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