2021年1月30日土曜日

医原病

 コロナ感染に怯える今、日本で医原病が減っているという指摘がなされているという。それはコロナ感染を恐れて人々が病院へ行かなくなったから。

「医原病」とは医療ミスと過剰医療によって引き起こされる病気だそうで、アメリカ人の死亡率の第3位にランクされている。アメリカ国内で年間約25万人以上、実際にはもっと多いと思われる。

「薬の不適切投与」多剤併用のリスク、「院内感染」病院内での感染、「不必要な手術」切除しなくてもいい小さな腫瘍を切除したことによって感染症を引き起こす、など。病院へ行けば行くほど死ぬと言われているそうだ。

なるほど、たまに整形外科に行くと待合室に溢れんばかりの患者、椅子が足りなくて階段にまで座っている。はじめてその病院を訪れたときには、ドアを開けた途端ぎょっとしたものだった。病院嫌いの私も寄る年波には勝てず、時々お世話になる。以前は医療をうけない年が続いて、保健所から記念品?が送られてきたりした。こんな無駄なことしないでくれないかなと思ったけれど。

私のお手本は猫。彼らは具合が悪くなると引きこもってしばらくじっとしている。餌も食べない。しばらくするとノソリと現れて、何事もなかったかのように日常に返る。私も人間にしては原始に近く、ほとんど薬は飲まない。最近足の痛みに耐えかねて病院へ行ったら、痛み止めの薬を処方されたけれど、全く飲まなかった。痛みを止めても根本的な治療にはならないと医師に言うと困ったふうだったけれど、それなら自分で治すと言って帰ってきた。整形外科は、怪我をしているのでなければ湿布薬と痛み止めを出すだけの存在なのだ。

なぜ痛むのかわからないけれど、怪我でなければ関節の筋肉が固まってしまったのだろうと思って、毎日ストレッチと軽いウオーキングを組み合わせていたら治ってきた。こんなにかんたんに治るなら、今寝たきりになっている老人の半分は自力で生活できるのではないかと思っている。自分で治す、これが基本。

健康の基本は歯だから、私は長年毎月1回ペースで歯科医に行った。歯石を取り歯茎のケアをしてもらっていたけれど、ある時歯科医がボソリと言った言葉で行かなくなった。「本当はね、こんなことしないほうがいいんだよね」と。あるいはそうかなと思っていたから納得できることがあった。1年に1回くらいなら歯石を取るのは構わないけれど、あの冷たい金属の器具でガリガリと口の中をこすられるストレスが良い理由がない。それ以来、未だに虫歯は1本もなくしっかりと硬いものも噛れる。要は毎日の歯磨きを丁寧にすればいいだけ。

自宅の近所に、世界最高峰のアメリカの大学に留学していた医師がいる。彼の父親は地域の名医として人々の尊敬を集めていた。その父親がなくなって急遽呼び戻されて個人病院を引き継いだけれど、優秀な研究者が優秀な町医者とはならず、例えば喉が腫れているけれど原因がわからなく間違った薬を投与するなどで、私はえらい目にあった。

彼のお父さんは見立ての天才、私の家族はどれほど彼に救われたことか。軽い風邪をひいて行っても、治療はしてもらえなかった。「うちに帰って温かくして寝ていなさい」と薬も出さず注射もしない。そのかわりいざというときには本当に頼りになった。そんな親子を見ていると、医者にも知識だけではなく才能がないとだめなのだと思う。一瞬でその病気が重大なものなのか、自然に治る種類のものなのか見立てる凄さをしばしば見せられた。大家族の我が家が全員無事に育ったのはこの先生のおかげだと思っている。

この先生も日本の最高峰の大学の出身だということを亡くなったあとで知った。そんな名門校を出たら大きな病院の院長先生にだってなれたと思うのに、商店街から路地を入った冴えない古い建物でほそぼそと医療をしていた。けれど、お葬式のときに集まった患者さんや関係者は2000人だったと聞いた。隠れた名医とは彼のこと。学歴をたてに役人となって悪いことをする人とは大違い、清々しい生き様だったと思う。

最近整形外科に行くことが多かったので、処方された薬を受け取りに行くたびにお薬手帳なるものを作れと言われる。これなんのため?沢山飲むならいざしらず、私のようにめったに飲み合わせることもなく、1回のみ終わればほとんどそれで終わりという人には無用のもの。断るとたいてい嫌な顔をされる。近所の耳鼻咽喉科の医院では薬を山のように出されて仰天したことがある。鼻の中が腫れてレーザーで治療したので、化膿止めがあればいいだけなのになぜか更年期障害の漢方薬とか、同じような抗生物質とか数種類出されて唖然とした。医師に詰問した。「先生、この薬全部いっぺんに飲んで大丈夫なんですか?」「たくさん出さないでほしい。ピンポイントにその症状に必要なものだけ出すようにしてください」

私は更年期なんてとっくに過ぎた年だし、だいたい更年期症状は起こらなかったし、こんなものいらん。効能書きを見ると「大柄で体力があり顔が赤らんだ人」のための薬と書いてある。非常に小柄で体力がなく顔色はどちらかというと冴えない私とは正反対の人が飲む薬をどうして出されなければいけないの?こういう医者が医原病を引き起こしているのだと思う。もうそこには二度と行かない。薬で儲けようとした病院はかえって患者をなくす。











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