まもなく私の死亡の噂が巷に流れるのではないかと流石に心配になって、そしてようやく一番きつい時期が終わったので皆様に御目文字しようと筆ならぬキーを叩くことになりました。
ご無沙汰しました。
この1ヶ月、なにかと気忙しく体もきつい時期でありました。体と言っても体の一部の目と足、この2つが人にとっていかに大事なものかを痛感した時期でもありました。
足は今や再度スキーに復活できるのではというくらい良くなった。様々なストレッチや治療を試みて階段をまともに真っ直ぐに降りられるくらいに復活。これは素晴らしい。これで駅に下りのエスカレーターが無いときに手すりにつかまって横歩きで階段を降りるみっともなさは解消する。とにかく足首が重要(私の場合だけれど)体はなによりも柔軟性が必要と思い知った。猫を見てごらんなさい、めったに怪我なんかしない。
もう一つの体の一部は目。これはメガネで矯正できるとは言え、楽譜を見るというのは本当に過酷な作業で、特に「古典音楽協会」のような形態のアンサンブルやオーケストラでは二人で一つの楽譜を共有する。オーケストラはすでにギブアップして仕事はすべてお断りしてだいぶ顰蹙を買った。それでも「古典」だけは続けていたものの、最近は視力の低下に悩まされていた。
先日「古典」の161回定期演奏会があって、どうしても斜めに楽譜を見ることができない。コンサートマスターにお願いして、一人で一つずつ譜面台を使う許可を頂いた。これでまっすぐに譜面を読むことができる。本当は譜めくりはトップサイドである私がしなければいけない作業なのだが、ご自身でどうぞお願いしますということで。
最初は無理して二人で一つの譜面台。で、見えない。音符が蟻さんの行列に見える。少し自分の方に寄せてもいいかと尋ねると、コンマスの角道氏は快くどうぞと。彼はもう自分は暗譜しているから大丈夫とおっしゃる。それでもお互い見えにくいのは否めないから、ついに最後の手段となった。やっと落ち着いて弾けることになったけれど、私はいつもの会よりずっと緊張した。今回ソロはなくて大丈夫と思ったけれど、ソロを弾いている方がよほど楽だった。伴奏はえらく気を遣う。音が覚えにくい。なぜここまで目が見えなかったかというと、ひとえに私の自信過剰からきている。
ピアニストMさんから連絡があった。ベートーヴェンのヴァイオリンとピアノのソナタの1~4番までを演奏するけれど、ヴァイオリニストが多忙で練習が2回しかない。ついては練習の代役で弾いてもらえない?もちろん快諾。そのヴァイオリニストと彼女はかなり頻繁にリサイタルをしている。前回のベートーヴェンプロは後半の3曲だった。私はこのときも練習に付き合った。このへんの曲は注文が多いから私もしょっちゅう弾いているけれど、今回の前半4曲はちらっと遊んだ程度で人前でまともに演奏したことはなかった。それはぜひ弾いておきたい。良い勉強になる。
楽譜を探したらピアノパートは3冊あるのにヴァイオリンパートが見つからない。なくしたわけではない。多分どこかの別の楽譜にうっかり挟んだのかも。すぐに連絡してヴァイオリンパートを送ってもらい譜読みにかかった。さて1週間で4曲の譜読み、果たして間に合うか。
若い頃ならなんてことはなかった。でもここで自分の歳を思い知らされた。楽譜はそれほど難しくはないけれど、初見で譜面を凝視しているとアリさんの行列が現れる。そのうち全部がモヤッとした薄い雲のように見えてくる。そのうち脳みそにまで雲がかかってくる。目と脳が直結していることも改めて思い知らされた。ようやく譜読みが終わってなんとか練習代役を2回お務めしたけれど、その後視力が戻らない。「古典」の定期が迫って練習に入ると更に目が見えない。これは実際に見えないというよりも、見えない恐怖が邪魔をして集中力が落ちたのだった。メガネがいけないのかと新しいメガネを作ってもらったけれど、視力はほとんど変わらずお金をドブに捨てたようなものになった。
今回の定期演奏会は曲数が多くそれがさらに追い打ちをかけてきた。客席はコロナ以前の状態に戻り始めた。嬉しかったので本番は最後の力を振り絞った。するともうだめだと思っていた集中力と音が戻ってきてなんとか終わることができた。火事場の馬鹿力、そういえば若い頃はこんなことばかりだったのにすごくがんばれた。今は恐怖でしかないけれどなんとか乗り越えた。ああ、しんど!
その代わり次の2日間、昨日まで朦朧としていたけれど、猫の病気も小康状態、私の足もだいぶまともになって来たのがうれしい。ひと月、よく頑張ったと自分を褒めて上げたいというほどでもないけれど、苦労するのがわりと好きなのかも。
そうとう苦労したけれど終わってしまえばあとはお楽しみ。仲間たちとカルテットで遊ぶ。演奏会のアテはないけれど、その都度好きな曲を選んでパートを交代しながら楽しむ。最初は自分がファーストヴァイオリンを弾いたら、その次はセカンドヴァイオリン、時にはヴィオラなどと交代していくと、自分以外のパートが覚えられる。そのうち本番ができるチャンスがあるかもしれない。とにかく楽しい。次回練習する曲は私の大好きなモーツァルト「春」前回のベートーヴェン「18-4」も楽しかったけれどモーツァルトに勝るものはない。
北軽井沢の春もそろそろ。カルテットの練習が終わったらそちらの「春」にも会いに行ってきます。たぶんまだ雪や氷の心配がある。板を車に積んで、できれば滑ってきます。
ここで宣伝 第162回古典音楽協会定期演奏会
2022年9月29日(木)午後7時開演 東京文化会館小ホール
イタリアバロックの響き
アルビノーニ:シンフォニア他
私はヴィヴァルディの協奏曲「愛」を弾きます。
どうぞよろしくおねがいします。
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