2024年8月22日木曜日

くにたちの会

毎年くにたち音大の オーケストラの仲間達が集まってコンサートをやっている。最初はそれぞれ楽器を持って集まってその場で組み合わせを決めてカルテットやソロを弾くという即興的な集まりだった。けれどいつもふざけていても根は真面目のオケマンたちは、そのうちちゃんと練習してくるようになって面白みが減った。

コンサートが終わって打ち上げ会場のくにたちの「天政」さんは数十年間私達にやりたい放題を許してくださった。大広間を開放、そこでも飲みながら食べながら誰かしら楽器を弾いているという楽しい集まりになった。むしろこちらが本番のようだった。

ところがコロナ以来参加者も減り、特に最初のこの会の言い出しっぺが亡くなって今年は演奏者も少なく、小部屋での食事となった。それはそれでまとまって全員と話ができて良いけれど、喪失感は否めない。つい数年前まで集まって昔話ができたおじさんたちが参加しなくなって、私達世代がそのおじさんおばさんの代になってしまった。最近参加を始めた若い世代は私達とは仕事上の接点もなく、ただひたすら若く可愛らしいお嬢さんたち。

はじめは今年の参加を見送ろうかと思っていたけれど、K子さんからお知らせを頂いたら気が変わった。K子さんは数年来の持病を押して幹事をしてくれているのだ。具合が悪いのに働いてくれているので、参加しないではいられない。相棒のピアノのSさんに連絡すると冷たく「あら、今年は出ないのかと思っていたのよ。連絡してこないから」言い放つ。自分はチェロの若い男性と組んで出るつもりだったらしい。悪かったわね割り込んで。

練習してある曲はシューマンのソナタ。それも第1楽章だけでごまかすことにした。毎年一人で数曲ずつ掛け持ちで彈いていた頃は大忙しだったのに、もう一つの楽章しか弾けない。けれどこの年で人前で弾けるというだけでも幸せなことかもしれない。大学で同じ先生の門下だった同級生も参加した。彼女はモーツァルトのソナタを演奏。年ごとに音に艶が増してくるのはご立派。

私は間もなく引退するつもりだからやめたら好き放題遊ぶつもりだけれど、雀百まで踊り忘れずというから、もし百歳になっても彈いているかも。今回参加した若いピアニストは私の相棒Sさんの教え子で、彼女は以前この会に参加したいと言ったらSさんから「まだ早い!」と言われたそうな。それを聞いて「わたしたちはもう遅い!だわね」と言ったのはこの私。もうなにもかも遅い?いやいやまだまだ遊びあきたらまたヴァイオリンに戻ってくるから、そのときにはちゃんとした曲をまとめたいという夢も持っておりますよ。コンサートを開くかもしれないし。

すごく恵まれた人生だったし人にも仕事にも十分楽しく接してこられたからもう良いかというと、まだまだなにか起こることを予想して待っている。人の欲望は終わることがないと痛感。それを実現するための努力ができる体力が残ってさえいれば・・・なんて、欲張りですねえ。

最近やっと体調が戻ってきたらしい。今年春の古典音楽協会の定期演奏会を終えた次の日から寝込んでしまった。眠って眠っていくら寝ても起きていられない。すぐまた眠る。それが10日間くらいか、そのくらいの時間だったと思うけれど眠り続けた。二年ほどの大変な時期に溜まった疲れや気苦労が私を眠り姫にしてくれた。そろそろ次の定期演奏会の準備の会合をという事になったけれど、その頃私にコロナ感染が見つかり隔離状態へ。姉が時々ドアの外においていってくれる食料で生き延びて2週間、やっと治癒したものの激しい倦怠感は続いた。

それでもなんとか生きていたけれど次に激しい咳が続いて入院、病名は肺炎だった。とても陰気な病院での耐えきれないほどの時間の生活、やっと退院を許されて家に戻っても微熱がつい最近まで続いた。ここ1週間くらい前から熱がやっと平熱に戻った。なんだかんだで六ヶ月絶不調。今までこんなに長く病んだことはなかった。

健康には自信があって、私の免疫力は強いと信じていたのも思い込みだと知ってすっかり気落ちした。それでもつい最近になってようやく以前の陽気さが戻ってきたのがありがたい。周りを見れば私の友人たちもなにかしら病気だらけ。悪天候やとんでもない暑さの続く最近の気候に悩まされ、半病人状態だった私。

久しぶりにくにたちの古い友人たちに会ったことがきっかけかもしれない。旧友たちはありがたい。コチャのことはもう自然に任せよう。無理やり口に食べ物を押し込まれてむせながら食事をしても状況が変わらないということは、もう治る見込みはないと。

私と暮らした22年間、結構幸せだったのではないかしら。私はもしかしたら医療関係の仕事も向いていたかもしれない。病人にはかぎりなく優しくなれる。いつもの頑固でドジな私は病人の前では天使になれるのよ。ね、コチャ?返事がない。

















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