昨日は怪しい男からうち中の通信機器がすべて使えなくなると脅されたから、今か今かと待っているのに一向に途絶えず情報は入ってくる。
今日の天気は時々雨、巨大な台風が日本列島の下半分に居座って動かず、煽りを食ってこちらまでジトジトとした天気が続いている。東京ベートーヴェンカルテットを主宰するチェロの奈切敏郎さんは頑固一徹、カルテットとともに生き延びるつもりらしい。老いてますます成熟の一途、私より年下だけどね。ほぼ毎回聴かせていただいている。しかし偉いものだ。
台風の影響で客足はどうかと思っていたけれど、このお天気にしてはよく入っている。後援者やファンが多いから。客席の人たちがひたとㇲテージを見つめ、一音たりとも聞き逃すまいと舌なめずりするように聞き入っている。長年充実した活動を継続するとこうなるのですね。
東京文化会館を出るとかすかに雨の感触があって、ざあっと来る前に急いで帰ろうと足を早める。山手線の上野駅で目黒に出たいから案内版を見ると、渋谷方面とある。目黒と渋谷ならご近所さん。乗り込むと座席も空いていて座われたからやれやれ。しばらくして考えた。渋谷を通ってから目黒に行くのはどう考えても数駅以上無駄。ああ、やはり逆走している。
私は天才的な方向音痴。右と思うと左。左と思って、待てよ!自分が左と思ったのだから右に違いないと思って右に行くと必ず左が正解。だからそのまた裏をかいて反対に行くとその反対が正解。これって何なのか理解に苦しむけれど、生まれ持った才能の一つではある。
目黒に行くには遠回りと気がついたからすぐに次の駅で降りた。目黒で私鉄に乗り換えて今度こそ正常な方向に走っている電車を見ていると、以前私が乗っていた東横線とはまるで違う場所、例えば飯能とか石神井公園とか、森林公園とか、逆方向は新横浜、海老名などなど、思いがけない名前が出てくるので一体これは何線なんだ。でも一段と便利になったことは確か。しかし一旦乗り間違えると恐ろしい未来が待っているような。
私はこの年の女性としてつい最近まで仕事をしてきたし、こうして他人の演奏を聞くのが好きでよく音楽会場に足を運ぶから、そこはかとない土地勘がある。知らない土地を歩くのが大好きだから迷子になってもうろたえない。むしろ好んで別の路線で行ったりもする。
しかしそれを人生でやるものだから一向に目が出ない。なんでも継続できればそこそこの成果が出るものを、途中でそれを捨てて別の路地を覗いてみたくなる。「古典」だって嫌いで辞めるのではなく、喧嘩別れするでもなく、ひたすら未来に別のものを追い求める。飽きやすいとかそういうわけでもない。好きなものはずっと好きだし努力は惜しまないけれど。今の私は逆走する運勢かな?
なに、すぐに戻りますよ。たとえヴァイオリンを弾かなくても音楽からは、はなれられないから。
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