髪の毛が大分伸びてしまったので、仕事場に行く前の時間に美容院に寄ることにした。
ここ1年位前から通い始めた美容院で、担当者の腕も中々確かで気に入っているのだが、以前かかりつけだった美容師さんを時々
思い出す。
kさんはバブル期は原宿で大きな美容院を経営して、当時はN響や俳優さんたちのお気に入りだった。
名のある女優さんやモデルさん達の専属で、有名な音楽家とお友達だったり、歌舞伎の世界にもお客さんが沢山いるという、飛ぶ鳥落とす勢いの人だった。
天才肌なので、見事なカットをするかと思うと、気が乗らないときには悲惨な髪型になる。
悲惨な時でも、そんじょそこらの美容院よりはマシ、といったところなので、私は長く通った。
カットに集中しているときには、話しかけることも出来ないほど真剣で怖かった。
その美容院が閉店になり、後任者は彼の行方を教えてくれない。
その後何年も経って、やっとkさんに再会して又通い始めたが、すっかり話好きのおじいさんになっていて、鋏より口の方が良く動く様になってしまった。
それから又数軒のお店を渡り歩いて、今の店に落ち着いた。
中々おしゃれな今時風なうちで、若い美容師さんたちがおしゃれなのもいい。
昨日は気温が高かったので、久々にベリーショートにしてもらった。
できばえは上々だったのに、私が余計な口をはさんだ。
いつも混んでいるお店が、珍しく空いていたのも良くなかった。
私が言ったのは、自分の耳が後ろにねているので、髪の毛の線と耳が一致しないのでスッキリしないということだった。
別にできばえに文句を言ったわけではないのに、大まじめな担当者は「それではもう少し切りましょう」と又カットのやり直しが始まった。
耳の線と髪の毛の脇をそろえ始めた。
耳がねているから、当然横の毛もどんどん短くなる。
なんだか、近隣の某国の将軍様の髪型に似てきてしまった。
それで私がその将軍様の話をしたので、敏感な美容師さんはたぶん「しまった」と思ったみたい。
いつもなら出来映えを満足げにチェックするのが、なんだか叱られた犬みたいな風情で離れて立っている。
素人が余計な口出しをしたばっかりに、彼は不本意なカットを悔やんでいるに違いない。
悪いことをしてしまった。
しかし、髪はすぐ伸びる。苦労が多いから。
よく、苦髪楽爪っていうでしょう?
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