2022年6月8日水曜日

美味しいものが食べたい

梅雨に入る前から体調は下降気味、老猫の老々介護がなかなか大変で自分の食事は野菜スープを大量に作り置きしてあとは魚と肉を 日替わりに。糖質は控えめにと太らない食事を心がけていたら「あ~あ、もうダメ!」無性に美味しいものが食べたくなった。

近所のイタリアンはコロナですっかり経営難。最初のうちはこんなに長引くとは思っていなかったらしく、超美味しいテイクアウトを提供してくれた。そのうちテイクアウトというと人手が足りなくてできませんと言われてがっかりした。結構な頻度で女子会をしていたのもすっかりご無沙汰で時々店の前を通るとまだ潰れていないとホッとしていた。

先日美味しいお肉が食べたくて久しぶりに店に行ったら、スタッフがすっかり変わっていた。以前のスタッフはちょっと陰のある感じのマネージャー、厨房にはがっしりした腕の良いシェフ、出てくる料理はとても美味しくセンスの良い食器と相まって目と口を楽しませてくれた。時々マネージャーが来てお話をする。街のイタリアンとしては上等なタヴェルナ。

故人になるけれど、芥川也寸志さんという作曲家がいた。才能ありハンサムでちょっと気難しく、ぴりりと辛口な冗談がお好きだった。その方が言う。スペインの居酒屋はタヴェルナっていうんですよ。店に入っても食べられない。それで覚えたこの言葉。前述の店は私の家の最寄り駅にあり、どちらかというとがさつなこの商店街には珍しいほどの上等な店だったけれど、根本的には居酒屋の延長。食べるなと言われても時々無性に食べたくなる良い店だった。

雨降りの夕方、どうしても美味しものが食べたい!それにはあの店。思い立って開店と同時に飛び込んだ。見知らぬスタッフ。あらあら、残念、多分味もすっかり代わってしまったと思える。けれど感じが良いからとりあえず席についた。おばあさんお一人様。メニューはやはり変わってしまった。肉が食べたい。赤ワインはキャンティ・クラシコ。なぜかというとキャンティは昔イタリアで道に迷って入り込んでしまったトスカーナ地方が産地で、楽しい思い出がいっぱい。山の中のぶどう畑の道を闇雲に車で走ってフィレンツェ到着。そのワクワク感ったら、もう!

鴨のロースト、グリーンサラダ、パンをとりあえず注文。突き出しとワインでゆっくりと始めると目についたのがメニューの生牡蠣。しまった辛口白ワインを頼むのだった。けれどお酒に弱い私はもう一杯ワインを飲む余力はない。でも牡蠣は食べたいから2つ注文する。大きな牡蠣が牡蠣殻にはいっていた。つるりと喉を通り過ぎていく。ああ、キーンと冷えた白ワインが飲みたい。

鴨にたどり着いた頃にはワインはグラスの底にわずかに残るのみ。おかわりを勧められたけど、2杯飲んだら家に帰れなくなると言ったら、それは困ると思ったらしくあっさりと引き下がった。鴨はちょっと硬くてトゥールダルジャンには遠いけれどまあまあ、粗食に耐えてきた今の私には久しぶりで食すちゃんとした肉料理、美味しい。本当のこと言うとトゥールダルジャンで食べたことがないから想像しただけ。店に仕事でいったことはある。この椅子は一脚30万円しますと聞いたのは覚えている。その椅子に座って音楽を奏でても、うちのボロ椅子で奏でても変わりはないけれど、目の前で番号の付いた鴨を食べるリッチな人々の姿を眺めて目の保養。

久しぶりのちゃんとした食事の効果はめざましかった。味がいいとか栄養価が高いとかそんなことでなく、ゆったりと味わって食べることの大事さ、食は文化、これからは一人でも美味しいものを食べようと考えた。でも今夜はこれから餌を食べます。栄養とお腹が満たされればいいといった程度のものを。猫と一緒に。



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