2022年6月21日火曜日

若い友人たち

 北軽井沢に珍しくお客さん。

若い世代の女性二人。キャリアウーマンたちで一人は外資系、もうひとりは映画広告などのアート系のしごと。二人は中学時代からの親友だそうで、本当に仲が良い。私がどこで知り合ったかというと、外資系企業にお勤めの人は元私のアパートの店子さん。毎回借り手が変わるたびにいろいろなタイプの人が入ってくる。その中でもひときわユニークな人だった。

彼女Mさんが私の家に引っ越してきたときは4月、ちょうど我が家でお花見をしていたので誘ったらその友人Tさんが一緒に参加してもいいかと訊かれたのでもちろんオーケーした。華やかな美人さんがついてきた。Mさんはアメリカで学びドイツ企業に籍を置き今は、日本に出張?物怖じしないし自己主張もあるし、私はこういう人といると居心地がよい。日本人はとかく遠慮や気配りが多くこちらも気疲れするけれど、彼女ははっきりものをいうので。

猫が好きというところも共通していた。彼女が入居してからしばらくしたらコロナになって在宅勤務が増え、時々気晴らしにうちの駐車場でお茶会したり、野良猫の保護に奔走したり、どちらかというと引きずり回されたけれど楽しかった。私の家に入居したのは会社が近いためで、コロナ禍で在宅勤務が増えると会社が近い遠いは関係なくなった。それで自然の好きな彼女は緑の多い地域に家を買って引っ越していった。

店子さんとの関係は殆ど引っ越しによって終わるけれど、いまでも何人かの人たちとはつながっている。子供の写真つきの年賀状など見ると年月の経過がわかったりして大変おもしろい。夜泣きのひどい赤ちゃんがいて、ある時父親から謝られた。「泣き声がうるさくてすみません」と。「赤ちゃんは泣くのがお仕事なのよ、だから気にしないで」というと「お仕事しすぎるんですよ」これは笑った。自分だってお仕事し過ぎでしょうに。若い夫婦が一生懸命子育てをしている姿はちょっと感動的なのだ。

さて北軽井沢の森に来た女性たちは私同様自然と猫が好きな二人。アート系のTさんの車でやってきた。いつもしんとしている我が家は突然賑やかになって猫もびっくり。世代を超えて話が弾む。私は若い友人も多く多趣味なのが幸いして会話はほとんど違和感がない。初日は森の散歩から始まった。二人が本当に自然の中での散歩を楽しんでくれるので嬉しかった。散歩が本当に好きらしく、あれこれ観光するより鳥の声や太陽の光や路傍の花に興味を示すのがうれしい。

Mさんは北軽井沢に来るのはこれで2回め。また行ってもいいですかというからどうぞ、お友達もどうぞと云ったら、親友を連れて来てくれた。こんな何もないところ、ショップやカフェや名所もないところへ喜んで来てくれる。そのなにもないところが良くて私もここに住むことに決めたのに、最近雲行きが怪しい.

リモートで仕事ができるとわかったら移住する人が増えたときいたけれど、これほどとは思わなかった。なにか怪しいものが住んでいそうなこの北軽井沢の森に毎日工事が入る。私が頼んだ庭仕事なんかほったらかしにされて工務店さん大忙し。こんなに人口が増えたら森に住む怪しい者たちもさぞ栖みにくかろう。私の家の周囲の数軒は毎日明かりがついている。それはそれで安心感はあるけれど、私の好きな怪しさは薄れてしまう。周囲がものすごい勢いで開発されているのを見ると、もう少し辺鄙なところに引っ越したくなる。

でもある日の夕暮れ、ホラー感漂うことがあった。私は夕方になると近所の温泉旅館のお風呂に入りに行く。夕方薄明かりの中で森のなかの道端に若い女性が・・・こんな時間に一人佇んで散歩するでもなく。なんでこんなところに?

温泉からの帰り道、少し離れたところでさっきの女性発見。もう日は傾いて薄暗がりに立ち尽くす女性。私が車の窓を開けてじっと見ると軽く会釈をしたので、なにかお困りですか?と尋ねようかと思ったけれど事情がわからないからそのまま通り過ぎた。その後近所の食堂へ。さっきの女性はいないかと探したけれど見当たらないのでやや安心した。

ところが!もう日はとっぷりと暮れて真っ暗な中、またその女性を見つけた。もう全身鳥肌。その時は他所の家の外燈の下で後ろ向きに立っていた。どうやらその明かりでスマホを見ているらしい。暗くなるとこの辺は本当に真っ暗、一寸先は闇になる。なんでこんなところに女性が一人で?しかも段々わが家に近くなっている。一目散に家に帰った。

次の朝散歩にでかけると我が家近く、新しく建った小綺麗な家の前で家族らしい3人を見かけた。その一人が昨日の女性だった。見違えるような元気そうな笑顔。そうか、初めて来て家の所在がわからなくて立ち往生していたのか、家族が到着しなくて心配していたのか。それにしてもよく黄昏の薄暗い森で一人でいられたものだ。私ならビビって大泣きしているところだった。やはり声をかけてあげるべきだったかと反省。

その話をしたら客人の二人は途中からキャアキャア怖がってかわいいのなんのって。その夜は白ワインと赤ワインを開けて話題は尽きなかった。

楽しい夜が開けて次の朝、その家の前を通ったら、まだ新しいので花壇にはほんの少し花が咲いているだけ。数日経って前を通ったらかなり造園が進んでいた。ここに花が咲き乱れたらきれいだけど、でも私の好きな木はこのために何本も切られて、明るい北軽井沢というのもイメージが違うなあ。鬱蒼とした森や夜中に風が轟々吹きすさぶのも捨てたものではない。原始の声が聞こえるもの。

私の好きな北軽井沢が変わっていくのはもう少しあとにして欲しい。











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