2022年7月25日月曜日

冷や水

 最近結成された私達のカルテットの平均年齢は会社員の定年を遥かに超え、後期なんとやらもさっさと乗り越えて最優先でコロナワクチンが受けられる。それで皆4回目接種は終了済み。それでもまだ油断はならないからマスクを着用、空気清浄機をフル回転させての練習が続く。

1ヶ月に1度の練習でも1回に1曲仕上げるので予習が大変。譜読みができていれば皆さんベテランだから合わせはサクサクと進むけれど、私の理想としてはもっと喧々諤々、意見を交わしながらの曲作りがしたい。けれど私の過激な発言がグループをぶち壊した経験があるので今のところ少しおとなしくしている。

数年前まで毎年来日していたイギリスのロンドンアンサンブル。私も毎年小田原公演だけ参加させてもらっていた。彼らはずっと日本ツアーをして最後の小田原だけメンバーの都合で私の出番が回ってくる。とにかく凄腕揃いで一人ひとりの腕も名人クラスだけれど、何よりもアンサンブルの面白さったらなかった。お互い意見を言い合ってあまりの喧騒に私が言う。「喧嘩は帰ってからやって」すると彼らは「これは自分達の普段の会話だから」といって笑う。

お互いズケズケと指摘するから私もだいぶやられた。「nekotamaが悪い」と。そういうとき私はフン!と言えるしときには逆襲、神経質にならないで本番は楽しく終わる。終わると大抵はチェリストのトーマスなんだけど、ハグしてくれる。「Oh! Nekotama. Fantastic!!」リップサービスすごい。時々はフルートのリチャードが物静かに褒めてくれる」毎回ハードな練習の割には和気藹々。練習はものすごくきびしく歯に衣着せぬ意見が飛び交う。その点日本人同士だとあまり遠慮なしに言うと後がこわい。どちらかが弱い立場になると私の以前のカルテット解散みたいになってしまう。子供の時から議論ができる国民性となんでも柔らかく包み込む国民性では、私は前者が好きだから、ロンドンアンサンブルは非常に居心地が良かった。

それで今回のグループは遊びということにして、深く追求するよりも楽しく合わせようというスタンスになった。1回1曲、ファーストヴァイオリン、セカンドヴァイオリン、ヴィオラのパートを交代しながらだから、チェロ以外のパートが全部弾ける。それを1回の練習日でと言うと相当ハードなことなのに、さすがベテランたちは涼しい顔でやってのける。

一昨日はひと月1回の練習日。シューベルトの「ロザムンデ」の予定だった。ロザムンデの楽譜をコピーしながら次の予定のボロディンの四重奏曲もついでにコピー。そして練習日当日、ボロディンの楽譜だけを持ってきた人とシューベルトだけを持ってきた人が入り混じってしまった。しかもうちには原譜が揃っていたのに、それを持ち帰った人が置いてきてしまったという。で、どうしよう。

それでは仕方がないから初見で弾けそうな楽譜を探して練習しようと言うことになった。モーツァルトのK.155から始まる一連の四重奏曲の楽譜が揃っていたのでそれを弾くことになった。いわゆるハイドン・セットでないほうの短くて易しいほう。アルバムの最初の3曲くらいまでは弾いたことがあるけれど、その先は楽譜を見たこともなかったから興味津々。弾き始めたらもう止まらない。あまりの楽しさになんと一気に6曲弾いてしまった。皆顔を輝かせて「楽しいね」その夜は午後8時にはすでにベッドの中。

さて翌日目が覚めたらなにか寒気が、咳もでる。コロナ?嫌な言葉が頭を過る。熱は?むしろ低い。食欲はなかったけれど少し食べるともう起きていられない。いつの間にかまた眠って、目がさめたら午後4時を過ぎていた。起き上がって野良たちの夕飯を用意して、また眠る。午後8時、お腹が空いて少し食べてまた眠り、午前2時やっと目がさめた。気分はすっきり!そしてまた今朝の7時まで眠った。

そうか、あまりにも張り切ってすっかり疲れてしまったのだ。もう本当に若くはない。楽器を演奏、ましてアンサンブルはひどくエネルギーを使う。何時間かの練習がこんなに堪えるなんて。普段一人で弾いているときは適当に休息しているからあまり疲れないけれど、それでも最近は長時間の練習はできない。

これぞ年寄りの冷水。しかし楽しい冷水だったなあ。他のメンバーもケラケラと笑って「またやりましょうね」と言って帰っていったけれど、今頃どうしているかな。腰抜かしてないといいけれど。







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