2023年12月4日月曜日

早くもクリスマス

 埼玉県のとある会館で昔の学友たちとの共演。練習を先日やったので時空の隔たりはあっという間に埋められたことは前に書いた通り、地元の数人のピアノの先生の門下生の発表会で「鱒」を演奏した。チェリストの息子さんの奥様が主催者で、彼女はもちろんシューベルトのピアノパート、チェリストは義理のお父様、ステージ上のマネージメントは彼の息子さんと一家総出の心あたたまる風景。いいなあ、こういうのって。

都心を少し離れると東京近郊でも空が広い。温かい日差しの穏やかな一日、自宅最寄り駅から直行なのに距離的には遠いので少し緊張していた。特急から何処かで鈍行に乗り換えなければいけない。ネットの乗換案内で調べたにも関わらず、電車に乗ったらさて?一体どこだったかしら。乗り換えはうまくできた。

けれど目的地の駅からタクシーに乗ろうとすると乗り場に車は一台も停まっていない。待っていても来ない。そこであたふたしなければ大丈夫なのにせっかちな私はいつも無駄に動いてしまう。広場の向かい側にバス停があってバスが停まっているから、バスに乗ろうと思ったけれど、目的地の停留所がわからない。とりあえずバスに乗った。先日来たときに車で送ってもらったから方角はわかっている。

するとバスは違う方向に曲がっていく。えっ!どうしよう。ドライバーの車内放送で本日は終点付近の交通の混雑によりバスは遅れているので迂回するコースをとるとのこと。だんだん狭い道に入っていくので私は冷や汗タラタラ。知らない町の知らないバスで何処かに降ろされてしまったらその後はどうすればいいの?タクシーは駅にもいなかったのだから流しの車が捕まる訳はない。

そのうちバスは再びにぎやかな道に出て、あら、そこは先日の練習に来たホールの近く。助かった!冷や汗をかいたので喉が乾いた。しかも今更気がついたことは私は目的のホールの名前すら覚えていなかったのだった。道を訊こうにもなんと言って聞けばいいか分からなかったのだった。

会場練習はなんとか終わってあとは本番を待つのみ。たくさんの出演者の最後に私達の出番だから、随分待たないといけない。待つのも仕事のうち。よくそう言われた。特に映画のしごとはほとんど待ってばかり。昔「砂の器」という映画があったのをご存知でしょうか?中居くんの主演ではなくてもっと前の加藤剛さんが主役だった。それに私も出ているのです。その撮影のときはただひたすら待って待って次の日も待って待って・・・

数日間、埼玉会館の楽屋で過ごしたときには電気コンロを持ち込んで鍋を囲んでいたっけ。皆で具材を持ち寄って流石にお酒は飲まないけれど、ご飯を食べていた。会館から出るわけにもいかず、時々お呼びがかかると楽器を持ってステージへ。細切れに撮るから気が散っていけない。加藤剛さんはオーケストラの楽器の後ろにいる音楽監督の芥川也寸志さんの指揮に合わせて棒を振っていた。少しくらいズレても編集の妙で出来上がった画面を見るとうまくあわせてあるので感心した。

主題曲作曲は菅野光亮さん。主人公の加藤さんがピアノを弾くシーンは手だけ写すときには作曲者自身の演奏している手を撮す。加藤さんは骨ばった体脂肪率少なめの体格なのに手が写ったときには菅野さんのぽっちゃりした手が写っているのがおかしかった。作曲者は芥川さんではなかったが、芥川さんなら同じように骨ばった痩せ型の手だからそのほうが良かったかもしれない。

話が逸れたけれど、音楽会の主催者側からの希望でクリスマス色のものをなにか身につけてほしいとのことだった。どんなものを着ても良いと言われるとなおさら難しい。私の持っている服の中に緑や赤はないので困った。

本番数日前に古典音楽協会の会議が開かれていたのは東急線の白楽駅近くで六角橋商店街がある。会議が終わってからブラブラと商店街を歩いていたら手作りの衣類や小物などを売る面白い店があった。入ってみると個性的な小物や服がズラリと並んでいた。店のオーナーに事情を話して探してもらったのは紺地に赤や黄色などの細かい模様がステンドグラスのように見える面白い服だった。

面白いものに目がない私はスカートとブラウスを買ってそれに赤いベルトをしてみたら、すごくクリスマスっぽくなった。そして本番当日、会場に来てみたら、主催者はじめ他の出演者はごく普通のドレス。私はすっかりクリスマス気分で浮いてしまった。ちょっと変わったことをするのが好きな私はいつもへんな格好で浮足立って見える。そのうえ日本では「いい歳をして」という言葉があるように、あまりはしゃぐと叩かれる。

性格に問題があるからへんな人として見られるのは慣れているけれど、でも買ってしまった服はこのあとどんな場面で使えるかわからない。ちょっと普通の場面では使えないから来年のクリスマスにも仕事があるといいなあ。








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