2017年9月23日土曜日

アクセサリーを付けない理由

昨夜の東京文化会館小ホールでの本番でのこと。
ブランデンブルク協奏曲4番の1楽章を弾き始めて半ば頃に差し掛かったときに、耳からスーッと何かが落ちる気配。
それがドレスの肩付近に止まったことに気がついた。
その日のドレスは銀白色で、全体にキラキラしたものだった。
13年前にコンサートで着て、それ以来着たことがなかったもの。
その後は太って入らなくなってしまったのが、久しぶりに試着したら入った!

ドレスの色に合わせてシルバーのライトストーンのイヤリングを付けた。
私は常日頃めったにアクセサリーをつけない。
指輪、イヤリング、ブローチなどは殆ど持っていない。
持っていたとしても良い物から次々に失くす。
真珠のお気に入りのイヤリング、黒サンゴの母が買ってくれたイヤリング、母が海外旅行のお土産にくれた時計等々は、すぐに落としたり失くしたり。
それで、大事なものは身につけないでしまっておいた方が安全となった。
それでもインドで買ったサファイヤの素敵な指輪が行方知れず。
家の中でベッドの下辺りが怪しいと思ってはいるけれど。

というわけでめったにイヤリングも付けないのに、ドレスが薄い色なので少しさびしいからと小さい軽いイヤリングをつけることにした。

演奏中だったので耳から滑り落ちる気配を感じても、それがイヤリングだと気が付かない。
袖が少し張りのあるシフォンだったから、ふんわりとそのあたりに着地したのを感じたときに、初めてイヤリングだとわかったけれど、どうしようもないから弾き続けた。
金属だから床に落ちたら音がする。
それだけはなんとか免れたい。
そのあたりから休みの小節に入るまで、慎重に腕を動かす。
数小節休みがあったので、肩から袖にかけて探るとあった。
落とさないように手にとって譜面台に置いた。

客席から見て、気がついた人がいたかもしれない。
その後は何食わぬ顔で弾き続けた。
そういうときに慌てないのが私の性格。
ここに至るまでの数々の修羅場があって、いつの間にか何があっても驚かなくなっていた。

以前は今のようにお肉のだぶついた体型ではなかったから、細身の肩紐だけのドレスを好んできていた。
デコルテの周辺に何かがあると、色々不祥事が起きることがある。
楽器がヴァイオリンなので、首周りにビーズなどがあるとチリチリ音がすることも。
腕が上がりにくい袖(日本のドレスはたいていこれ)が付いていては動くのにじゃま。
ウエスト付近にリボンなどあると、弓が引っかかる。
レースは調弦のためのアジャスターが引っかかることもある。
それで大抵はあっさりした装飾のないドレス。

それだけでは寂しいから、大きめのイヤリングをつけるのが私の定番だった。
それが年のせいで腕を隠さないといけなくなって袖が付く。
お腹周りのためにスカートはフレアに。
アクセサリーを付けなくても装飾過剰になるから、最近はあまりつけなくなった。

随分若い日のこと、ラヴェルのピアノ三重奏曲を弾いていた。
黒の肩紐だけのタイトドレス。
キラキラ光る大きなイヤリング。
私のお気に入りのスタイルだったのだけれど・・・
ラヴェルのトリオは忙しい。
なん楽章だったか忘れたけれど、休みなく弾いているときにそれは起きた。
重い大きなイヤリングが微妙に耳から落ちそうな気配。
しかも動きが大きいから肩紐がじわじわと外れ始めた。
休みがない。
ほんの数拍の間に肩紐はなんとか戻す。
けれど、イヤリングは不気味に垂れ下がって、生きた心地がしない。

結局最後まで外れなかったけれど、あの時の焦ったことは忘れられない。
その頃からアクセサリーはあまりつけなくなった。
演奏に指輪やブローチは邪魔、ネックレスは以ての外。
唯一許されるのがイヤリングだけれど、危険なこともある。
緊張する本番中に他のことで集中を妨げられたくはないので、だんだん付けなくなったしだい。
私がアクセサリーをつけないことを軽く非難されたこともあった。
アクセサリーでなく宝石のような輝く音でお許しをなんて!・・・一度でいいから言ってみたい。
言えるようになったら良いなあ。

今回の銀白色のドレスはすごく評判が良く、背中に天使の羽のように流れるシフォンの布。
実は私が自分でつけたもので、もともと肩紐だけのデザインに付いてきたストールを肩周りから背中にかけてあしらってみた。
次兄嫁が聴きにきてくれたのでお礼の電話をしたら「nekotamaちゃんって可愛いのねえ」

何十年来の親戚なのに今更なにを!
もちろん褒めたのはドレスのことなんだけど。












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