2017年9月28日木曜日

女性の鑑

何回もこのブログに書いているけれど、今日も思い出したので。

かつての仕事仲間に「女性の鑑」がいた。
静かな歩き方、柔らかい言葉遣い、仕事が終わってヴァイオリンをケースにしまう時などそれはそれは丁寧に楽器を拭いてきちんとしまう。
ケースを閉じるとササッと両手で表面を拭く。
それを見て、私たちは「ほら、みてごらん!あの人は本当に女性の鑑よね、ああいう風にしないといけないわよね」と、ひそひそ。

猫好きな人で、沢山飼っていたらしい。
夕暮れ時に宅配便の配達に来た人が、薄暗がりに光るなん十個もの目玉を発見して、腰を抜かしたとかなんとか。
家(豪邸らしい)には猫専用の部屋があって、猫はほかの部屋には入らせない。
お掃除はマメに、外出から帰ったら玄関前で、服や楽器のケースのほこりを掃う。
そして最初の部屋に入ると、ケースの消毒、服を全とっかえ、そしてやっとメインルームへ。
聞くだけで失神する。

私は今でもポッチャリだけど、当時はもっとデブだった。
すると「nekotamaちゃん、それ以上太ってはだめよ、テレビに映るともっと太ってみえるから」と有り難い助言をいただいた。
リハーサルの時、練習が終わった楽譜をどうするか訊かれた。
「終わった楽譜は下に置く?それとも譜面台に置いておく?」
私は全く気にしないから「そんなことどうでもいいじゃない」と言うと「どうでもいいじゃないわよ」と怒られた。

テレビや録音の仕事では、床にたくさんの電気コードが這っている。
足元はイヤホンのコード、モニターのコード、譜面台照明のコードの他にも、太いコード類がぐちゃぐちゃ。
すると「ちょっと待って、今きれいにしてあげるからね」と言って、コード類を一方の端によせて、椅子がそれを踏んでガタついたりしないように整理してくれる。
きれいになると私が「ありがとう」と横柄に座る。
これも毎度のこと。

そして彼は・・・えっ!彼?と思われたかもしれないけれど、れっきとした男性・・・ある日忽然と姿を消した。
仕事でもそれ以来会っていない。
ちょっとミステリーでしょう?
今頃どこにいるのかしら、思い出しては、涙ぐ・・・まないけれど、時々思い出す。

仕事を始めた時からの付き合いだから、若い頃の私も知っている。

ある時彼が「nekotamaちゃんは若い頃はほっそりしていて、バンビちゃんみたいだったわよね」と言った。
私とは息子ほど年の離れた若者(彼のお母さんと私が同い年)がそばにいて、それを聞くなりすかさず
「今はゾンビですよね」
周り中が凍り付いたように固まった。
「おい、お前、そんなことよく言えるなあ」
慌てふためく周囲の人たち。
でも一番受けていたのが言われた本人の私。
お腹抱えて笑った。
若者は本当に頭の回転が良い。

女性の鑑はその後の目撃情報では、新宿2丁目あたりにいたらしい。
女性の鑑だったから恋愛感情などお互いにないけれど、とても優しくしてもらったので時々こうして懐かしんでいる。
鑑よ鑑よカガミさん、あれから十数年、元気にしているかなあ。























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