2017年9月3日日曜日

デナリ大滑降に挑むスキーヤー

テレビは殆ど見ない。
どこにチャンネルを合わせても同じ顔同じ大騒ぎ。
騒げば人は面白いと思うと思っているのかしら。
しかし、今日偶々食事をしているときに見たのが「デナリ大滑降」
日本人スキーヤーの佐々木大輔さんが、かつてマッキンリーと呼ばれたデナリに挑戦するドキュメンタリー。
こちらの記事を読んで下さい。

かつてアラスカに行ったとき、帰りの飛行機の窓から見たマッキンリーの真っ白な姿が目に焼き付いている。
あそこに冒険家の植村直己さんが眠っているのかと感無量だった。
私は植村さんのお葬式で、弦楽四重奏を弾いた。
バッハ「アリア」ヘンデル「ラルゴ」グノー「アヴェ・マリア」など。
冒険家らしい簡素なお葬式で、故人の奥様はとても素敵な方だった。
こんな人を置いて亡くなってしまうなんて。
冒険とは生きて帰ること・・・とは彼の言葉。
亡くなるときはさぞ無念だったことだろうと思う。

デナリでの佐々木さんの滑降。
恐ろしくて見ていられないほどの急斜面。
しかも一番狭いところはたったの2mしかない。
そこをどうやってターンをするのか、見ているこちらも息がハアハアした。
斜度は55度、氷点下30度、秒速30m、そして標高は6190m。
どの数字も殆ど理解不能な世界なのだ。

私がチベットへ行ったときに登った山が、5000mを超えていた。
その時の恐ろしい空気の希薄さは一生涯忘れられないと思う。
すぐ目の前、ほんの5m位歩くのに、息が切れて度々立ち止まった。
前日私は高山病で倒れたのに、中国人のガイドが「大丈夫大丈夫」と言って連れて行かれてしまったのだ。
呼吸困難で息が吸えない。
下手すれば死んでいたかもしれない。
出発前に伝染病の予防注射を受けた医師から「日本人は高山病で何人も死んでいるのだから、風邪をひかないよう気を付けなさい」と言われたのに、風邪から高山病になってしまった。
そこを遥かに超える6190m。
どんな世界なのか想像を絶する。

なぜこのように危険に立ち向かうのか。
男の性なのか、理解不能。
そこに山があるから、という名言があった。
佐々木さんは40歳で油が乗り切っているし、この年令をすぎると体力は下降する。
ここでやらなければ後はないとみたのか。
かつて三浦雄一郎さんが最高齢記録でエベレストを滑降。
その後記録を越えられたけれど、又取り返すなど次々に挑戦していた。

私のスキー歴は長いけれど、仕事を優先していたから怪我をしないことが絶対条件だった。
例えば指や腕を怪我したら、完治するまで数ヶ月ヴァイオリンが弾けない。
もはや若くはないから、それでは復帰できる見込みはない。
スキーに出かけるというと友人たちは「足はいいけど手は怪我しないように」と言うけれど、演奏するときには全身を使うから足だって怪我してはいけない。
それで絶対に自分の能力を超えるような危険なところへは、行かないようにしていた。
雪の状態が悪ければ無理せずにやめた。
仲間たちは私を臆病者と考えていたと思う。
もちろん臆病者だけど、それはとても大事なことだった。
ステージに穴を開ける、他人に交代してもらうなどは演奏する者にとっては恥だと思うので。
でも長い年月の中で1度や2度はそういう残念さを味わった。
病気で周りにも迷惑をかけたこともあった。

仕事もだいぶ整理したし、このへんで少しむちゃしても構わないかな。
来年は北海道へ。
サホロへ行く予定が入っている。
少しは無理と思える斜面にも挑戦したい。
涼しくなるとそわそわして、ああ、もう山が呼んでいる。
おっと!その前に幾つかのステージをこなさないといけない。
これが先でしょうが。
どこまでも遊びたいnekotamaなんですが。

それでもなあ、55度とは・・・
蔵王の横倉の壁だって38度だっていうのに。
ある年、今を去るうん十年前、一大決心をして横倉に挑戦しようと思った。
胸はドキドキ。
「私の腕(足?)では無理でしょう?」と言うと無責任な男どもが「大丈夫大丈夫、行こうとと決めれば行けるから」と煽られた。
でも幸いなことに・・・その年は雪が少なくて危険だというので横倉の壁は滑降禁止となって綱がはられていた。
ああ、助かった!
佐々木さんのようなスキーヤーは絶対そんなことは考えないのでしょうね。
「助かった!」なんて。



















2 件のコメント:

  1. 凄い! nekotamaさんはチベットに行ったことがあるんですか。いろんなところに行っているんですね。
    今年はスキーで無理と思える斜面に挑戦するなんて、そのチャレンジ精神にも感心です。
    (こちら、スキーは昔ちょっと齧ってすぐ諦めました。なんせ雪のない県出身なんで)

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  2. スキーはかじっちゃあいけません。歯が欠けるから。
    いや、その齧るではないか。あはは。
    チベットは行ってよかったのか悪かったのか、とにかく衝撃でした。
    今でも目に浮かぶのは、人っ子一人通らない湖の岸辺を、五体投地で祈りながらラサに向かう人の姿。たったひとりですよ。どれほど孤独で過酷な作業なのか、考えると気が遠くなります。それほど現実が厳しいのでしょうね。

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