2017年9月23日土曜日

トスカ

知人がスカルピアを歌うというから聴きにいった。
江戸川文化センター。
第34回東京オペラ、34回というから随分以前からのシリーズらしい。
私はとんと知識がないから、深川あたりでオペラが上演されているとは知らなかった。

知人というのはバリトンの村田孝高さん。
都内某所でのサロンで小さなコンサートをするときにお目にかかった。
そのサロンはマンションの一部屋。
広いリビングルームで、楽器の演奏や彼の歌などを聴いて楽しむ。
広いと言ってもマンションの一室だから、大ホールとは違う。
そこで彼の声は朗々と壁を揺るがすほどの声量で響く。

今日のホールはそれほど広くはないから、オペラと言ってもコンサート形式でするかと思ったら、ちゃんとオーケストピットまで出来ていた。
オペラほどお金のかかる芸術はないと思うので、これをシリーズとして取り上げる人たちのご苦労が忍ばれる。

オーケストラは江東オペラ管弦楽団と銘打ってあるから、このオペラのために集められたものかもしれない。
時々音が濁り音程に難があったけれど、上手く歌手との連携もできているのは指揮者の腕?
最後の方でのチェロのソリ、そこはとても良かった。
指揮は諸遊耕史さん。
経歴を見るとオペラの指揮者として随分経験が豊富でいらっしゃる。
私は残念ながら世代が違って、存じ上げなかったけれど。

いまや日本人も本場のイタリアなどで活躍できる時代になってきた。
日本人のオペラと言えば私達の世代では、喉を潰すような唱法。
喉に力が入ってガチョウが絞めころ・・・いえいえ、悪口はいけません。
私達の時代は、ヴァイオリンでもピアノでも力任せに演奏することが多かった。
しばらくすると日本人がミラノで「人知れぬ涙」を歌うというのでビックリしたことがあった。
それを聞いたらあんまり上手いので二度ビックリ。
日本人の歌い手もここまで来たかと、感激した。

村田さんの風采も声も貫禄たっぷりで、まさにスカルピアは、はまり役。
実際の彼は穏やかでこのオペラの話をするときに「役はなんですか」と訊くと「それが・・・スカルピアなんです」と気弱そうに答えた。
ところが舞台を見ると、いかにも悪辣そうで圧倒的な存在感だった。

カヴァラドッシ役の歌手は少し喉の調子が悪かったのか、声がかすれたり潰れたり。
もっとも役の上での彼の置かれた立場からすれば、平常ではいられないわけだから、これはこれで臨場感ありとしよう。
最近オペラの字幕が出るので、昔のように歌だけ聞かないで歌詞の意味もわかるけど・・・それも良し悪し。
オペラって筋書きから言うとひどすぎる。
筋はどうでも良くて歌が素晴らしければ良いのだけれど、字幕を見るとそりゃ、あんまりだろうと突っ込みたくなる。

トスカがスカルピアを殺したとカヴァラドッシに告白。
すると人殺しをした手を、清められた手と賞賛する。
いくら相手が悪辣な人間でも殺してはいけないと、子供の頃注意されませんでした?

故芥川也寸志さんがよく言っていたけれど「僕はオペラがきらいです。何を言うのもあんなに大げさに言うのはおかしい」と。
そう言われりゃ、歌舞伎などもその類ということ?




















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