私の姉は明日、大学の卒業式に出る。
随分前から専科履修生として通っていた放送大学。
好きな科目だけ楽しみながら履修していたら、大学側からせっかくだから卒業したらどうかと勧められた。
それでも迷っていたので私が後ろからプッシュ。
私の家は子沢山の貧乏な家庭だったけれど、両親とも教育にお金を惜しむことなく、好きなことをやらせてくれた。
ただ、この姉だけは兄弟の中でも素直な性格で、大学進学を望んだら母から4番目から下の子は高校まで、と言われたらしい。
たぶんその頃は6人兄弟全員が学校に通っていたので、家計は火の車だったのではないかと思う。
兄二人は大学院まで行ったから、もう破綻寸前だったかもしれない。
母の悲鳴が聞こえてきそうな状態だったのだのだろう。
そう言われて姉は大学進学を諦めて就職した。
その後、もうひとりの姉は知らん顔して大学へ。
その後、生意気な末っ子もお金のかかる音大付属高校から音大へ。
その時点で騙されたと歯ぎしりしたけれど、後の祭り。
姉は学内でのIQテストで一番だったそうで、勉強が好きで、私を捕まえては平家物語を暗唱させたり、百人一首をおぼえさせたりしていた。
姉は子育てが終わったので通信制の放送大学へ行った。
私も40歳代から放送大学へ通って卒業したけれど、やはり卒業したことで達成感があった。
それで姉にもカルチャーセンターみたいな使い方でなく、ちゃんと単位をとって卒業したら?と強く勧めた。
姉はそこまでする気もなかったけれど、私や大学からの後押しで卒業にこぎつけた。
今81才。
髪の毛はもう真っ白で、こんな人が卒業式にでたらみんなびっくり?
いや、そこが放送大学の良いところで、元気な年寄りがわんさかいる。
しかも経験豊富で、講師もタジタジになる。
私は仕事が忙しく、中々スクーリングもテストもうけられない状態が続いて、卒業に10年かかった。
卒業式にも出られなかった。
姉はのんびりやっていたのでもっとかかったらしいけれど、流石に卒業証書が送られてきたときは嬉しそうだった。
ケーキと花を持ってお祝いに行ったら、喜んでくれた。
私も後輩!ができて嬉しかった。
明日はNHKホールで卒業式、その後祝賀会は新宿のホテルで行われる。
姉一人では足元がおぼつかないから、私は付添で参加する。
自分が出られなかった卒業式を体験する意味でも。
小学校、中学校時代、家にお金が無くて、私は袖の擦り切れた姉のお下がりの制服を着て、手の取れかかった古いカバンを持って、それでも一切恥ずかしいと思ったことはない。
母の苦労とありあまる愛情が、私達を自分の道に邁進できる力を与えてくれたから。
そんな状態でもやりたいことをやらせてくれた両親に感謝している。
私が大学に行く頃には兄が働き始めて、母もやっと一息つけたと思う。
姉の卒業は私にとっても本当に嬉しい。
それがなんの役に立つのかは本人次第。
姉は最近とても元気そう。
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