2021年3月27日土曜日

白馬の早すぎる春

 気分転換に白馬八方のラネージュホテルに数日滞在してきました。

ここ八方の中でも特に洗練されたホテルで、5つ星だけあってスタッフのサービスが素晴らしい。建物は特に重厚とか贅沢とかいうわけではないけれど、多分目に見えないところにお金がかかっているようで、どのコーナーも着心地の良い服のように気分にフィットしてくる。客室もごく普通の家庭内の寝室のようだけれど、広さも室内装飾もすべてちょうどよいという言葉がピッタリするようだ。

最初にホテルに到着したときには5つ星にしては簡素なと思ったけれど、見てくれよりも客の気持ちを重視しているのが手にとるようにわかった。「見てくれ」は明るく軽快な感じ。リゾートホテルは客を喜ばせるためにこれでもかとサービスが強調されるのが多いけれど、実に淡々と出すぎず、それでいて必要なときにはすぐに対応する。例えばフロントは客室から階段を降りていくと真正面にある。客がいなければ、そこにはスタッフがいない。階段を半ば降りきろうというときに静かに奥から人が現れてすぐに対応してくれる。このタイミングが見事なのだ。しかも現れ方が何気ないので、客に負担がかからない。

フロントに用があるときに声をかけたりベルを鳴らしたりしたことは一度もなかった。そのタイミングはよほど訓練されたものと見える。用がないときにはそしらぬふりをしていてくれるのがありがたい。ロビーにはお茶のコーナーがあって、素敵なカップで自分でお茶を淹れて飲むことができる。その時も知らん顔しているようで、助けがいるときには必ず誰かが直ぐ側にいる。今まで泊まった数々のホテルのなかでもサービスの面で最高点を差し上げたい。

食事はフランス料理、本当に美味しいけれど、軽度の逆流性胃炎の私には少し重い。初日の夜はあまりの美味しさと珍しさでしっかりと平らげたけれど、量が若者を満足させられるものだから老人はすべて平らげてはいけないと翌朝思い知らされた。その割には翌朝の朝食もぺろりと平らげたけれど。初日にはワインのソムリエとシェフが交互にやってきて話をしてくれた。表に貂がいますよというから窓から覗くと、まあ、それはきれいな襟巻きが・・・ではない襟巻きのもとが。夜目にも毛並みの素晴らしさがわかる。野良貂ならぬ家貂。

1シーズン1回はゲレンデに立つことを自分に課している私は、次の日板を持ってゲレンデに向かった。雪はすでにゲレンデにもまばら。上の方だけはなんとか滑れそうだけれど、この雪で自分の足のコンディションで滑るのは危険と判断したから、ゴンドラに乗って次のリフトに乗るまでの間だけ滑った。リフトから降りて高いところから景色を眺め、下りのリフトにのって帰ってきた。上の方は思ったより雪質は悪くなさそうだけれど、ほとんど雪解けのゲレンデはどんなところでハプニングがあるかわからない。スキーでは絶対に怪我をしてはならないというのも私の鉄則なのだ。プロスキーヤーならいざしらず、フリーミュージシャンのわたしは怪我即休業になるし、傍に迷惑がかかるということを若い頃自分の入院騒ぎで骨身にしみたので。

アガサ・クリスティーのミステリー「バートラム・ホテルにて」はミス・マープルがこのホテルの裏の闇を暴く。あまりにも行き届いたサービスに違和感をおぼえることから始まる。しかしラ・ネージュホテルはたぶんそんなことはない。美しいマダムが食事のときにテーブルまで話をしに来てくれる。ここのスタッフたちはみな相当なスキーヤーでもあるらしいことは話しているとわかる。私の新しい板を見てすぐに反応するフロント担当者。用具の扱いにもなれていることはひと目で分かる。ほっそりとした女性スタッフが私の重たいザックをひょいと持ち上げて階段をスタスタと降りていく。相当な筋肉の持ち主と見た。

チェックアウトのあとはレンタカーでドライブ。白馬のスキージャンプ台を目指した。ここは以前来たときに私が腰を抜かして上がれなかったところ。今回も無理だと思ったけれど登ってみた。ジャンプのスタート台まで行く階段はスケルトンで網目になっている。真下の地面が見えるのは気持ちの良いものではない。そこまで行くための吊橋状の通路で、すでにお尻がムズムズする。ジャンプみたいな恐ろしいことを始める切っ掛けはなんだろう。私ならどれほど進められても脅されても絶対にできない。

フランス料理もいいけれど私の胃袋は和製なので、途中で食べたわさびそばに胃袋が大喜びしてくれた。

最近話題が少なくnekotamaも休みがち。私を取り巻く世間では私は野良猫の仲間入りをして放浪していると思われそうなので、話題作りに白馬まで行ってきました。私は幸いにもまだコロナに縁がなく、うちのゴロにゃも高齢にしては元気。ご心配なく。







2 件のコメント:

  1. 優雅を装っているだけよ。
    毎日猫の餌をピンはねして食べているの。
    老女一人ならお金かからないし、たまにはね。

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