2021年3月12日金曜日

デジャブ(デブじゃ、ではない)

 国立映画アーカイブは宝町駅からが一番近いけれど、銀座付近は様々な路線が乗り入れているから多少の時間差があっても大差はない。東銀座、あるいは築地、京橋などからは徒歩圏内。新橋駅だってそれほどの距離ではなく、銀ブラでウインドショッピングをしながらなら、あっという間にたどり着ける。それに道路が真っ直ぐに交差しているから迷子にもなりにくい。今日は宝町からの最短距離を狙ったので銀座線を使うことにした。

渋谷に出るのは3ヶ月ぶり。渋谷駅の変貌は目を瞠る。いつもの通りの改札から銀座線に行くつもりだったのに、そのコースはもうなくなっていた。その代わり駅の案内版を見ると今までとは全く反対方向に行くように指示が出ている。おや?これでは全く以前とは方向が違う。ヒカリエの方に行ってしまうではないか。指示通りに行くと本当にヒカリエに出てしまった。そこに真新しい銀座線の改札口があった。

銀座線は地下鉄なのに以前は地上のかなり高いところに駅があった。わたしが幼かった頃はそれが不思議だった。最初は高いところを走っているのにいつの間にか暗くなって地下を走っている。どうやったらそんなことができるのだろうか?だってあんなに高いところから地下に潜るのだから急降下しそうなものなのに、それほど下降しているとは感じない。本当にいつの間にかなんだから。銀座線が開通した当時、父が上野動物園に連れて行ってくれた。初めて乗った地下鉄は線路に火花が散ってゴーゴーとすさまじい音を立てて、少し怖かった。動物園のことよりも地下鉄の印象のほうが強かった。

宝町駅は降りたことがないから様子がわからないけれど、国立映画アーカイブは駅に近いからすぐに分かるだろうと思っていた。行き方は地図で調べた。大きな通りに面していて、右側に高速道路が見えれば正解。そのとおり、往きは迷わず到着した。チケット売り場で料金を見るとシニアは無料。ラッキー!売り場の人がなにか年齢を証明できるものをお持ちですか?と言う。顔のシワで証明できませんか?と言うとニコリともせず「そうはいきません」ここで「どう見ても貴女は50歳以下にしか見えません」とでも言えば拍手喝采、入場料金3倍くらいは張り込んだのに。だがそうはいかなかった。しかし香典をもらったりしなくてよかった。

思いがけなく中で2時間以上も過ごしてしまった。狭い展示場だからものの15分もあれば見切れてしまうと思ったけれど、とんでもない、中身が濃くて魅力に富んでいたので丁寧に見ているうちにあっという間に時間が飛んでいった。11時開館だからちょうどランチタイム、見終わって銀座で久し振りに美味しいものでもたべようという目論見は外れた。気がつくと13時半、お腹が空いて足がフラフラする。会場を出てもオフィスビルばかり。横道にそれても適当なレストランがあるかどうか、このへんは来たことがないからわからない。しばらく歩いたけれどなかなか適当な店がない。せっかくだからハンバーガーなどではなく、洒落たランチでもと思ってもビルばかり。

で、ふと入り込んだ横道、なんだか懐かしいような見覚えのあるような・・・デジャブとでもいうか、そこは画廊がいくつかある一角。あーあ、そういえば絵を描く知り合いがたくさんいて、よく展覧会をやっていたものだった。そして雪雀連でも数回展覧会をやった画廊のすぐ近くにいたのだと言うことに気がついた。長い間のコロナ蟄居生活で勘が鈍った。最後に銀座に来たのは博品館のそばの和食の店だった。あれ以来ご無沙汰だったのだ。

そうこうしているうちにランチタイムを過ぎたので家に帰ることにした。いつの間にか東銀座が近くなってしまったので築地でお寿司でもと思ったけれど、それも気が向かないから日比谷線に乗るつもりで地下に潜った。そこは都営浅草線の改札口、ここからはホームを通って日比谷線には行かれないと書いてあったけれど、何言ってるの、同じ東銀座で地下通路でつながっていないわけがないじゃない。浅草線の東銀座駅に入るとすぐに出口の改札口、なるほど日比谷線に行くにはその改札を出てまた日比谷線の改札に入るというなんとも不思議な構造になっていた。しかも今入ったばかりだから出口で出られない。せめて脇道作ってくれればいいのに、それでは日比谷線に乗るのはどうしたらいいのか。

改札口で駅員さんに入ったばかりなのに出られない、私は日比谷線に乗りたいのにと言ったら、だから入るときに書いてあったでしょうと言う。ここからは出られませんよというから「だめよ、出して頂戴」「では今入らなかったことにしましたから、今度は気をつけてください」だと。誰に向かって言っているのか、私がそんなこといちいち覚えていられるとでも思っているのかしら?

日比谷線に乗ってやれやれと思ったら車内放送が、次に乗り換える路線の沿線に火事が発生して途中電車が運休していますという。頭の中で様々な考えが渦巻く。日比谷線を途中下車してJRに乗り換えて火事現場を避ければ帰れる。それには、ああだこうだ、どこそこで何線に乗ってなど結構ノリノリでいたら、すぐに沿線火事は収まって運転再開しますと放送。終点まで行ったらホームは人が一杯で密は避けられない。次に乗り換えの電車が来るまで時間がかかるというから、駅を出ることにした。

なにか食べているうちに電車も空くだろうという考えで。知らない街で食べ物屋さんのいいところを探すのは、井之頭五郎さんのようにはいかない。どこにでもあるチェーン店ばかりで面倒になったから結局ハンバーガーの店に入ってしまった。こんなことなら面倒がらず築地まで足を伸ばしておけばよかった。

去年から今年のはじめにかけての足の故障はほとんど治ったようだ。今日はいくらでも歩けたし外に出ると頭の働きも忙しくなる。人はある程度刺激がないとだめになる。それにしても今年はじめよりもずっと人混みが増えている。これではコロナ感染拡大は当分収まらないだろうと実感、明日からはまた家でおとなしくしていよう。

なぜ築地でお寿司を食べなかったかというと、以前よく行った場外の凄まじい混雑が気になったから。でもよく考えたら今はコロナ鎖国で外国人が来ない。もしかしたら今がチャンス!だったかもしれない。







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