2023年11月6日月曜日

箱根に遊ぶ

 このところ友人たちとの遊びが多い。M子さんが少し体調を崩して治療を終えて「娑婆」に戻ってきたので遊ぼうというわけで待ち合わせた。本当は退院したら築地のお寿司屋さんでお寿司を食べようという約束だったのだが、寿司店が閉店してしまったので、急遽何処かで紅葉を愛でようということになった。

彼女の家は私の家と箱根の間にあるから箱根に足を運ぶことにした。M子さんの家の近くのコンビニで朝9時に待ち合わせの約束をした。彼女の家にはだいたい1時間ほどで到着するようだから30分の余裕をみて7時30分に出ればいい。しかし早起きの私は4時ころにはお目々パッチリ、お腹も空いている。時間を持て余しながら早めに出てしまおうかと考えては、いやいや、コンビニに早く着いてしまうと店で長く待つことになるからそれは嫌だと考えた。それが間違いのもとだった。

予定通り7時30分に出発。連休前のウイークデー、混んでも大したことはない。すると東名高速道路に入る前にカーナビからいやなお知らせが。5キロ渋滞、ぬけるのに約30分。ま、仕方ないか。入ると次にまたお知らせ。7キロ渋滞、抜けるのに50分。やれやれ、しかし渋滞の手前でやたら騒がしい。赤い大きな緊急自動車は消防車。分岐点でお腹を見せてひっくり返っている軽乗用車。お願いだからこんなところで昼寝しないで。その頃には頭に血が昇ってもうやだ!そうだ、一旦出て高速の下の道を走ろう。

そういうときはじっと我慢して成り行きに任せるのが一番とわかっているのに時々そういうことをする。結局1時間半くらいの遅刻。

約束のコンビニにたどり着くと現れたのはなぜか緑色の髪の乙女(元)、この人と私が組むと最悪の事態となるのはよくわかっていたけれども約束したのだからあとには戻れない。仕方がない、箱根の地獄までお供しよう。病み上がりにしてはえらく元気なM子さんは私の車にカーナビがついているにもかかわらず人間ナビゲーターに電話をしては道を訊く。平日の昼間、相手は仕事中だからさぞや迷惑なことと思うけれど、なぜか親切に対応しているようだ。邪険にするとあとが怖いからか。天衣無縫の彼女にはこの世に障害物はない。

私はこの日すでに3時間以上運転しているからお腹も空くし目も霞む。そんなことお構いなしに助手席でM子さんは一向にものを食べたがる気配もなくはしゃいでいる。お腹すいたからなにか食べない?と言ってもどこ吹く風、返事もしない。病み上がりだというから今日のところは許す。

箱根のどこという目的地はないのでカーナビにはロープウエイと入力。乗り場でサンドイッチにありつけたら上出来なんだけど。今年はどこの観光地の紅葉も遅いらしいけれどあまりといえばあんまり、ほとんど色づいていない。チケットを握りしめてのりばで待つことしばし、乗り物が来た。早めにきていたから椅子に座れてM子さんがお隣さんとおしゃべりを始めた。そのうちに「え、これケーブルカー?ロープウエイじゃないの」と素っ頓狂な声を上げた。

向かい側のカップルまで違う違うと言う。それじゃどうしよう、チケットはロープウエイのものだから途中でおりろと言われてもおりられない。発車のベルが鳴ってドアが閉まる寸前人をかき分けてやっと降りられた。普通なら乗り物を見ればわかるじゃないと言われそうだけど、わたしたちは世の中から超然と生きているから常識は通用しないのよ。

ロープウエイとケーブルカーが違う乗り物だったとは・・・乗り場にたどり着いた二人はホッと一息。高い!はるか下を見下ろして絶景を楽しんだが、今年はそれプラス紅葉が楽しめる季節のはずがまだ黄色い山々に少しがっかりした。

ロープウエイは大涌谷の地獄谷に到着、乗り物を降りた瞬間その辺に立ち込めるガスで、さすがの匂い音痴の私でさえも臭い!箱根は10年くらい前までロンドンアンサンブルのメンバーと1年に1回訪れた場所だった。イギリス人の彼らはとりわけここが好きなようだった。いつもお腹をすかているチェロのトーマスはここに来ると黒玉子をむしゃむしゃと食べ、フルートのリチャードは健脚を見せびらかすようにスタスタと歩く。特に箱根神社あたりに行くとはしゃいで子供のようになった。懐かしいなあ。彼らは今どうしているかしら。

臭いガスに辟易して早めに退散。M子さんはまだなにか食べるとは言わないから私はこの平和な日本では殆ど見られない餓死犠牲者になりそうになった。たまりかねてなにか食べましょうと提案。ほとんど無計画なドライブだからどこにむかっているのかもわからないけれど、そばやを見つける。けれど箱根で昼下がりに食べ物にありつける可能性は極めて低いということを知っている私は絶望的。やはりたいそう良さげな店があったものの休業中、それは昼と夜の営業時間の合間の休憩なのか本日休業なのかはわからないけれど、たとえ営業日でも午後はほとんど店を閉めるのだ。

仕方がない、すごすごと帰路につく。空腹でずっと休まず山道を運転していたのでクラクラするかと思いきや、体調は悪くない。むしろ日頃食べ過ぎなのがいけないらしい。ついに日がくれてM子さんの地元に帰ってきたらすっかり暗くなっていた。やっとつれていかれたのはアメリカンな気持ちの良いお店だった。都心の店のように狭くない。ゆとりのある空間に感じの良いフレンドリーなスタッフ、メニューも初めて見るようなハンバーガーやサンドイッチ。食べたらすごく美味しくてまた来たいと思った。やはり湘南はおしゃれなのだ。

これが正真正銘のケーブルカーらしい。

違う切符で改札を通れたけれど、降りるときはどうなるのかしら。降りられなかったりして。







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