2011年9月11日日曜日

カルテット

荻窪に知り合いが多くて、このところ頻繁に通っている。それで、毎週のように環八をドライブする。今日は歯科医師のH先生のお宅へ。先生は今年82歳。アマチュアながらチェロの名手で、その筋の有名人。名器ゴフリラと名弓ペガットを所有している。楽器は先生の師匠でもある某国際的チェリストも羨むほどで、火事が起きたらうちはほっといて楽器だけ持って逃げると宣言している。奥さんもこんなわがままな人と結婚して、大変だったと思うけれど仲はとても良い。私が最近ヒマだと聞きつけて、早速カルテットのお誘いを受けた。元東フィルのメンバーがセカンドヴァイオリン、元音大教授がヴィオラ、私がファーストヴァイオリンで、毎月一回集まる。驚くことにH先生の腕はお歳にも関わらず、衰えていない。聞けばご自分の師匠のところへ足繁くレッスンに通っていて、その師匠も熱心にみてくださるそうなのだ。若い音大生に見られながら受けるレッスンは気恥ずかしくていやだと言いながら、師匠が2時間余りも教えてくださることに大変感謝している。私たちのカルテットの曲目は、小手調べにハイドン、メインはドヴォルザークの作品105。もう何回も合わせているのに、とても難しくて、なかなかうまくいかない。本番でもあればその日を目指すが、なにもなければやはりのんびりやってしまう。月一でも何回か弾いていると、楽器の組み合わせや和音の響きなどが良くわかってくる。私はアマチュアの方たちのおさそいでも、ある程度の水準以上なら気軽に応じることにしている。曲を知る上のもってこいのチャンスだから。しかもアマチュアの中でも飛びぬけて上手いこの方なら、こちらの知らないことまでご存じで逆に教えられることも多い。いざ仕事で同じ曲を頼まれたらラッキー。隅々までわかっていると、本番の怖さは半減する。知らない曲をハラハラしながら手探りで弾く恐怖は、知らない道を猛スピードでドライブするようなもの。知っていれば、どこに障害物があり、どこに急カーブがあるとわかって運転しているのと同じだから、その手前で減速するとか、迂回するとか手だてを講じられる。そんなことでH先生にはずいぶんお世話になりました。「この頃やっと音が良く出るようになったよ」とおっしゃる。いやはや、本当に恐れ入りました。

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