新大久保のルーテル教会へ、コンサートを聴きに行った。
新アドニス弦楽四重奏団の20回目の定期演奏会。
Violin 山中光 長岡秀子
Viola 小野 聡 CELLO 平野知種
プログラム
モーツァルト:弦楽四重奏曲 変ホ長調 K.428
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 ニ長調 作品18-3
ヤナーチェック:弦楽四重奏曲第1番 「クロイツェル・ソナタ」
本当に幸せな時を過ごした。
一人ひとりが名手ということもあるけれど、これほど上質な音が出せるというのは長きに亘って一緒に演奏してきたからだと思う。
ヤナーチェックは初めて聴いたけれど、どこが「クロイツェル・ソナタ」かはどうしてもわからなかった。
私はプログラムの曲目解説はまず読まない方だけれど、今回は帰宅してから読んでみた。
トルストイの小説「クロイツトェル・ソナタ」に霊感を受けたというので、はは~ん!
こんな印象だったのか。
その解説が面白いけれど、著作権があるからここに書くことができないのは残念。
会場ではたくさんの知人に出会った。
昔のオーケストラの仲間たち。
特に私が一時オーケストラの仕事を中断して、20年ほどの空白後復活したとき出会ったのがヴァイオリンのMさん。
彼女は優秀なヴァイオリニストであったけれど、親友を失って落ち込んでいる時期だった。
周りはうるさいおばさんばかり。
楽屋でもいつも一人でいたので話しかけてみると、とても頭の良い素敵な人だった。
私たちは並んで弾くことが多かった。
昨日久しぶりに出会ったら「nekotamaさんからは色々教えて頂きました」と言う。
もともと私は人に教えるのが好きではなく、特にオーケストラで一緒に弾く人は先輩後輩の区別なく同等だと思っているから、ほとんど教えようとは思わない。
まして、音楽の世界では若い人ほど上手い。
そんな優秀な人に、私ごときが教えることなどなにもない。
むしろ教わりたいくらいだから一体なんのことを言っているのかと思ったら、私が楽譜に指使いの番号を書かないということだった。
ヴァイオリンの左手の指は、人差し指が1,中指が2,薬指が3,小指が4。
ピアノは親指も使うから指番号は5まである。
楽譜に左手の指番号を書いている人が多いけれど、私は数字が書いてあると邪魔で、音符を塊ごとの絵として捉えていく。
スタジオで仕事をすると、たった一回の練習で本番なんてことはざらにある。
そのときに一々指のことは考えていたら、仕事にならない。
形で捉えてポジションを決めていかないと間に合わない。
スタジオミュージシャン達の初見は異常に早い。
オーケストラでは、大抵は早く楽譜を送ってもらってじっくりと譜読みをしてから練習に臨む。
その譜読みの段階で、難しいところは左手の指使いを考えて書き込んでいく。
そうすると弾けるようになってからも、音符を見ないで数字を見ながら弾くことになる。
弾けるようになったらすぐに消してほしい。
人それぞれ指使いの癖があって、他の人の数字が書き込まれていると一瞬迷うことも多い。
それで私は一緒に弾く人には、指使いを消すようにお願いしている。
十分に練習してあるのだから指使いはもう必要ないと思うので。
初めて私にそう言われたときにMさんはショックだったらしい。
でもその御蔭で譜読みが楽に早くできるようになりましたと言う。
人それぞれで、ある人の楽譜を見たらびっしりとニュアンスまで書き込んであって、色分けされていたのにはびっくり。
私が師事したある先生は書き込もうとすると「今ここで覚えなさい」と言って書き込ませてもらえなかった。
そんなことが人の役に立っていたのかと、唖然とした。
これはたんなる私の癖なのに。
役に立ったのではなく、彼女が役に立たせたのだと思った。
優秀な人はそうやって周りから吸収していくのだと感心した。
ファーストヴァイオリンの山中さんは、私がMさんと一緒に弾いていた時のコンサートマスターだった。
弓の元から先まで、一瞬たりとも気を抜かない素晴らしい演奏を、いつも二人で楽しみにしていた。
セカンドヴァイオリンの長岡さんは彼の奥様。
彼女と一緒に弾く時の山中さんは、普段よりもずっと生き生きしているように思える。
表情も明るい。
人生でも音楽上でも良き伴侶に巡り合って、この幸せ者が!この、この!
0 件のコメント:
コメントを投稿