2019年5月26日日曜日

猫と帰宅

午前3時半、目が覚めると同時に帰宅の準備。
昨夜、あらかじめまとめた荷物を車に積み込んだ。
最後に猫をキャリーバッグに押し込めるとさあ、出発。
おうちに帰るよと言い聞かせながら走っているのに、にゃあにゃあとやかましい。
少しでもスピードが上がると、にゃあにゃあ声も増大。
でこぼこ道も反応する。

高速道路に入ってなおさらスピードが上がって、声もますます・・と思ったけれど、凸凹や山道のようなカーブが少ないのでだいぶ居心地が良くなったようだ。
そのうち急に静かになった。
鳴き疲れて眠ったらしい。
おい、生きてるか?・・・反応なし。

帰宅したら思いの外疲労が溜まっていて、朝食を食べたら猫も人もぐっすり寝てしまった。
昼ころ目を覚ましてまた昼寝。夕飯のあとは10時頃就寝、午前1時半起床、3時頃寝て6時に起きて、いったい何時間眠ったかしら。

北軽井沢のノンちゃん山荘の片づけと、猫と暮らせるかどうかのテストを兼ねての滞在だった。
到着して、生まれて初めて他の家に入った猫は呆然としていたけれど、思いの外すんなりと馴染んでくれた。
さっそく探索して作った巣は、ノンちゃんの服が残っていたクローゼットの奥。
服の積み重ねの奥にすっぽりと潜り込んで、覗くと奥から目が光って見える。

しばらくするとそこから出てきて、家を探索し始めた。
キッチンと居間は一通り歩き、危険はないと判断したようだ。
けれど、ソファの下の隙間を見つけるとそこに潜り込んでしまった。
覗くとやはり奥から目玉がギロリと見える。

餌を食べない、水も飲まない。
なによりも尿が出ない。
これは本当に心配なのだ。
朝6時に出発、夜の7時になってもトイレを使った形跡はない。
これでは腎臓に負担がかかって体を壊す。

庭続きのお隣さんで夕食を食べいささかきこしめして、私は突然「猫が心配だから明日帰る!」と叫んだ。
「明日朝、私の車がなかったら帰ったと思って」と言うと、大変良い獣医さんがいるから連れていけば?と一緒に飲んでいたあけみさんから言われた。
とにかく心配だから帰る!もう駄々っ子になって叫ぶ。

プロ顔負けの腕前のお隣さんの食事を捨てて帰るのはいささか心残りだけれど、うちの子の一大事、今日来て明日帰るのは体力的にもきつい。
覚悟してノンちゃんの家に戻ると、トイレには立派なフンとおしっこ。
手始めにちゃおちゅーるを出すと、ペロペロと美味しそうに舐める。
マグロに鰹節をまぶして出すと、すっかり平らげた。
ようし!これで大丈夫。
いいなあ、猫って。
ふつうに食べて飲んで排泄するだけで、人が喜ぶ。
私だって毎日同じことをしているのに、誰からも褒めてもらえない。

次の朝、気温が低いから暖炉に火を入れた。
それがいけなかった。
猫は火の燃える匂いや薪の爆ぜる音に驚いて、居間は危険地帯と判断したらしく、巣穴に閉じこもってしまった。
その上、私がヴァイオリンを弾いたので、驚天動地!
生まれて初めて聞く奇っ怪な音に、この家はお化け屋敷と思ったらしい。

自宅では居住室とレッスン室が階段を挟んで別れているので、ヴァイオリンの音は聞こえない。
それを初めて聞いたので震え上がった。
夜もふけてあたりがシーンとした頃になって、ようやく巣から出てきた。

自宅の部屋には階段がないけれど、ノンちゃんの家は階段がある。
屋根裏部屋へと続く階段を登り始めた。
ためらいも見せないから、危険でないと判断したらしい。
一通り回って、ここは居心地の良い所だと思ってくつろぎ始めた。

夜中になると元気になって、2つ並んだベッドの空間を跳躍したのには驚いた。
この猫はもう20才くらいだと思われる。
自宅を建ててからまもなく拾われてきた。
まさか飛べるとは思わなかった。
そういえば自宅にはこんなアスレチック的な場所はない。
どこもフラットで、ここよりずっと狭い。

面白いのはフランス窓を全開にして網戸越しに外を見せると、つまらなそうな顔をする。
自宅では外を見ても他の家の屋根ばかり見える。
北軽井沢の美しい雑木林の景色になんの反応も無いのには、いささかがっかりした。

今回の目的は猫の他に家の片付け。
ノンちゃんの手芸の材料やご主人の本や画材、衣類その他の生活用品がぎっしりと残っていた。
特大のゴミ袋に一切合切詰め込んで捨てて捨てまくる。
鍋やまな板などの調理器具の多さは、ここは料理店か?と訝るほど。

ノンちゃんは本当に細やかで丁寧な人だった。
その細やかさが、様々な物をとっておくことに現れていた。
可愛い抽斗を開けると、何種類もの色の糸と針がきちんと整理されて詰まっていた。
いつでもなんでも、どこにあるかわかるようになっていた。
惜しいけれど、私には必要ではない。

とにかく中を見ないで捨てないと、いつまでもきりがないから心を鬼にする。
物置をからにしてクローゼットにはノンちゃんの形見分けができるように衣類だけ残し、調理器具は今度誰かが来たら持って帰ってもらおう。
ここで力尽きた。

二日目はお隣さんが帰宅してしまったから、広い雑木林には私と猫だけ。
寂しい!
この家のお風呂のボイラーが壊れているのに気がついたのは最近のことで、さっそく工務店の人に来てもらった。
オール電化の家だから配線が複雑。
夜間電力で沸かすタイプのボイラーは、ばかでかいズンドウの体で役に立たないのに場所ふさぎ。
それをガスの給湯に替えてもらうように頼んだ。
床暖房はあたたまるのに時間がかかりすぎるので、石油のファンヒーターの工事をすることに。

4日間はアッという間に過ぎて、身体中痛くなって疲れ果てて帰ってきた。
このあともう一度寝具などの点検と取替をすれば、ようやく仕事が終わる。
お隣さんはとんぼ返りにこの雑木林に帰って来たけれど、入れ違いに私は猫と帰宅、ああ、疲れた!





















2 件のコメント:

  1. nekotama様
    亡くなった方の荷物の片付け、大変ですよね。うちもガンで他界した亡兄の荷物を片付けたときは時間がかかりました。
    写真とか見ていると、いろいろ思い出してしまいますし。
    沢山あった卒業アルバム(兄は教師でした)の処理に困って、他とまとめて業者に頼んで焼却処理してもらいました。
    ニャンコちゃん、いい空気吸って、いい音楽聴いて、長く生きてほしいですね。

    キャリーバッグ、使って頂けてうれしいです。ありがとう!

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  2. こちらこそ良いもの頂いて、別にお礼のメールをしようと思っていたところでした。ありがとうございます。
    大きさがちょうど猫に合っていて、安心感があるみたいです。
    以前はワイヤーのスケスケのケージで運んでいましたが、近所の獣医さんへ行くのも大騒ぎでしたので。
    亡くなった方の遺品をさっさと捨てたら、クレームがきました。
    欲しいものがあったとか。それなら最初に言ってくれればいいのに。
    でもいちいち懐かしんでいたら整理がつかない、ここはドライにしないとね。

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