2019年6月8日土曜日

愚痴を言ったら

グチグチ言ったら気分が晴れて(全くもって単純なのだ私は)弓の毛を張り替えにでかけた。
弓といえば福田さん。
先代のお父さまからのお付き合いだから、もう半世紀以上通っているかもしれない。
一度だけ、他の楽器屋さんに毛替えをやらせてくださいと頼まれてやってもらったことがあった。
ほぼ使い物にならず、やはり福田さんに張り替えてもらった。

使い物にならない楽器屋さんは、ぜひ福田さんの技術を見せてくださいと言うから、張り替えたあと見せてあげた。
しきりに唸って、感心していた。
「この毛箱の角のところの毛がこうカーブしているでしょう。この技術ができる人はすくないのですよ」と解説された。
それなら自分もその技術を盗めばいいのに、唸っていてもうまくはならないでしょうが。
毛箱というのは弓の持ち手のところにある箱。
ここに毛の張力を調整するネジの部分が収まっている。
大抵は象嵌で美しく飾られている。

毛替えをしたときは一目散に家に戻る。
張り具合を確かめたくて大急ぎ。
よしよし、今日も満足。
弓の張力は季節、天候などによって、微妙に張り方が違う。
たぶんそのへんは張る方の人も、苦労するのだと思う。
ヴァイオリンほど湿度の影響を受けやすい楽器はないと思う。
鳴り方が変わったなと思うと、雨模様になってきたり。
レッスン室は人がいなくてもほぼ空調入れっぱなし。
それでも気密室ではないから、天候の影響は断ち切れない。

一つ前の投稿で愚痴ったけれど、音がでない、音が悪いと最近の悩みだった。
けれど、今日毛替えをしたらすごく良くなった。
自分の腕のせいにして暗くなっていたけれど、毛が劣化していたことも大きな原因だったようで、毛替えをする気力も無くなっていた私が最悪な状況だったのだ。
これから少しずつ良くなっていく自分を信じていこう。
失ったものは取り戻すことはできない。
それなのにそのことに囚われている自分が情けない。

動物学者のコンラート・ローレンツ博士が言っている。
最愛のペットを失ったときにはすぐに次のペットを飼いなさい。
猫や犬ならそうできるけど、人間ではままならない。

今朝、駐車場の野良猫を保護しようとして家の玄関に入れたら大騒ぎになった。
いつもくる野良は全部で5匹。
キジトラ2匹、白黒2匹、白黒シマトラ1匹。
この最後のシマトラが唯一、オス猫。
最初ははっきりとした白黒模様が一番猫だった。
シマトラはそっと遠くから皆が食事しているのを眺め、終わった頃遠慮がちに残り物を食べていった。
ところがだんだん私が危険でないことがわかると、態度が変化していった。
そして一番猫だった白黒が私になついてすり寄っているのが気に入らなかったらしい。
白黒を目の敵にし始めて、餌場に寄り付かせないようにし始めた。
可哀想な白黒は、数日餌にありつけないこともあり、段々痩せていった。
それで、この白黒を保護しようと私は余計な行動に出た。

白黒は餌を食べているときはとても無防備になるから、隙をついて捕獲、玄関に入れてドアを閉めた。
猫は最初は餌につられて気が付かなかったようだけれど、ドアが閉まっていて閉じ込められたと知ったらパニックを起こした。
大きな声で泣き叫びはじめ、3階の住人が何事かと階段を駆け下りてくる音がした。
彼女も無類の猫好きなのだ。
ドアの枠に爪を立てる猫、すごい勢いでバタバタと降りてくる足音に怯えるので、諦めてドアを開けて逃した。
この次は建物に私一人のときに実行しよう。

シマトラは最近私に叱られるので、徐々に一番猫の座を譲り渡す様子も見られる。
頭の良い子なのだ。
しかし、単なるポーズかもしれないから、他の場所で白黒をいじめているような気がする。
時々近所で、ぎゃあー!という悲鳴が聞こえることがあるので。
猫も人間も、他人(他にゃん)よりも上に出ようという性格の者がいる。
これはどうしてなのか、そういう願望のない私には理解できない。
私は個体は他の個体の上でも下でもないと思っている。
それぞれの存在があるだけ。
今朝来たのはシマトラともう一匹のみ、白黒は現れなかった。
余計なお世話を焼いて怯えさせてしまったようだ。

私が子供の頃から猫はいつも身近にいた。
数匹いるところへ新しい猫が入ってくると大騒ぎになる。
元々いる猫の中でも新入りをいじめるもの、無視するもの、平気で受け入れるものがいて、私はその都度ハラハラして世話を焼いた。
けれど姉が「猫は猫同士だから手を出さないようにしたら?」と言った。
それでしばらく傍観していると、いつの間にか新入りは自分の居場所を見つけてなじんでくる。
それ以来、黙って見ていることにした。

それこそ殺してしまうのではと思うほどいじめるのに決して怪我もさせない、猫社会の掟はちゃんと規律ができている。
吾が子でさえ理性の枠を超えて死なせてしまうのは人間だけ。
動物一の知恵者は人だと思っている人間の傲慢さが、母性では猫にも劣ると気が付かせない。

猫に気を取られて気が紛れる。
私は段々元気になってきたのでご心配なく。
ただ落ち込んだときにはおもいきり落ち込むと良い。
変に元気そうに振る舞う必要はない。
やたら前向きに行動しなくても良い。
あくまでも自分の心に忠実に泣いたり笑ったりすれば良い。
素直に何事も受け入れて悪あがきしない。
私の長~い人生の中で得た教訓ですのにゃ。
猫のようにね。





































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