2019年6月24日月曜日

後片付け

ノンちゃんは北軽井沢の家から東京の自宅に帰宅したその夜具合が悪くなり、あっという間に逝ってしまった。
だから私が家を引き継いだときは、そっくりそのまま。
全く昨日まで住んでいた状態。
それを整理して自分の住まいにするには、掃除や不用品の廃棄、形見の品の始末など山のような仕事が待っていた。

先月、家の名義の書き換えが一段落して最後の手続きに入るまでになったとき、一度整理のために泊まりに行った。
私の流儀はまず全部捨てることから始まる。
目についたものはすべて考え無しで捨てる。
これはどうしよう、あとで使えるなんて思ったら失敗する。
可愛いフィギュア、ノンちゃんが世界のあちこち、特に東欧が好きでチェコなどで手に入れた物でも容赦なく捨てる。
お隣さんはノンちゃんのそういうものへのこだわりを長年見ていて、愛着ひとしおだったものを私があっさり捨てたのを見て、びっくり仰天!

私はノンちゃんが好きだっただけであって、その人の持ち物にはとんと関心がない。
それで一悶着あって、お隣さんは私のあまりの捨てっぷりに恐れをなしたようだ。
その後からは、一声かけてから捨てるようになった。
その時も有料のゴミ袋の特大に20個くらい廃棄。

今回も衣類や布団をすべて、すてることに。
のんちゃんの着ていた服はすべて上等で、殆どがオーダーされたものなのだ。
紬や、丈夫な藍染の木綿類などは年月が経っても古くならない。
それはあまりにももったいないので、気に入った人に持っていってもらうことにした。
私は薄くてヒラヒラしたものが好きでノンちゃんとは全く趣味が違う。
残念ながらサイズもノンちゃんのほうがずっと骨格が大きく、私には合わない。

やっと衣類が片付いて、寝具の始末。
北軽井沢の冬は寒い。
押入れ一杯の布団がギュウギュウに詰まっていて、いったいこの可愛らしい家に何人泊めるつもりだったのかしらと訝るほどの量。
特大のゴミ袋はあっという間に20個に及んだ。
ノンちゃんは決して安物は使わなかったので、捨てるには惜しい上等な羽毛の布団などが私の手で惜しげもなく廃棄されてしまった。
私は薄くて軽くて洗濯機でじゃぶじゃぶ洗えるものを揃えるつもりなのだ。

一番の難物は暖炉前のラグ。
ノンちゃんが布を引き裂いて、それを織物に仕立て上げた最高傑作。
布の材質や色などの配置がそれは見事で、こんなふうな手仕事ができる人だから人形制作の世界でも高い評価を受けて、ニッセイのバックステージ賞を受けたことも納得がいく。
全てに手抜きをしない性格が現れているのがこのラグで、一番始めにこれを見た人たちは驚嘆するのが常だった。
これだけは私でも捨てられない。
けれど、暖炉で火を炊いて、灰や風で舞い込んだ落ち葉や昆虫の亡骸などついていて、汚れている。
自宅に持ち帰った私は、浴槽の残り湯に一晩漬けておいた。
今朝見たら、水はものすごく汚れていて、その後洗剤を入れた水にもう一度漬けて、それから洗濯機に入れて長い時間のコースで洗濯。
その後もう一度短いコースで洗濯。
やっとこざっぱりとしてベランダに干されている。

これを持ち帰ってノンちゃんの家に戻す。
ノンちゃんもまた、私の人生を彩ってくれた大切な友人だった。
世代の差を越えてお付き合いしていただいた。
ノンちゃん(などと言える立場ではないけれど)私のような若輩者を対等に扱ってくださって本当にありがとうございました。

経済的に豊かではないのに家を2軒持つということは無謀とも言える。
それはでも、あまり心配はしていない。
なにしろ北軽では、キャベツの特大玉5個くらいで500円、玉ねぎが20個位入ったネットが800円とか、大きなレタス1個買ったら50円。
つつましく暮せばなんとか食べていける。
やはり自転車を買おう。
カゴ付きの自転車なら、大根を3本、トマト一箱くらいは積める。
贅沢さえしなければと言いたいところだけれど、この新鮮な野菜が都会人から見たら、ものすごく贅沢な話なのだ。

水源地だから水はきれい、空気は美味しい。
テレビがなくても退屈しない。
あまりにも人間離れした生活だったので、世の中がどうなっているかも知らなかった。
なにやら逃走中の犯人が捕まったとか。
地震があったとか、なにも知らなかった。
ひたすら木々と会話して過ごした。
夜は暖炉に薪をくべて過ごし、炎はずっと見ていても飽きない。

結構疲れて帰ってきたので、帰宅した途端ロングスリーパーに早変わり。
いつもは運動量が足りないからたくさん眠れないのだと納得。
このあと来月は、まだ取り掛かっていないけれど物置の整理。
お風呂が故障しているので修理してもらうのと、床暖房が頼りないので石油ファンヒーターの取り付け、ハウスクリーニングとまだまだ続く。
ゆったりと過ごせる様になるには、まだ時間もお金もかかる。




































0 件のコメント:

コメントを投稿