2019年6月6日木曜日

睡眠の異変

ここ数年というより数十年間、私は眠らない人だった。
私の父が超ショートスリーパーで健康長寿だったから、別に気にもしていなかった。
毎日、3~5時間、5時間眠ると少し寝すぎの感じだった。
2時間眠れれば次の日の活動に支障はない。

先日、去年なくなった連れ合いの納骨を済ませ家に帰ると、それっきり眠ってしまった。
時々目がさめるものの、横になっていればすぐに睡眠に落ちていった。
それが午後4時ころ、そして次の日の朝、ようやくベッドから起き上がったのは午前7時少し前。
時計が狂っているのかと思った。
それとも夕方の7時?
それにしては周囲の様子は朝。

一体どうしたのかと訝って起床したものの、食事をすれば眠くなる。
昼寝までして、これでは夜は眠れないと思ったら、とんでもない。
横になるとあっという間に眠ってしまう。
結局次の日もうつらうつらと過ごし、時々仕事をしてはまた眠る。
座ってテレビを見ていても、いつの間にか椅子に座ったまま眠ってしまう。
本を読めばいつの間にか頭を垂れて、眼鏡が外れて・・・
夜もしっかりと眠れた。

それが3、4日続いて、体はだるく、足がしびれて歩けないほど。
思えば10ヶ月前から始まった恐ろしい日々。
山のような書類と次々に届く役所や金融機関からのお知らせ。
金融機関に行っても、相手の言うことの半分もわからない。
普通の人だったらわかるのかしら。
もがき苦しんで、ようやく正しい道筋を見つけたのが、ほんの2ヶ月ほど前。
周りに気を使うことが多くて、いつもマイペースではいられない。
私の最も不得意な分野での悪戦苦闘がようやく終わったのだ。
期限ギリギリでなんとかすべてクリアした。
最後の印鑑証明が1日期限過ぎていたけれど、それは大目に見てくれた。

いい勉強になりましたとも。
こんな訳のわからないことを世の中の人達はどうやって片付けているのかしら。
だれに聞いても本当に大変だったという。
中には自分はそれほど苦労しなかったという人もいるけれど、そういう人はそもそも家族が少ない。
気を使うべき親戚もいない。
相続人は自分のみ。
だったら本当に楽なのだ。
どこに本籍があるかわからない親類。
謄本に記載されている見知らぬ名前もないだろうし。
依頼しても中々届かない戸籍謄本や印鑑証明書。
眠れない日々が続いた。

役所に問い合わせると、長々と説明を受けて頭を下げて書類を何枚取得したことか。
問合わせる役所の所在地探しもひと苦労。
本籍地がわからない兄弟もいたので。
最後は司法書士さんの「これだけはご自分で」という言葉を断固拒否して、お願いした。

この10ヶ月の時間の無駄は計り知れない。
体は急激に老化したみたいで、精神は不安定。
あんなに幸せだった日常が、辛くて悲しくてやりきれない。
ヴァイオリンの練習時間が激減して、すっかり下手くそになってしまった。
音がでない、音程取れない。

長時間の睡眠の後にやっと平常な生活に戻ったら、わずかに音が変化してきた。
かすかな光が差し込んできたけれど、私の年齢でこのブランクは痛い。
取り戻すのには時間がかかる。

そして今、これまでに感じたことがなかった深い悲しみに襲われている。
種々の事務手続きに追われて感じる間もなかったけれど、家族を失うということはこれほど無残なものかと今にして思う。
私のように一人でいるのが寂しくなかった者でも、今は底知れない寂寥感に苛まれている。
これをどう乗り越えるか。
猫と二人で生きていくけれど、万一私か猫のどちらかが消えたらと思うと、心配の種は尽きない。
昼夜問わず、急に心の底が拔けてしまうような悲しさ。
こんなにだらしないとは自分でも思っていなかった。
今までなにがあっても負けなかったのに、年老いて孤独で悲しい。
悲しい、悲しい、悲しい・・・くどい!
そのうちまたヘラヘラと笑っていられる日が来るのだから我慢!
どれほど周囲にひとがいようと、寂しさは癒やされない。
モーツァルトの音楽の根底にある壮絶な悲しみが、身をもって理解できることになったらしい。
やっと、この歳になってね。
私のように臆面もなくこういうことが言える人はいいけれど、じっと心にしまい込む人だったら、どれほど苦しいことか。

お墓は樹木葬で小高い丘の上。
風が吹き渡り、うぐいすがまだ鳴いていた。
見学に行ったときは満開の桜に囲まれた理想的な墓地だった。
友人の見学に従いていったら、私のほうが先に決めてしまった。
その後友人が隣のスペースゲット、仲良く2軒で並んで入ることにした。

うちのお墓、まだあと二人入れますよ。
ご希望の方はご一緒にいかがですか?
毎晩一緒に飲めるではありませんか。
ちなみにペットも可だそうですが、埋葬料金は人間と一緒。























3 件のコメント:

  1. nekotama様
    本当にお疲れさまでした。旦那様、とても素敵な方だったのですね。
    いつかゆっくりnekotama様と飲みにいきたいですね。 
    (いえ、地上で、ね)

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  2. nyarcil様
    コメントしていただいたのにチェックが遅れました。
    なんだかメールのチェックもしないで返信が遅れたり、最近ボーッとしています。
    このまま認知街道まっしぐらかもしれませんが、しぶとく行きていますのでご心配なさらないようお願いします。
    随分前からご一緒に飲みに行きましょうと言っていましたが、今年こそ実現したいものですね。

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  3. 訂正
    行きて・・・生きて、ほらね!

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