2021年10月11日月曜日

どんぐりの音

 9月中はやや忙しく、以前ならこの程度のスケジュールは難なくこなせたのに、最近は少し忙しくなるとパニックになってしまう。一度に複数のことができなくなった。若い頃は掃除しながら洗濯と料理を同時にできたものだった。もっとも家事はあまり好きではないので、溜まりに溜まった家事をこなすときにだけれど。

9月のスケジュールが終わるともう当分コンサートもない。それでも常に練習だけはしておかないと、急に入る仕事は恐ろしい。だから目的がなくても練習だけは欠かさない。この練習だけというのはなかなかモチベーションが続かない。誰かが聞いてくれるから真剣になるのであって、猫に邪険にされての練習は面白くはない。ある声楽の先生のうちの猫は、飼い主の先生が歌っているときだけは静かにしているけれど、生徒さんが歌うとかかとに噛み付くそうなのだ。あな、恐ろしや。それはまあ、生徒さんのほうが先生より下手ということもあるかもしれないけれど、猫にしてみれば餌と温かい住まいの提供者が誰だかわかっているということかもしれない。

夏に北軽井沢に行ったときに謎の水たまりを見つけたことはnekotamaにも書いたけれど、その謎は一向に解読できなかった。部屋の数カ所の片隅や窓の近くに水の滲みたような跡があり、触るとじとじとした感じ。どう見ても水分の滲みなのだ。

車の整備に行って時間待ちをしていたときに馴染みのスタッフがやってきたのでその話をしたら、突然「私が見ましょう」でも北軽井沢は都会から4時間近くかかる辺鄙な場所。鉄道も通っていない。「構いません、なにか気になることがあるとどうしても原因が知りたくなるので」と言ってくれるから、ある日、一緒にでかけた。もとレーサー、もとメカニック、そして現在はトップ営業マンの彼の素晴らしいドライブテクニックを披露されて約3時間半後到着。私のパパゲーノはご機嫌で走った走った。私がいつも手こずる急カーブの連続はあっという間に通り過ぎた。

ところが夏には水浸しだったその箇所がやや乾き気味、それでも水の痕跡は残っている。例えば窓の2枚のガラス戸の合わせ目とか、玄関の四隅とか、およそ水場に関係ないところが濡れている。上からのものではない。上からなら天井もシミができていると思うけれど、それはまったくない。そして浴室の脱衣所の床にある蓋を開けると床下に潜り込めるようになっている。そこに潜り込んだ助っ人さんは「おかしいな、普通こういうコンクリートの基礎だと空気抜きの穴があるはずなのに、それがない」と。周りの家の基礎を見ると、なるほど、コンクリートでぎっしり囲んでおらず、床下に薪などの収納できる空間がある。私の家には通気孔がまったくない。しかもコルクの床のすぐ下にコンクリート、そしてコンクリートの下に断熱材???とにかく床下に乾燥剤の大きいものを入れてどれほどの水がたまるか様子を見ましょうということになった。あまり複雑な症状ではないので、やや肩透かしを食らった表情の助っ人さん、素人考えではコルクとコンクリートの間に断熱材があるのが普通なのではと思う。コンクリート下の断熱材はなんのため?とりあえず夏よりは状態は良くなっているけれど、次の夏に備えて対策を考えるなり、建築士に訊くなりしておかないといけない。それでも水道管の不具合とか水回りの故障でなくてホッとした。これがわかっただけでも助かった。緊急事態でないと知ってひとまず安心。

以前から床暖房が壊れていると地元の管理会社から言われていた。それでわざわざ大型の石油ファンヒーターをつけたら不格好で幅広く邪魔な存在だった。本当に壊れているのかどうか助っ人さんに電源を入れてもらって家をあとにした。帰りもあっという間に帰宅したので、北軽井沢はちょっとそこまでと言える距離だったのかと思えた。カーブ続きの急坂も走り方次第。

それから数日、今度は一人で北軽井沢にきた。カーブ続きの急坂はやはり難所だったみたい。軽自動車がカーブを曲がりそこねて側道にゴロンとはまり込んでいた。警察車両も来ていたし、関わりのあったと思われる車が2台、ドライバーらしき人が二人。すると側道に転がっている車のドライバーは救急車に載せられていったのかな。

家に着いて昼食を食べていたら、急に大勢の子供が駆けてきたようなぱたぱたという音がした。何事?しばらく聞いていてわかったのはどんぐりの実の落ちる音だった。風が吹くと一斉に揺れる枝から音を立てて落ちる。ああ、こんな音は最近全く聞くことはないなと郷愁を覚えた。そして今、シャッターの降りた窓の外から聞こえるのはなにかの動物がそのどんぐりを食べている音かもしれない。これが夜の森の音。

床暖房は壊れていなかった。床が温かい。裸足で歩くとコルクの感触が気持ちいい。今日の東京は夏みたいに暑く気温は30度だと友人の電話。床暖房なんて言ったら聞いただけで熱中症になりそう。床暖房の効果で床の結露は跡形もなくなり、コルクの床の触感の良さを実感した。問題は梅雨時、7月に床暖房はつけられない。その季節にどうするか考えておかないと。






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