3日前、北軽井沢に到着したときは清々しく晴れ渡り、やはり自分は晴れ女と思っていたら今日は曇り、今にも泣き出しそうな空模様に気落ちした。何事もすべてうまくいくと思ったら大間違い、曇りあってこその晴れた日のありがたさ。
今朝は夜明けを待ち焦がれていた。いつものように4時ころには目が覚めたので高窓から夜明けの光が差し込むのをひたすら待ちわびていた。夏ならばとっくに明るくなっているという時間にもまだ外は暗いまま。1時間半ほど待ってようやくあかるくなってきたのでシャッターを開けると、意外にも向こう三軒両隣に明かりが見えた。昨日到着したときにはどの家もひと気がなく、この森にまた一人ぼっちかと思ったけれど、そうでもないらしい。これもコロナの影響か、地球温暖化で都会の耐え難い温度上昇から逃れてきているのか、北軽井沢は最近新しいカフェなども増えてきた。
すでに飽和状態と思える軽井沢より伸びしろは大きいかもしれないけれど、如何せん鉄道の駅がないのが敗因となっていつまでも垢抜けない。でも私的にはこのまま10年は変わってほしくないというのが本音なのだ。今のこの北軽井沢がいいのであって、ここが原宿みたいになってほしくはない。5~10年後には私はたぶん小田原で小田原提灯ぶら下げて駕籠をかついでいる。いえ、お猿の駕籠やに担がれているかも。
小田原の介護施設の職員は旧友のお嬢さんのN子ちゃん、彼女が子供の時から知っている。しっかり者で、私をお姉ちゃんと子供の時からの呼び方で呼んでいる。お姉ちゃんの面倒は私がみると。それで今年の大晦日は彼女の家で過ごすことになった。ここ3年間、大晦日はいつも私一人。近所に姉と兄がいるけれど、それぞれの家族の中に入っても話題が噛み合わないし、子供の世話はしたくないし、わがまま婆さんは一人が一番なんだけどやはりお正月一人は寂しい。今後は足腰たたなくなったらNちゃんの施設に入って最後はそこで過ごす予定。もうひとり一人ぼっちの友人もNちゃんの司令で同じ施設に入る予定。なんでも素敵にうまくいくものだわ。これでもう安心して独身生活を謳歌することにした。
高齢になってからの初めての独居生活はかなり寂しかった。大家族での幼少時代はにぎやかで楽しかった。結婚してからもいつでも訪問者の絶えないにぎやかな陽気な家だった。それが生まれてはじめて一人になると孤独感が身に滲みた。なれるのに3年かかった。もともと一人でいるのは嫌ではないのと、大好きな音楽があるのが幸いした。最近は独居が楽しくて仕方がない。
こうなれないで寂しく亡くなる高齢者がいると思うと気の毒に感じる。誰も他人のことなんて本気で考えてくれるわけではないから、自分で運命を切り開いていかないと。幸い私には古くからの友人たちが多い。その中の一人がこうやって心配してくれている。運の良さというのは、本当に周りの人によって決まるとつくずく思う。周りの人達を大切にしない人は幸せになれない。他人の自分に対する振る舞いは自分の鏡なのだ。もし、自分が友人からいやなことをされたときには、それは自分がその人を識らずに傷つけているからなのだ。お金よりも何よりも友人は宝物。母がよく言っていた。どこで誰にお世話になるかもしれないのだから、他人に威張ってはいけない、と。
そう言われてもねえ。気性の激しい私の周りではバトルが絶えない。だからこうして森の中での静かな生活が必要なのだ。この家を買ったときに私の周りでは先を危ぶんでいるのが見て取れた。こんなところで一人ぼっちで一体どうするのか。高齢になってからの生活はもっと都会でするのが最近の常識。医療施設や役所も遠い。買い物も車の運転ができなければ不可能。でも今は、宅配が便利になってきた。ネットで注文ができる。なにも不自由はない。物質的にはすべて大丈夫。でも友人たちはそれ以上に大切。
昨日用事があって管理事務所に行って事務の女性と話をした。彼女も森の中の一軒家の住人。私が一人ぼっちの心配事をこぼしたらえらく共鳴してきた。普段は一人暮らしの楽しさ、ここの自然の素晴らしさを熱意を持って語るのに、それが崩れた最近の経験を話してくれた。
彼女の家のウッドデッキは多少古くなっており、それをだましだまし使っていたら、ある日、左足で床板を踏み抜いてしまった。その家は傾斜地に建っているのでウッドデッキの前の部分は高足になっていて踏み抜いた足が地面に届かない。骨折はしていないようだから痛みを堪えて足を引き抜いた。引き抜いた途端、みるみる足が膨れ上がったという恐ろしい話だった。その時すぐに足を抜かなかったら誰にも知られずに数日過ごしたかもしれない。しかも自宅だったから携帯も持たない状態。どこにも連絡しようがない。
きゃー!怖い。友人にその話をしたら、必ず携帯は持っているように、首から斜めにかけておきなさいとアドバイスされたけれど、ただでさえ何でもどこかに置き忘れるからこれは無理。でもそうなったら素直に運命を受け入れるっきゃない。独身の女性と話をして、だれか一緒に住んでもらいたいということを二人共考えているけれど、でもね、たった1日だけでも一緒に暮らし始めたらすぐに後悔するわねと。人恋しい、でも邪魔されるのは嫌、これではねえ。
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