2022年9月13日火曜日

老音楽家のつぶやき

 3匹の猫たちの首筋には蚤よけの薬が滴下され、部屋は強力な煙で燻されてやれやれ、これで平和が戻ると思っていたけれど、どっこいそうは問屋が卸さない。

夕方野良たちの餌やりで可愛い顔してゴロにゃんされてつい頭を撫でたばかりにまた私の腕に数か所の噛まれたあとができてしまった。ノミ取り薬は猫の肩甲骨の間の地肌に液体を滴下する。野良のオスは滴下したときに地肌が見えないほど毛が密集しているので薬がうまく効いていないらしく、しきりと後ろ足で顎を掻いている。メスは涼しい顔でお澄ししているから効き始めたのかもしれない。

私の最大の欠点は物事すべて詰めが甘いこと。最後まできっちりと見届けてから結論を出すという姿勢がないので結果があやふや。かわいいからと言ってつい手を出してまた蚤に食われてしまった。それでも一番ひどかったスネの炎症は治まった。赤く腫れていたのが鎮静してきた。このままなおってくれればうれしい。

1週間ほど前にいつもコンサートに来てくれる人にチケットを郵送した。只今どこに行ったかわからない郵便物の中にその人へ届くはずの手紙が入っていたらしく、私の問い合わせに「いつもならそろそろ来るのにまだ来ていません」と言う。もう3週間にもなろうというのにもはや絶望的かもしれない。そしていつもチケットが届くとすぐに連絡してくるその人から、私の送ったチケットが届いたという報告がない。またこちらから問い合わせのメッセージを送った。まだ返信がないけれど、もしこれでチケットが届かないとなったら郵便物の遅配は恐ろしく根が深いということになる。郵便局の中で何が起こっているのだろうか。

この問題が起きた同じ頃、元生徒から結婚報告のはがきが届いた。けれど彼女が結婚したのは5月末、切手の消印を見ても日付が見えないのでわからないけれど、3ヶ月以上前の結婚報告が今頃というのもおかしい。問い合わせのメールを出したらアドレスが変わってしまったらしく送信できなかった。住所がわかるのでなんとか連絡をとって問題究明しようと思っている。

いろいろ問題が起きているのでくさくさしていたけれど、久しぶりに友人と食事をしたので少し気が晴れた。私の家の最寄り駅で夕方待ち合わせ。私の友人たちはとにかくせっかち。約束の時間に絶対遅れることはない。だから少し余裕を持って家を出ることにしたのに階段を降りると野良が二匹、愛らしい笑顔で見上げていた。しまった見つかったか。そそくさと猫たちのお食事のしたく。はい、どうぞと言ってさっさとその場を離れようと思ったけれど、最大の愛嬌を振りまいてくる野良カップルについついほだされて頭をなでてしまった。

それで私の方は約束の時間通りの到着となったけれど、友人Aさんはすでに到着していて大きく両手を振って満面の笑顔でむかえてくれた。話は尽きない。食事も美味しい。ものを食べるとき誰かと一緒だとこんなにも味が違うものかと思う。私が一人になってしまったとき、味気ない食事はものの5分ほどですんでしまった。これではいけないと思ってプライムビデオで食事の光景が見られるものを探して、それを見て食事をするようになった。最適だったのが「孤独のグルメ」

背の高い非常に痩せた男優さんが黙々と大量の料理を平らげる、ただそれだけのことなのにそれを見ながら食べるとずいぶん食事が楽しくなった。テレビの料理番組は色々セリフが入るので「これ、無理に美味しいって言ってるんじゃない?」と疑ったりするけれど、この人は本当に美味しそうに食べる。痩せた顔の顎の動きがもう止まらないというようで、食べ終わったときの満足そうな顔を見るとこちらも嬉しくなってしまう。それを見るようになってから私はずいぶんゆっくりと食べられるようになった。

Aさんも最近ご家族をなくして一人暮らしになってしまった。「誰かと一緒に食べると本当においしいわね」二人で何回も言い合う。ほんの少しワインを飲んでほろ酔いで商店街を歩いてお別れ。すぐにメールがきてまた一緒にお食事しましょうね。こういう友人がいればこの世は楽しい。

一人暮らしも楽しいけれど、たまに人とあって食事をするだけで心が休まる。これはとても大事なことだと思う。とりとめのないおしゃべりはいつの間にかストレスを開放してくれる。

そして今私と友人たちはしょっちゅう言い合っている。「楽器を弾いていて本当に良かった」と。晩年になっても楽器を弾く仲間たちがいて一緒に演奏できてこんな幸せなことはない。学生時代、練習が辛いこともあった、仕事で緊張のあまり弓が震えることは数知れず、ステージに上る前の緊張感と言ったら・・・友人の一人が言った言葉が忘れられない。「断頭台に登る気持ちだったわ」

出演が決まって本番までの間の心の準備が大変だった。夜中に目が覚めて暗闇の中で最悪の事態を想像する。このときが一番つらい。学生時代レッスンがうまくいかなくて先生や友人に言われた一言で天国から地獄へ。自分が情けない。ヴァイオリンなんかやっていなければどんなに呑気に生きられるか、もうやめようか・・・とは思わなかったけれど、それに近い気分のときもあった。その苦労が今私達にこんなに幸せをもたらしてくれるなんて。想像もできなかった。

自分は楽器なんて弾けないから幸せにはなれないと言っているそこのアナタ!これから始めればいいじゃない。楽器を買う余裕なんてないわと言っているそちらの方!リコーダー1本でも立派な楽器。奥が深くヴァイオリンと同じくらい表現力もあります。フランス・ブリュッヘンというリコーダー奏者がいる。私はいつも彼のCDを聴いて眠りに就いた。

ぜひ音楽に親しんでいただきたい。













2 件のコメント:

  1. 音楽を趣味にしとけばよかった、と思う今日この頃・・・

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  2. 趣味が収入になっていると思えばいいんじゃない?

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