2022年9月5日月曜日

ネコノミー症候群

 明日台風が沖縄に接近というニュースが流れた日、こちらも雨が強くなり始めていた。

うちの野良はカップルでいつも現れる。オスの方は半分飼い猫らしく、天候が荒れるとどこかへさっさと避難してしまうけれど、メス野良はたいていうちの駐車場にいる。夜になって雨が強まってきたので様子を見に駐車場に行くと、心細げに一人で佇んでいる。思わず抱き上げて「大丈夫だからここでじっとしていなさい」と言い聞かせてしばらく抱っこしていた。

次の日、腕のそこここに赤い斑点ができているのに気がついた。触ると急に痒くなった。そこからが悪夢の始まり、赤みは範囲痒みともにどんどん広がってきた。ついには皮膚が盛り上がって一つの島状態にまで。ここでこれはおお事だと気がついた。その日は木曜日、大抵の病院は休日。金曜日になると私は北軽井沢に出かけないといけない、病院へ行く暇はない。

土曜日からは生徒たちが集まって、毎年恒例になった合宿が始まる。これは夏の楽しみの一つで、北軽井沢の狭い我が家に集まって彈いたり飲んだり。でもここ数年のコロナのせいで結局都内の会場で練習するだけに終わったりしていた。今年は幸い北軽井沢ミュージックホールが借りられてやっと広いところで練習ができることになった。それでみんな張り切っていたのだけれど、家族の介護など諸般の事情もあり参加者は私をいれても8人となった。

一日前に北軽井沢入りをした私は準備に忙しく、痒さも然程でなかったのでまだ病院へ行くという気持ちはなかった。ときが経てば自然に治癒するものだと思っていたので。ところが最初のうちは手首のあたりに数か所、赤みのある斑点があっただけなのに斑点同士がくっついて大きな島になり始め、すこしでも掻いてしまうとその後猛烈に痒くなって、どんどん範囲も広がってきた。これはいかん。

しかし楽しみにしている合宿はやめるわけにはいかない。それに私はほぼ原始人だからこの程度の虫害にめげていては現代まで生き残れるはずはないと信じてじっと我慢。その結果両腕の斑点はそれ同士が合流して大きな島となり、赤みもますます増えて痒みも甚だしい。仕方がないから北軽井沢の旧駅舎のあるあたりのストアで薬を購入した。それでなんとか痒みを抑えていた。

合宿の曲はドボルザーク「セレナーデ」の2、3楽章。ゆったりとしたメヌエットと早い「スケルツオ」非常に魅力的な組み合わせで、最近メキメキと腕をあげ始めた彼らだったらなんということないと思っていたけれど、やはり難物だったようでバラケ放題。うーん、喚き散らすのはいただけないから優雅にいきたいところ。それでも2,3回繰り返していくうちにだんだん様になっていった。このアンサンブルもずいぶん年月を重ねた。始めのうちは音を重ねる意味すらわからなかったようでひどい音がした。私に「この世のものとは思えない」と悪態をつかれながらじっと我慢して継続した結果、いまやいっぱしのアンサンブルに成長したようだ。何よりも他の人の音が聞けるのが良い。それとメンバーが定着しているのが一番の上達ポイント。

メンバーが定着していると言うことはお互いを尊重しているということ。アマチュアだからそれぞれの楽器の演奏のレベルはまちまち。経験も知識もバラバラながらそれぞれの知恵と力量を寄せ合って助け合い、一つの世界を作り上げていく。これがアンサンブルの極意なのだ。自分が少しでも相手より弾けるからと言って思い上がるような輩は一人もいない。

ドボルザークの「セレナーデ」を弾きたいと言われたときは無理だと思った。他の指導の先生たちからも無理だと言われたと聞く。月1回の練習、メンバーそれぞれ働き盛りの年齢、育児真っ盛り、優秀な人材が揃っているので職場では要職に就いているに違いない。とすると自分の練習に割ける時間はわずか。それでも殆どの人達がやめずに長年楽しそうに参加している。これが一番肝心なところで、いくら楽器をひくのがうまくてもコミュニケーション能力に欠けていては継続は難しい。結局音楽も人なり、となる。これからもう一回の練習で次は発表会本番!幸運を祈る。

彼らが都内へと帰ったあと私はひとり残って練習に没頭するはずだった。そのために週末までスケジュールを空けておいた。練習用の楽譜を数冊とハリー・ポッターの原書を持参。けれど腕と足の痒みが消えず、次の日に帰宅することにした。そのまま軽井沢の病院へ行くことも考えたけれど、継続的な治療になるなら自宅付近の病院のほうがいいと思ったので。

帰宅したその日の午後、家近くの病院へ。非常に評判がよく女医さんだというのも選択の理由。ネット予約の際に自分の症状を詳しく書いておいたのですぐに塗り薬と飲み薬を処方してもらえた。その飲み薬と言ったら・・・夕食後飲んでそのまま眠りに眠った。次の日の午前11時目が覚めたときには異次元の世界にいるかと思った。起き上がれない。立つこともできない。しばらくしてようやくベッドを離れても足がふらつく。数時間後やっと薬効が切れたらしく正常に戻ったけれど、こんな薬を飲んだら絶対に車の運転は無理だと思った。








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