2022年9月30日金曜日

ハア~!

古典音楽協会第 162回定期演奏会は昨夜、東京文化会館小ホールで開催された。

今回のプログラムはよく古典で取り上げられるものばかりで耳に馴染み深いものばかりだった。私は毎度お馴染みのヴィヴァルディのヴァイオリンコンチェルト「アモローゾ(愛)」のソロを受け持った。この曲は私にとって3回か4回か弾かせてもらったもので、もはやすっかり手になじんでいると思ったら、今回はなんだか変。急に手からするりと抜けて、指使いが思い出せない。練習初日、今まで見ていた楽譜が急に見覚えのないものとなった。なぜか急に認知機能が衰えたか、視力に障害ができたか、内心慌てふためくも素知らぬ顔で練習を済ませたものの恐怖がこみ上げる。

なんでなんで?今まで数回のコンサートでも間違えることはほとんどなかったのに。そして考え抜いた末、もしや先日の野良猫蚤騒動に原因があるかもと思い至った。9月はじめに野良から蚤を移されて酷い痒さに悩まされた。スネが腫れ上がりちょっとしたアナフィラキシー反応ではと疑われるほど。病院で薬をもらった。そのうちの一つは痒い箇所に塗る外用薬。もう一つは内服薬のかゆみ止め。その薬が猛烈に効いて私は7日間、日中の殆どをうたた寝で過ごし、夜はいくらでも眠れるという状態になった。

それでも痒いよりはマシなので服用を続けた。結果、7日間で小康状態になって服用をやめることができたけれど、それでもうっかり発疹の痕に触るだけで痒さがぶり返す。その間目がさめるとお腹は普通に空くので食べる。運動なしで食べた結果、あっという間に2キロも体重が増えてしまった。これはいかん。体重が増えれば膝が痛くなる。歩くのもしんどい。歩かなければ体はどんどん重くなる。

定期演奏会の1週間ほど前、さて、今度の衣装はどれにするかなと思って手持ちのドレスをとっかえひっかえすると、つい数ヶ月前には着ることができたドレスが着られない。ジッパーがしまらない。やっと着ても腕周りがきつい等々。どうしよう困った。しかも靴まできつい。靴は今まではヒールのものを履いていたけれど安定を欠くのでウエッジヒールのほうが安心できる。

そこで趣味のネット商品見つけ。やっと見つけたのは金色のサンダルで、普通サンダルは底はラバーなどが多いけれど、それでは非常にカジュアルすぎる。避暑地ではないのだから。やっと全部金色のかわいいものを見つけた。幸い22センチサイズのものが見つかった。

そう、私の靴のサイズは22センチ。子供用でない22センチは探すのが難しい。たまたまやっと数足残っているメーカーを見つけて注文すると翌日に届いた。これで靴は安心。ところがドレスはたとえ気に入ったものを見つけても裾上げしたり演奏に差し障りのないドレスを見つけるのが難しい。今からではもう遅い。手持ちの中から見つけないといけない。

弦楽器、特にヴァイオリン、ヴィオラは姿勢が左右全く違うので弾きやすいデザインが見つけにくい。特に私のように小柄だと必ず裾は切らないといけない。左肩に花などの装飾品はつけられない。スパンコール、ビーズなどの類は音がビリついたり構えたときに触ると楽器が傷つくおそれもある。腕が上がりやすくないと運弓に差し支えるなど難しい条件がいる。

これでもかと出てくる変わった衣装たち。以前は決まった専門店で買っていたドレスもこの頃はネットで探すことが多くなった。特にヨーロッパものは面白いデザインが多く、取り寄せてみると、とんでもなく胸が空いていたりウエストはあくまでも細く、でもバストは詰め物でもしない限りカパカパだったり体型の違いを思い知らされる。それでも私は面白いデザインが好きで着る着ないはともかく買ってしまったりする。買ったけれどあまりにもガバガバで困っていたものが出てきた。きれいなブルーとネイビーの鱗様の模様でゆったりとしたプリーツ、透けた袖が揺れると美しい。

着てみると貫頭衣かアッパッパーみたいだなこれは。そこをなんとか工夫してあちらをつまみ、こちらを絞りと自分で着ながら縫い付ける。やっと少し細身にしてこれを着ることにした。着心地はすこぶる快い。どこも締め付けられずシルク独特の肌触り。軽くて演奏がし易い。もう年だから多少変わっていてもお許しいただこう。

私の服装は実に評判が悪い。普段はTシャツにパンツだからさほど変わった感じはないかもしれない。けれど以前仕事場でよく会っていたピアノ奏者Kさんから「nekotamaさんはいつも変わったもの着るよね」としょっちゅう言われていた。ある日都内で雪が降ったのであまりの嬉しさに毛皮のビーバー風の帽子、赤、青、黄色の三原色のスノウパーカー、足元は薄紫のスノウシューズ履いてNHKに行ったことがあった。変わった服装の人で満ち溢れているこの業界ですらよほど変わって見えたらしく楽屋口の守衛さんが私を上から下まで目を丸くして見ていた。その時もKさんはここぞとばかり「変わってる」を連発していた。

いいのいいの他人の目は。それでもさすがに定期演奏会の日は私でさえワンピースとおとなしいロウヒールの靴を着用。髪の毛は前日美容院へ行ってブロンドからシルバーヘアに。

今回特に緊張が続いた。前述のとおり体調がいまいち。たぶん薬による後遺症の頭のふらつき、記憶力の後退、見ている音符の意味がわからないことも。一体自分に何が起きているのかしら。今から演奏者の交代はできない。果たして本番で立ち往生はしないだろうか。様々な最悪の事態を想定した。最後にはステージで倒れるかもと思った。

迎えた当日、数日前からすべての薬は飲用せず。目のかすみにはブルーベリーの濃縮液、コーヒーなどのカフェインを断ち、腸の状態を整えるためにヨーグルト多め、野菜中心の食事を摂ったのに、それでもお腹は調子悪い。本番が心配という私史上最悪のコンディションだった。

結果としては、今まで何回も同じ曲を聞いてくれた人から、今までのうちで一番良かったとお褒めを頂いた。本人の必死さが伝わったかな。自分としては納得いかないけれど、こういうことはままあるもので、せっかく褒めていただいたので素直に喜ぶことにした。こうやって私の周辺の人は私を育ててくれる。

そこで思い出したのはある指揮者の話。本番でつい力みすぎてウエストのベルトが切れるという事件勃発。ステージでズボンが落ちては末代までの恥だから必死でベルトを抑えてなんとか演奏を終えると万雷の拍手。オーケストラのメンバーは指揮者が必死の形相でお腹を抑えながら棒を振っている。理由はわからなくともその迫力は鬼気迫るものがあったらしい。メンバーも全力で演奏をして、結果、今までになかったほどの名演になったという。ベルトが切れて名演ができるなら私もベルトを切ろうかなと、だんだん他力本願になるnekotama。もはや太りすぎてウエストがないくせにねえ。










2 件のコメント:

  1. あらら、あれで体調悪くしていたしたんですか。私には素晴らしく良い演奏に聴こえました。
    ビバルディの複雑な旋律を見事にひいてらっしゃって、特に高音が素晴らしかったです。・゚・(つД`)・゚・
    あ、私の耳が歳のせいでだめになっているかも、ですが、来年の演奏会でも素敵な演奏を聴かせていただきたく。

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  2. nyarcilさま
    ありがとうございます。
    そうなんですよ、不調だったのですがどういうわけかそういうときに限って集中できたり、ステージに出るまでは全然あがっていないのに出た途端あがってしまってめちゃくちゃやったり・・・水物なんです。こればかりは本番にならないとわからない。

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