猫の治療費を捻出するために倹約を誓ったはずだったけれど、季節は秋、夏のシーズンもののバーゲンが始まっている。これに乗らなきゃまた来年まで新しい服は手に入らないと焦ってしまう。つい面白い服のバーゲンに足をとめてしまった。
この面白いというのが曲者、面白くない服は着たくないけれど面白すぎる服は着るのに勇気がいる。それでもごくおとなしい服は買っても着る気がしない。結局nekotamaさんって変な格好するねと言われる羽目になるのだ。
普段は普通のTシャツとパンツ、それはランズエンドというごく真っ当なメーカーのものだった。質が良くて古くなっても色落ちしたりヨレヨレにならないから結局それで会社が儲からなくて消えてしまったのではないかと思っている。私は数十年もののシャツなど未だに着ている。実に着心地良く、本当に残念。
今日は久しぶりに気分が良くて隣町のショッピングセンターに行く気になった。ずいぶん長いこと塞ぎ込んでいたからこれは少し回復の兆し?と自分でも嬉しかった。暑さもようやく緩んできているようだ。暑い暑いといいながら今年の夏はさほどこたえなかった。クーラーはガンガンつけっぱなし。エコどころかエゴそのものの資源の浪費、でも毎年熱中症でダウンするのだからこのくらいは許してほしい。それで今年は熱中症にはまだなっていない。
ショッピングセンターの二階の片隅にちょっと気になる出店、それはもう勘でしかないけれど足を止めた。他に客の姿は見えない。なかなかおもしろい服で色鮮やかで、手に取っていたら売り子さんがいつの間にか私のそばに立っている。やっと獲物が来てくれてうれしそうに。
面白そうな服数点をああでもないこうでもない、結局4着買ってしまった。私がひっそりとひと気のないコーナーで買い物をしているにもかかわらず、いつの間にか人が増えてきた。しかもこのコーナーだけ。
思い出がある。もうなくなってしまったけれど、麹町にメイミというステージドレス専門店があって私はそこの開店当初からの客だった。そこで買い物しているとオーナーが「nekotamaさんは招き猫なんですよ。いつも他のお客さんがたくさん入って来ますから」と言われた。そして彼女は「ほらね」
地下にあるお店に階段から靴音がしてぞろぞろと人が入ってきたのにはびっくりした。それ以来気をつけていると、いつもそんなことが続いた。それまで閑散としていた店に人が入ってくる。なるほど、他の店ではどうかというと、やはりほかでも私は招き猫。
今日もそんな感じのことが起きて、我ながらびっくり。びっくりして面白がって買ってしまった服を帰宅してから見たら、一つずつがあまりにも個性的だからどうやって組み合わせるか見当もつかない。また無駄使いをしてしまったかな。コチャの治療費どうするの。
10月になったら北海道の姪の家を見に行くことになっている。札幌に新しく家を建てたというから。それを見るのも目的の一つ。本当はもっと下心ありで、姪が飼い始めた犬がジャックラッセルテリアで、私がかねてより飼いたいと思っていた犬種なのだ。どうも血の繋がりというのは恐ろしい。他の姪の車はプジョー、これも私の好きな車で、なんとも言えない深みのある色合いが気に入っている。姪になんでプジョーにしたの?と尋ねたら「色がすき」ですって!
北海道は大雪山で早くも紅葉が始まっているらしい。大雪山といえば、はるか昔、札幌で仕事を終えレンタカーを借りて北海道巡りを企てた。その頃北海道には梅雨がないと言われたその梅雨時だから7月頃。なんの計画もなく大雪山を登っていき疲れたからシートを倒して寝ていた。実に静かで気持ちが良い。と思ったら安全のための?パトロールが来てこちらをジロジロ見ているから慌てて引き上げた。女性一人で山の中、これは自殺するのではと勘ぐられたかもしれない。
一人で車を走らせ飽き飽きした。10日ほどかけて一周するはずの計画は早くも3日ほどで終了。なぜなら一緒に景色を見て楽しい会話ができる人が傍らにいない。サファリパークで熊を見ながら掃除係りのおばさんとしばらく話したのと、ドライブインのおじさんに女性一人車旅をびっくりされたのと、それしか人と接触しなかったから。当時の北海道の観光シーズン以外のひと気の無さたるや。富良野のプリンスホテルでさえ閑散としていた。今ならいやというほど人だらけだと思うけれど。
ドライブインのおじさんがびっくりしたのは、私が借りたレンタカーが九州ナンバーだったから。この車は、はるばる九州から北海道まで様々な土地を経てやってきたのだ。故郷に戻れたかな。
今なら私は一人でも耐えられる。北軽井沢の森の中の生活が孤独になれさせてくれたから。でもコチャがいなくなったらどうかな。寂しいでしょうね。コチャが生きることに執着しているというよりも私がコチャに執着しているのかもしれない。コチャ、死なないで。
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