2016年2月4日木曜日

覚えられない

いつも合わせてもらっているピアニストのSさんと、時々サロンコンサートなどで弾かせてもらうことがある。
万一、コンサートをするとなると、いつでも弾けるようにレパートリーを作っておかないといけない。
ベートーヴェン「ソナタ8番」バッハ「ソナタ3番(ピアノパート付)」などをこれから合わせる予定。

今月はピアニストの館野泉さんのF&F(ファミリー&フレンズ)コンサートのお手伝いをする以外はヒマだから、色々楽譜を出しては練習をしている。
ベートーヴェンの8番は短めで明るい、ベートーヴェンの重たい感じが無くて私は気に入っているのだけれど、以前弾いているはずなのに音型が覚えられない。

他のソナタに比べてもそれほど難しくはないのに、毎回同じ所を間違える。
いつも自分が教えるときには生徒に、間違えたら一度テンポを落として完全に出来てからテンポを上げて次の段階に行く様にと口やかましく言うのに、自分の事となるとあまり上手く行かない。
さすがにその日には弾けるようになるのに、次の日になると又間違える。
その繰り返し。
レッスンに来た人に、ちゃんと練習しないからそうなるのよと、怒るのだけど、自分がこんなことになろうとは夢にも思わなかった。
本当に易しいフレーズでつまずく。

よく自分を観察していると、ちゃんと視線が動いていない。
要するに動体視力の衰えが原因とわかった。
それで、つかえる場所に来たら目を見開いて熟視することにすると、なんとか通過する。
年齢的な衰えはどうしようも無く、大抵の演奏家がこの辺りでリタイアするのは頷ける。
自分1人なら何とかなるけれど、オーケストラになると怖さが先にたってしまう。
2人で同じ楽譜を見なければならないので、つらい。

以前私は、楽譜に書き込みするのを極端に嫌った。
オーケストラでも、隣の人が書き込みをするのがいやだった。
その場で覚えないでどうする。
一々書き込みするなと、他人にも自分に厳しかった。
初見の早さはこの業界で生きていくのに必須で、スタジオプレーヤーは誰もが殆ど一回で譜読みが出来、しかも移調してくれと言われればなんなくやってのける。
今ではどうかな?まだできるかしら。

オーケストラに入った当初は初見も利かず、泣きの涙で毎日譜読みに明け暮れた。
厳しい訓練の末勝ち取った初見力。
そんな修羅場で長い間仕事をしてきたのに、ちょっと現場を離れたらもうこの様で、脳みそにカビがはえたらしい。

昨日は元のオーケストラのメンバーが6人集まって、新宿に呑みに出かけた。
最高齢はパーカッションのSさん。
頭脳明晰で、オーケストラを途中でやめて、計理士になってしまった。
年に2回ほど彼を囲んでの飲み会。
Sさんは古い時代のオーケストラの生き字引だった。
どんな細かい事も、人の名前も良く覚えていて、私たちは彼にオーケストラの歴史を書いて出版したらどうかと勧めていた。
しかし、昨日会ったら、流石の彼も人の名前が出なくなって、額をしきりにこすっては思い出そうとしている。

あらま、この方がねえ。
私は子供の頃から、自分の興味のあること以外は絶対覚えなかったから、人の名前は当然でてこない。
けれど、Sさんは記憶力抜群だったはず。
期待していた本の出版も、もう諦めることになるかな。
もう1人のパーカッションのAさんは、脊椎の圧迫骨折とやらで、腰が曲がってしまった。
見るからに痛々しい。
会う度毎に皆年をとっていく。
自分だけ元気なつもりでも、傍から見れば、あら、あの人年取ったわねえ、なんて言われているに違いない。

ちょっと宣伝を

 舘野ファミリー&フレンズ スペシャルコンサート 2016

2月20日(土)19時開演     2月21日(日)14時開演
 逗子文化プラザなぎさホール    大宮ソニックシティー 
                        小ホール 

ピアニストの舘野泉さんのファミリーと友人達が集まって、珍しい
左手のピアノのための新曲、バッハの二つのヴァイオリンのための協奏曲など多彩なプログラムです。
 
それからもう一つ

      古典音楽協会定期演奏会 第152回

3月17日(木)19時開演 東京文化会館小ホール
タイトルは  『共演が楽しい協奏曲』

私は初っ端でトレッリ「2つのヴァイオリンの協奏曲」のソロを弾きます。こちらもどうぞよろしくお願いします。
脳みそにカビが生えている話しは、どうぞお忘れ下さいませ。
その日だけはカビを除去してまいりますので。

















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