去年、志賀高原でホワイトアウトに見舞われた。
自分の足元すら見えない恐怖を初めて体験した。
北海道の当別町で60代の男性から、ホワイトアウトのため車を雪山に突っ込んでしまったという110番通報があったという。
自力で脱出できると言ったらしい。
しかし、その後警察が捜したところ、自宅の玄関の数十センチのところで力尽きて倒れていたという。
数十メートルではなくセンチ。
玄関の鍵が側に落ちていた。
やっと自宅にたどり着き玄関を開けようと鍵を取り出し、手が凍えて落としてしまったら・・・と思うとぞっとする。
志賀高原で突然のホワイトアウトを経験したときには、スキーのインストラクターが一緒だった。
彼は富山の雪山で働いていた山男だから、こういうときにも冷静に私達を誘導してくれたけれど、自分たちだけだったらどうなったことか。
ゲレンデでインストラクターに惚れ込んで「なんて格好良い」なんてよく聞くはなし。
こういうときにはとても頼もしく思える。
我らが惚れ込んだスキーの先生。
彼は稀代の奇人変人で、私達のような美女軍団を目の前にしても、心ははるか彼方の雪山をうっとりと思い起こし、スキーの話になると目が座ってくる。
むりやり話を捻じ曲げても、少し間があくとすぐにスキーの話しにもどってしまう。
今まで生徒たちからモーションをかけられた話も数多いのに纏まらないのは、そんなわけらしい。
でもあれじゃあね!
ホワイトアウトの話に戻る。
なんとか視界のきくところまで降りて見ると、実は結構な急斜面。
しかもコブコブだったのに驚いた。
コブのある急斜面は、見えていたら避けて通る。
見えないのが幸いして、斜面に対する恐怖は感じない。
ひたすら下に降りることだけ考えていたから、わかってびっくり。
スキーの技術は未熟でも年数だけは重ねているから、大抵の斜面は降りることができる。
けれど斜度やコブなどを見るとまず恐怖心が湧く。
それさえなければ十分に降りられるはずなのに。
いつも新しいゲレンデに行こうと誘われると「私でも降りられる?」と訊く。
いつも「大丈夫だよ怖がらなければ」という返事が返ってくる。
そうなのさ、怖がらなければ基本的なことさえ守れば、ちゃんと降りられるのだ。
そんなことは重々承知している。
ステージで演奏するときも、怖がらなければ良いのに。
どんなに小さいコンサートでも気軽には弾けない。
舞台袖で待っているときには、お腹が痛くなる。
この瞬間客席がホワイトアウトで消えればいい。
だから本番前には気持ち悪くなるほど、練習を繰り返す。
本番になると、ストンと胸のつかえが消える。
まな板の鯉。
さあ、殺せ!なんて。
今シーズン初めてのスキーは来週、奥志賀高原から。
良い天候を祈るのみ。
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