2016年4月12日火曜日

美しい春

季節の好きな順位と言えば、スキーの期待でワクワクする秋から冬への時期。
寒風が吹く頃に元気になる変わり者。
暑い夏に向かう春は、花粉と埃っぽいのとで嫌いだった。
しかも春になると必ず寝込む。
熱を出して喉は腫れ上がって、ロクなことはない。

一番嫌なのが湿度の高い夏。
夏は半分しか生きていないような気がする。

そのあまり好きでない季節の春、どうしたものか今年は特別美しく感じる。
私が車で良く通る道で、好きなところがある。
緩いカーブの上り坂。
両側は真っ直ぐに上に両手を伸ばしたように見える、背の高い木が続く並木道。
その木が芽吹いて新緑の季節を告げていた。
その間には花が終った桜。
まだ天辺の所は残った花びらが付いていて、薄いピンク、そして下の方は柔らかい新芽が薄緑色に芽生えていて、見事なグラデーションとなっている。
ああ、美しい。
こんな美しい春の景色は見た事がない。

自分の周りに透明な膜が張られていて、世の中の汚れから守られているような気がした。
自然と、私の周りの人達の大きな愛情に包まれて。

そこを抜けて幹線道路に出て暫く車を走らせると、都会の近くには珍しいほどの田園風景に行当る。
丘全体が公園になっていて人々が明るい日差しの中を、ゆっくりと歩いている。
そこも新緑が柔らかな色合いを見せている。

芽吹いては枯れ、枯れては芽吹き、大きな宇宙のサイクルは小さな嘆きや喜びを包み込んで、回る。

人も生まれては逝き、巡り会っては別れて、人生のサイクルを生き終焉を迎える。
それも大きな宇宙の中のチリの一つ、なんのことはない。

私は両親や友人達から大きな愛情を注いでもらった。
この恩返しをしていかないと間に合わない。
この美しい春の景色は自然からの恵み。
これにもお返しをしないと。
なにが出来るだろうか。

ゆっくりと車を走らせていると見覚えのある場所に出た。

あ、ここ、前一緒に歩いた遊歩道ね。
そう、あの時、折りたたんでポケットに仕舞えるジャケット着てたでしょう。
あら、良く覚えているのね。そう言えばあのジャケット失くしたの。今必死で探しているけど見つからないの。
又買えば?
同じ物はないわ。(そう、あなたと同じ人はいないように)
友人との会話。

せっかくの美しい春も、私の結末はこんなもの。
いつも捜し物。いつもヘマをして、いつも・・・


















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